次ページ  目次

開発&コンサルティング

第1章 業務効率化・業務改革の基本的考え方

1-1 業務効率化とは?業務改革とは?

業務効率化、あるいは業務改革を実施したのだが、どうもその効果が良く分からないと言われる経営者が多いです。そこで、最初に明確にしておくことは、業務効率化の目的と業務改革の目的です。これらの目的を明確にしないで活動を行っても、その効果は明確にはなりません。

まず、業務効率化の目的ですが、これは現状業務におけるムダな業務の廃止・削減であり、業務時間の削減です。よって、人件費の削減、すなわちコスト削減が目的となります。これについては多くの企業で確認しておりますが、異論はないようです。よって、業務効率化を実施しても人件費を削減できなければ効果はなかったと言うことになります。

実際には、多くの企業では、現状業務をIT化することによって、業務処理スピードを速くすること、つまり、業務処理時間を短縮することが業務効率化だと思っています。しかし、これでは効果が明確にはなりません。

なぜなら、多くの企業では業務時間、業務コスト、業務品質などの管理を行っていないうえ、業務時間は担当者の自由裁量に任されているからです。短時間でできる仕事でもだらだらと長時間かけて行うことができるのです。そのうえ、長時間かけて行った方が残業代を稼ぐことが出来るし、残業をした方が一生懸命に働いていると管理者から見てもらえるからです。

実際に、多くの企業の管理者にアンケートをしてみると、「残業をしていない人よりも、残業をしている人の方が企業に貢献している」と考える管理者が多いです。

しかも、給料は成果給ではなく、年功給、時間給、日給、月給などであるため、短時間で質の高い仕事を行っても給料が多くもらえるわけではなく、また、早く帰れるわけでもないのです。このため、業務をIT化して業務時間を短縮してもその効果が経営者には分からないのです。

一方、業務改革ですが、最初に書きましたように、業務改革はBPRではありません。ITシステムを活用しても業務改革はできません。業務改革は文字通り、業務を改革することです。つまり、業務のあるべき姿を追求し、根本から見直し、変えることです。このために、多くの企業では、業務発生の源流である中期経営計画を見直し、中期経営計画が実施できるようにするのです。よって、多くの企業では、業務改革の目的を、「中期経営計画の達成」とするのです。

また、中期経営計画は経営戦略の実行計画ですから、中期経営計画を達成できなければ経営戦略が実行できなかったと言うことになります。したがって、中期経営計画の達成は企業にとっては最重要課題となるのです。

中期経営計画は、経営戦略、及び戦略ドメイン(事業領域)を基に立案します。よって、中期経営計画を見直しするためには、まず、経営戦略や事業領域を確認する必要があります。企業によっては、経営戦略や事業領域も見直ししなければならない場合もあります。また、中期経営計画を実施するためには、経営組織や人事制度などが中期経営計画を実施できるようになっていなければなりません。しかし、多くの企業ではそうなっていないのです。

このため、結局、業務改革によって、経営戦略、事業領域、経営組織、人事制度、企業文化など、経営の骨格(骨組み)すべてを見直して、再構築する必要があるのです。企業によっては、経営理念から見直しする必要があります。ただし、あくまで業務改革であって、組織改革や人事制度改革ではないので、これらの見直しは一部に留め、中期経営計画が実施できるようにすれば良いのです。

ところで、筆者はこれまで多くの企業で業務改革のコンサルティングを行ってきましたが、企業によって業務改革の目的が異なります。

例えば、「中期経営計画の達成」の他には、「意思決定と実行の迅速化」や「顧客満足・従業員満足の向上」などがあります。企業によって目的は異なるのですが、それは対象業務の範囲(全社、本社、工場、支店など)と重点の置き所が異なるだけです。よって、業務改革の内容はあまり変わりません。

例えば、会社全体を対象とした場合、「中期経営計画の達成」を目的とする企業が多く、本社だけを対象とした場合、「意思決定と実行の迅速化」を目的とする企業が多く、工場や支店を対象とした場合、「顧客満足・従業員満足の向上」を目的とする企業が多いのです。

いずれにしても、これらの目的を果たすためには、トップ(社長、工場長、支店長)以下、経営管理部門(ホワイトカラー)のすべての業務(デスクワーク)を対象に、見直し、再構築する必要があります。つまり、これらの目的を果たすためには、経営の骨組みを見直ししなければならないのです。

業務改革そのものは目的ではありません。何のために業務改革を実施するのかを明確にして実施する必要があります。このように目的を明確にして、業務改革を実施するのであれば、その効果は明確となり効果測定ができるのです。

本来、業務効率化や業務改革はITを活用してもできません。むしろ、ITを活用する前に行う必要があります。なぜなら、業務効率化や業務改革は業務を実施する人の意識(考え方や価値観)の改革だからです。業務は人が行うのであって、ITが行うわけではありません。

ITは情報技術であり、コンピューターは道具にすぎません。技術や道具をどう使うかは人が決めることです。まず、頭を使って、創意工夫によって業務効率化や業務改革を行い、業務に対する意識(考え方や価値観)を改革した後に、それぞれの業務に適したITを活用すれば、より確実に業務効率化や業務改革ができるのです。

Ⓒ 開発コンサルティング

次ページ  目次