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開発&コンサルティング

2-4 業務効率化は景気が良く、人が足りない時に行えば成功する

ムダな業務を廃止・削減する業務効率化活動は、景気が良くて人が足りないときに実施すれば成功します。なぜなら、業務量が多くて人が足りないわけですから、ムダな業務を廃止・削減して業務量を減らせば良いからです。

業務効率化=人員削減、と短絡的に考える人もおりますが、それは景気が悪く、人が余っている時であって、景気が良い時には当てはまりません。かつて、「時短(時間短縮)」も人員削減をカムフラージする言葉として使われたことがあります。しかし、政府が「時短」を推進した頃は非常に景気が良く、後にバブル経済と呼ばれ、どの企業も残業が非常に多くて本当に「時短」が必要な時期だったのです。

その頃、筆者も業務効率化を中心としたコンサルティングをかなり行いました。しかし、当時は、企業がやるべき仕事は他に山ほどあったので、ムダな業務を廃止・削減した結果として、余った時間や人は残業の削減や強化業務・新規業務の取組みに活用したのです。

参考までに、当時の状況について紹介しておきます。筆者がコンサルティングした数十社の一部上場企業における業務時間の月平均は、約200時間でした。年間で約2400時間です。業種別に見ると、業務時間が最も多かったのが金融業です。筆者がコンサルティングした5社平均で月約230時間でした。

男女別では、女性は月180時間程度でしたが、男性はほとんどが月250時間を越えていました。月25日としても1日に10時間です。しかも、この数字はいわゆるサービス残業を含んでいません。ですから、実際にはもっと多かったのです。

当時、銀行ではだらだらと仕事するのが普通になっていました。それは当時の大蔵省や日銀が夜遅くまで仕事をするので、それに合わせざるを得ないためです。「夜遅く日銀から電話がかかってくることがあるので、予定の仕事が終わっても帰ることができない」ということでした。

次に業務時間が多かったのが、自動車部品メーカーなどの製造業でした。本当にフル生産しておりました。日曜も祭日もありませんでした。働く人がいなくて日雇いの外国人労働者を多く雇っており、外国まで人集めに行かなければならないのと、外国人労働者の日常生活の世話のために、人事も総務も非常に忙しかったのです。

この頃、筆者がクライアント企業の人によく言ったことがあります。「月250時間以上働いている人は憲法違反であり、健康で文化的な生活はできない」と。これを聞いた皆さんは笑っていましたが、憲法第25条に、「全ての国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」とあります。

当時、多くのメーカーでは従業員は会社に泊まりこんで仕事をしていたのですから、どう考えても健康で文化的な生活とは言えませんでした。ちなみに、布団のレンタル業者も非常に忙しかったのです。

さて、このような忙しいときに、業務の効率化活動を行うのはたいへんでした。なぜなら、現状業務の顕在化(見える化)を行ってからでないと、何がムダで何がムダでないかが明確にならないからです。現状業務の見える化を行うには、通常の業務にプラスして見える化のための作業を行わなければなりません。

それで、業務効率化活動を実施した企業では、「何でこのくそ忙しい時に、業務の効率化なんてことをやるんだ」という意見が多かったのです。このため、「こんな時こそムダな業務を廃止・削減する必要があるのです」ということを強く提案する必要がありました。そして、理解してもらって各社に取り組んでもらったのです。

その結果、ほとんどの企業で、ホワイトカラーの業務量の30%以上の削減ができました。つまり、忙しい、忙しいと言いながらも実はかなりムダな業務を行っていたのです。通常は、暇な時ほどムダなことをするものですが、実は、暇な時にはムダな業務が発見しにくいのです。それで、暇な時でもムダな業務が発見できるような業務の見える化を行う必要があります。具体的には、第3章をご覧ください。

Ⓒ 開発コンサルティング

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