業務効率化の目的はムダな業務の廃止・削減であり、人件費の削減であり、コスト削減であると既に書きました。よって、業務効率化は人員の削減になります。
従業員はこのことを良く知っておりますから、自ら積極的に業務効率化活動を行うことは決してありません。一生懸命にやればやるほど、墓穴を掘ることになるからです。
したがって、闇雲に業務効率化活動を実施すると必ず失敗します。失敗する原因は、業務効率化にITを活用し、〇〇システムを導入したり、ERPパッケージを導入したりして、人員(人件費)の削減を行わない場合です。
人員(人件費)の削減が目的であるにもかかわらず、人員(人件費)の削減を行わないのですから、その効果が分からず、うやむやに終わってしまうのです。
そこで、有能な経営者は失敗することが分かっている活動はいたしません。人員の削減が目的の場合には、業務効率化活動は必要ないのです。なぜなら、それは通常、景気が悪くて仕事がない時期であり、業務を効率化する必要はなく、単に人員を削減すれば良いだけだからです。
つまり、業務量に比較して人が余っているのですから、ムダな業務の廃止・削減(業務効率化)ではなく、ムダな人員の削減を行えば良いのです。
しかし、そう簡単に人員の削減を行うことはできません。そこで、有能な経営者は考えたのです。何とかして上手に人員を削減する方法はないかと。面倒な業務効率化活動を行わないで人員を削減し、しかもこれをカムフラージュする方法はないかと。
このため、これまで数十年の間、いろいろな言葉で人員削減活動が行われてきました。すなわち、「合理化」、「スリム化」、「減量経営」、「時短」、「リストラ」などです。なぜなら、これらの言葉は本来の目的で使われたことはほとんどなく、主に景気の悪い時期に人員削減のために使われた言葉だからです。
しかも、新聞やテレビでもこれらの言葉が人員削減の意味で使われてしまい、人員削減の代名詞として世の中に認知され、定着してしまったわけです。
このため、経営環境の変化により、リストラ(Business Restructure:事業の再構築)を行わなければならないにもかかわらず、リストラ反対運動が起こってしまったのです。
よって、会社はリストラを行うことができず、業績がいっそう悪化し、その結果、会社が倒産するか、たとえ倒産を免れたとしても、最終的には、多くの従業員を解雇することになってしまったのです。つまり、リストラを行うことが出来なかったために、多くの人員を削減することになってしまったのです。
ちなみに、リストラ(事業の再構築)とは、業績向上の見込みがない事業から撤退すると共に、業績向上の見込みのある事業に経営資源を集中させて事業を強化したり(事業の選択と集中)、新規事業開発を行って取り組んだりすることを言います。要するに事業を建て直すことです。「Restructure」は再び建てる、作り直す、の意味です。
よって、リストラを行う場合には、通常、まず、衰退する事業にしがみついている人や強化事業・新規事業に取り組む意欲と能力のない人を解雇します。次に、従業員の配置換え(人事異動)を行います。そして、強化事業や新規事業に取り組みます。そして、新規事業がうまくいけば、新たに従業員を採用して事業を拡大するのです。したがって、リストラは通常、最初は従業員を減らし、その後は増やすのです。
しかしながら、実際に人員削減を行うと、残された人の労働意欲までなくしてしまうものです。次は自分かと不安な日々を過ごすことになるからです。このため、人員削減を行った直後は一時的に業績が回復するものの、その後、急速に推進力を失い、いっそう業績を悪化させてしまう場合もあるので、人員削減は非常に危険なのです。
とは言うものの、人員を削減しないと会社が倒産してしまうという危機的状況であれば致し方ないことだと思います。苦渋の選択ということになると思います。また、人員削減を行った後は、従業員の労働意欲を高める努力をしなければいけません。
このために行うのが業務改革活動なのです。すなわち、今後の企業の成長・発展のために、新製品開発や新事業開発に取り組むのです。そして、そのために人員の再配置を行うのです。そして、新事業が軌道に乗れば、新たに人を採用することになります。
よって、業務効率化活動だけを行うのではなく、業務改革活動を行う必要があるのです。つまり、業務改革のために業務効率化を行うのです。
ここで、参考までに、筆者が行った富士フイルムと日本たばこ産業の業務改革のコンサルティング事例を簡単に紹介します。富士フイルムは以前は日本のフイルムのシェアーが80%以上あって、フイルムと言えば富士と言われるほどでした。皆さんもご存じでしょうが、富士フイルムは「写るんです」という商品名で使い捨てカメラを開発した会社です。
ところが、技術革新によりフイルムがデジタルに変わってしまったのです。そこで、フイルムの製造技術を活用して化粧品の製造技術を開発しました。つまり、技術開発と新事業開発を行ったのです。現在ではフイルムはほとんど製造販売していません。富士フイルムはフイルムメーカーではなく、デジタルカメラと化粧品のメーカーに変わったのです。
日本たばこ産業は、以前は「日本たばこ専売公社」という社名でした。このため、筆者がコンサルティングを行った時には、社員の皆さんは「公社」と呼んでしました。消費者の健康志向により、たばこの売り上げが激減したために、業務改革を行うことにしたのです。当時の売り上げは約3兆円で、当時は日本一のメーカーでした。
ところが、売上が30%以上も減ってしまったのです。その後も売上が減り続けました。そこで、たばこの製造技術を活用して、新事業開発を行うことにしたのです。例えば、たばこの箱の印刷技術は日本のどこの印刷会社も真似できないほどの優れた印刷技術だったのです。というのも、紙幣と同じように、印刷が少しずれているだけで、そのたばこの箱はマニアの間で高値で取引されていたからです。そこで、印刷事業を新たに行うことにしました。このような優れた製造技術が他にもいろいろありましたので、実に、100以上の新事業が提案されました。そして、いろいろな新事業を開発したのです。
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