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開発&コンサルティング

1-2 創意工夫によって業務効率化、業務改革を行う重要性

1.創意工夫によって業務効率化、業務改革を行う理由

筆者は50年以上前の学生時代に、「日本の生産性は欧米に比べて低い」「経営管理部門(ホワイトカラー)の生産性は直接部門(ブルーカラー)の生産性に比べて低い」ということを学びました。ところが、未だに低いのです。

その頃から現在まで、日本の多くの企業で、ホワイトカラーの生産性を高くするいろいろな試みが行われました。筆者はそれらを調べてみましたが、それらの試みはすべて成功しなかったのです。なぜなら、それらの試みはすべて的を射たものではなかったからです。特に、全く効果がなかったのがITを活用するBPRでした。

そのうえ、最近ではITの発達により、ホワイトカラーの生産性を高くするための本来の努力、すなわち頭を使って創意工夫をする努力を全く行っていないのです。金を使って業務のIT化を行い、本来の業務効率化、及び業務改革を行っていないのです。その結果、未だにホワイトカラーの生産性が低いのです。

ホワイトカラーの生産性がブルーカラーに比べて低いのは、創意工夫によって生産性を高くする努力を行っていないからです。一方で、生産性が高い日本の工場現場では昔から創意工夫による改善を行ってきました。現在でも、日々、創意工夫による改善を行っています。

改善(KAIZEN)という言葉が英語の辞書に掲載されているのは、日本の工場現場の改善活動が世界に知られるようになったためです。これからもずっと日本の工場現場では、創意工夫による改善を行ったうえで、IT化(デジタル化)、機械化(自動化・ロボット化)などを行うでしょう。

最近では、業務効率化、あるいは業務改革と言えば、ITを活用するのが当たり前という風潮になっています。しかし、業務効率化、あるいは業務改革は、本来、頭を使って創意工夫を徹底的に行った後にIT化する、あるいは機械化するものです。

なぜなら、業務は人が行うのであって、ITが行うのではないからです。ITを活用すれば業務処理スピードを速くすることはできますが、ムダな業務を廃止・削減したり、必要な業務を設計したりすることはできません。

まして、「中期経営計画の達成」「意思決定と実行の迅速化」「顧客満足と従業員満足の向上」などを目的に行う業務改革は、経営組織や人事制度の見直しも必要となるので、ITを活用してもできるわけがありません。

ITは業務を支援するための道具に過ぎないのです。どのような道具をどのように使うかは、人が決めることです。昔から言われているように、頭(バカ)と道具(ハサミ)は使いようなのです。業務を効率化したり、業務を改革したりするには、業務に対する人の意識(考え方や価値観)を変える必要があるのです。

それにもかかわらず、ITベンダー(販売業者)の誘いに乗って、ムダな業務にわざわざ金をかけてIT化したり、あるいは必要な業務であっても業務実態に合わないIT化を行ったりして、ムダな投資を繰り返す企業が後を絶ちません。

その原因は頭を使って創意工夫をする努力を全くせず、安易に金を使ってIT化したためです。その典型例が、いわゆるERPパッケージを数千万円も払って購入したにもかかわらず、ほとんど使っていない企業です。自業自得と言わざるを得ません。

2.業務をIT化しても業務の効率化はできない

経営管理者(ホワイトカラー)の業務(デスクワーク)は昔からほとんど改善・効率化が進んでいません。単に、IT化やコンピューターの利用が進んだだけです。つまり、業務処理スピードが速くなっただけなのです。それを改善・効率化だと勘違いしているのです。

そのうえ、IT化やコンピューターの利用によって、ムダな業務まで処理スピードを速くしたために、ムダな業務がいっそう見えなくなってしまったのです。

さらに悪いことに、業務をIT化して個々の業務の処理スピードを速くしても、全体の業務時間は変わらないのです。なぜなら、デスクワークと言うのは伸縮自在だからです。短時間でできる仕事でも、だらだらと長時間かけて行うこともできるのです。

これについては、子供の頃の勉強を思い出せば誰にでも分かると思います。1時間でできる宿題をだらだらと3時間かけて行っているのです。大人のデスクワークは子供の勉強と同じです。要するに、業務をIT化しても業務の効率化はできないのです。

業務の効率化とは業務処理スピードを速くすることではありません。必要のないムダな業務を廃止・削減することです。

よって、業務の改善・効率化を行うには、何はさておき、業務の価値分析を行って、価値のないムダな業務を廃止・削減すべきです。そのうえで、業務をきちんと管理しなければならないのです。

なぜなら、多くの人は、どの業務に価値があって、どの業務に価値がないのかが分からないからです。つまり、何がムダで、何がムダでないかが分からないのです。そのため、ムダな業務だと知らずに業務を指示命令したり、また、ムダな業務だと知らずに業務を実施したりしてしまうのです。

また、多くの企業では業務の管理をほとんど行っておりません。せいぜい、担当者の自己管理、あるいは直属の上司による管理です。まるで、子供が自分で学習計画を立てて、自分で管理しているようなものです。あるいは親から勉強しろ、勉強しろと言われているようなものです。これではきちんと管理しているとは言えません。

