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開発&コンサルティング

2-7 経営者にやる気がなければ始まらない

多くの企業では、業務効率化や業務改革が必要だと分かっていても、また、その重要性を理解していても、本音は、経営者も従業員も面倒なことは実施したくないと思っています。よって、提案しても必ず反対されます。

その理由(言い訳)は、経営者の場合は、「金がない、人材がいない」であり、

従業員の場合は、

  1. よけいな仕事はしたくない、これ以上忙しいのはごめんだ。(仕事の量)
  2. これ以上難しい仕事は嫌だ。これ以上面倒な仕事はしたくない。(仕事の質)

というものです。

経営者が、「金がない、人材がいない」と言うのは、言い訳の常套手段で、何を提案してもそう言うのです。

例えば、中小企業庁、あるいは経済産業省が毎年、企業を対象にいろいろな調査を行っていますが、いろいろな課題に対してできない理由が、いつも、「金がない」と「人材がいない」なのです。このことは中小企業白書や経済白書を見れば分かります。

そこで、中小企業庁はいろいろな施策を毎年実施しています。金がない企業には補助金、低利融資、減税、特別償却などをしてくれます。また、人材がいない企業には、専門家を格安で派遣してくれます。しかし、それでも多くの企業では実施しようとしないのです。施策があるのすら知らないのです。施策を知ろうともしないのです。つまり、施策を調べようともしないのです。

要するに、「金がない」「人材がいない」ではなく、本当の理由は、「やる気がない」のです。本来、経済産業省や中小企業庁は、やる気のない企業には一切、支援をしません。当然です。税金を使って支援をするのですから、ムダな税金は使わないのです。

その一方で、政府の施策を目いっぱい活用し、多くの専門家を格安で活用し、多くの補助金をもらい、低利融資、減税などのいろいろな恩恵を受けている企業もあります。そのうえで、活動がうまくいって業績が上がれば国から表彰してもらい、全国に会社が紹介され、知名度が上がり、ますます受注が増え、というように好循環になっている企業もあります。これは要するに経営者のやる気の違いなのです。

経営者にやる気がなければ当然、いろいろな課題に取り組もうとしないですから、会社の業績が良くなるわけがありません。業績が良くならなければ、ますます、金がない、人材がいないとなり、ますます業績が悪くなり、会社は衰退するのです。

実は、経営者にやる気がない企業では、従業員もやる気がありません。特に若い従業員は、どのような課題に対しても、「よけいな仕事はしたくない」「これ以上めんどうな仕事はしたくない」と口をそろえて言うのです。これらは本音ですから、経営者や幹部の前では言いません。

ところが、従業員の中には、やる気のある人もいます。常に危機意識を持っている中堅社員や幹部もいます。なぜなら、会社がこんな状態で自分の将来はどうなるのか、この会社にこのままいて大丈夫なのかと思うからです。

やる気のない経営者(社長、役員)は波風立てたくないとか、このままの状態で、あと数年過ごして退職金をもらって引退できれば良いと考えています。また、若い従業員たちは会社がダメになったら他の会社に転職すればいいと思っています。

しかし、中堅社員や幹部の方々はそうではありません。転職するには難しい年齢だし、仮に転職できたとしても、一から出直しするのはごめんだと考えているわけです。

そこで、通常はやる気のある中堅社員や幹部が中心となって、会社の建て直しを図ろうと業務効率化や業務改革に積極的になります。何度も幹部同士で打ち合わせをして、業務効率化や業務改革を実施することに決め、経営者に承認を求めます。

すると、経営者は本音はやる気がないので、他の従業員たちはどう思っているのかと聞きます。そこで、若い従業員に意見を求めると、ほとんどの人が反対するのです。それで、結局、経営者も反対することになります。

ところで、企業は祭りの「みこし」のようなもので、一部の人たちだけが一生懸命に担いでいるのです。大部分の人は担いでいるふりをしています。中にはぶら下がっている人もいます。肩の高さ(能力とやる気)がそれぞれ違いますから、当然そうなります。

いろいろな企業がありますが、企業は売上や利益を増やすために競争しているのであり、戦っているのです。戦いを止めたり、戦って負ければ、業績は悪化し、最悪の場合には市場から撤退するしかありません。

ちなみに、企業が倒産する真の原因は「おごり」と「甘え」です。「我が社のような優良企業が倒産するわけがない」と思うのが「おごり」であり、「これまでやって来れたのだから大丈夫だ」と思うのが「甘え」です。このことは歴史が証明しています。

Ⓒ 開発コンサルティング





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