本稿はIT投資ゼロ円で、すなわちITを使わないで、頭を使って、業務効率化、及び業務改革を行う考え方と進め方を具体的に解説したものです。目的は、経営管理部門(ホワイトカラー)の生産性を確実に向上させ、また、イノベーションを実施できる経営の骨組みを構築することです。
業務効率化とは、ムダな業務を廃止・削減することです。ところが、多くの企業では、ムダな業務を廃止・削減しないで、ムダな業務にわざわざ金と時間をかけてIT化しているのです。つまり、二重のムダを行っているのです。愚かと言うほかはありません。このために、いつまで経っても生産性が向上しないのです。
本来、業務をIT化するには、まず、価値のないムダな業務を徹底的に廃止・削減し、今後二度とムダな業務を指示・命令しないようにしてから、業務をIT化しなければなりません。
なぜなら、業務をIT化しても業務時間を短縮するだけで、ムダな業務を廃止・削減することはできないからです。ムダな業務を廃止・削減するには、業務に対する考え方を変えなければならないのです。と言うのも、業務は人が行うのであって、ITが行うわけではないからです。ITは業務を支援する道具に過ぎないのです。
35年以上のコンサルティング経験により、ほとんどの企業には業務量の25%以上のムダな業務があることが分かりました。実際に、数十社の一部上場企業でコンサルティングを行った結果、30%以上のムダな業務がありました。この原因は、ムダな業務だと知らずに指示・命令するからです。また、ムダな業務だと知らずに実施するからです。
本稿には、ムダな業務を発見し、廃止・削減する考え方と進め方を具体的に解説してあります。本稿に書いてある考え方と進め方を習得し、ムダな業務を廃止・削減するだけでなく、今後二度とムダな業務を指示・命令しないようにして下さい。なお、本稿にはムダな業務の廃止・削減事例を多く掲載してありますので参考にしてください。
一方、業務改革ですが、業務改革をBPR(ビジネス・プロセス・リエンジニアリング)であると勘違いしている人が多いようです。BPRは、マイケル・ハマーとジェイムズ・チャンピー が1993年に出版した『リエンジニアリング革命-企業を根本から変える業務革新』 が契機となって流行した言葉です。
しかし、業務改革という言葉は、この本が出版された1993年以前から日本にあった言葉であり、筆者は1986年より業務改革のコンサルティングを行っています。マイケル・ハマーとジェイムズ・チャンピーは日本の各社の業務効率化活動、及び業務改革活動を調査し、これを参考にしてアメリカの企業に適したITシステムを開発しました。そして、BPRと名付けて販売したのです。
したがって、BPRは日本の企業に適したものではないため、全く役に立たず、しかもアメリカの企業でも全く効果がなかったそうです。実際に、アメリカでBPRを導入したすべての企業が、全く効果がなかったそうです。その結果、BPRを開発・販売したITベンダー、CSCインデックス社は倒産したそうです。(参照:『経営戦略全史』三谷宏治著 ディスカヴァー・トゥエンティワン社)
『リエンジニアリング革命ー企業を根本から変える業務革新』には、業務革新の具体的な方法については何も書かれておりません。コンセプト(概要)と情報技術を活用することが書かれているだけです。よって、この本はBPRの宣伝が目的だったのです。
このため、アメリカ、及び日本でもBPRが急速に普及し、日本では業務改革と言えばBPR、業務改革と言えばITを活用することが常識となってしまいました。その原因は、ITを活用すれば容易に業務効率化や業務改革ができると勘違いしたからです。このため、高額なIT投資をしても業務効率化や業務改革ができなかった、投資がムダになってしまったという企業が後を絶ちません。
このことについて詳しくは、「1-6 50年前から現在までの、ホワイトカラーの生産性を高くする試み」に書きましたのでご覧ください。
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