一方で、生産性が高い工場現場では、品質管理、原価管理、納期(工程)管理などを、専門の部門を設けてきちんと行っています。しかし、経営管理部門(ホワイトカラー)では、業務の品質(価値)管理、原価(業務コスト)管理、納期(スケジュール)管理などをきちんと行っていません。よって、ホワイトカラーの業務は管理していないと言っても過言ではないのです。ですから、いつまで経ってもホワイトカラーの生産性は高くならないのです。

また、価値のないムダな業務の廃止・削減を目的に、業務の見える化を行っていないのです。そのために、ムダな業務が見えず、ムダな業務の廃止・削減ができないのです。要するに、業務の改善・効率化のためのメスを全く入れていないのです。

ちなみに、ホワイトカラーの生産性が向上している企業では、例外なく、徹底的に創意工夫による改善・効率化を行ったうえで、IT化(デジタル化)や機械化(自動化、ロボット化)を進めています。要するに、工場現場と同じように頭を使って創意工夫を行っているのです。

よって、何はともあれ、頭を使って創意工夫による改善・効率化を徹底的に行うべきです。それだけでほとんどの企業では全業務量の25%以上の業務効率化ができます。要するに、人件費の25%以上が削減できるのです。これは、コンサルティング経験による数字です。また、これまでコンサルティング行った数十社の一部上場企業においては、全業務量の30%以上のムダな業務を廃止・削減しています。

業務効率化の考え方・進め方の要点を述べると、各自が行っている1年間の業務を誰もがマネできるレベルにまで「見える化」して、それらの業務1つひとつについて価値分析を行い、ムダな業務を見つけて廃止・削減します。

ちなみに、日本の経営コンサルタントの草分けである上野陽一氏の定義によれば、「ムダとは誰のためにもならないもの」を言います。つまり、自分のためにも、人のためにも、会社のためにも、顧客のためにもならないものです。本稿では、ムダとは価値のない業務を言います。

したがって、業務1つひとつについて、価値があるか無いかを徹底的に調査・分析するとともに、業務本来のあるべき姿について追求します。そうすれば、ムダな業務が明確になるとともに、業務の目的、機能(役割)、方法が明確になります。

従業員は自分が行っている業務の内容(方法)は良く知っていますが、その業務を何のために行っているのか(目的)、その業務はどのような機能(役割)を果たしているかをよく知りません。よって、ムダな業務を無意識に行ってしまうのです。

また、業務を指示する上司は業務の目的、機能、方法を明確にして指示しているわけではありません。思い付きで、場当たり的に指示する場合がほとんどです。つまり、経営計画に基づいて指示しているわけではないのです。このため、ムダな業務が発生してしまうのです。したがって、このようなことがないように予め職務記述書(ジョブ・ディスクリプション)を作成しておく必要があります。

職務記述書とは経営計画に基づき各部門で業務計画を立案し、これを基に各人が担当する個別業務(職務)を計画し記述したものです。職務記述書には各人が行う職務の目的、機能(役割)、方法、頻度、計画時間などを記入しておきます。なお、制約要件、機能要件、利用要件などの業務要件は業務分類(業務分掌)ごとにまとめて記入しておきます。

3.業務改革は業務をIT化することではない

既に書きましたように、業務改革の目的は企業によって異なりますが、全社を対象とする場合には、中期経営計画の達成を目的にする企業が多いです。なぜなら、中期経営計画は経営戦略の実行計画だからです。中期経営計画が達成できなければ、経営戦略が実行できなかったと言うことになるからです。

業務改革の考え方・進め方の要点を述べると、まず、中期経営計画がどのような根拠でできているかを確認します。つまり、どのような経営戦略、及び事業領域の基で、どのような理由により、そのような中期経営計画になっているのかを確認します。

企業によっては、経営戦略を見直して、事業の選択と集中や新規事業開発などの事業領域の見直しを行ったうえで、中期経営計画を再立案する必要があります。

そのうえで、中期経営計画をブレイクダウンした経営計画を確認します。場合によっては経営計画を立案し直します。次に、経営計画を実施するために、どのような業務や業務の仕組み(業務システム)が必要かを検討して業務設計を行います。例えば、経営計画に新製品開発計画や新事業開発計画が盛り込まれていれば、これらを実施するための業務設計を行います。

さらに、これらの業務を実施するにはどのような経営組織、人事制度などが必要かを検討し、これらを確認します。必要によりこれらを見直し、再構築を行います。例えば、組織の動態化を行って、社内ベンチャーを立ち上げたり、新規事業部門を設置したりします。

中期経営計画を達成するために必要な人員や時間は業務効率化によって社内から生み出します。このために業務改革活動と並行して業務効率化活動を実施するのです。中期経営計画達成のために社内の人員だけでは足りない場合には、新たに採用するか、それとも一部の業務を外部委託(アウトソーシング)します。

通常は、まず、残業の削減を行ったうえで、既存業務の強化や新規業務に時間及び人員を再配置します。IT化を行うのはこれらが終了した後です。

ちなみに、経営環境が変われば、経営戦略を策定し、事業領域を見直し、中期経営計画を立案します。したがって、当然、業務の効率化活動や業務改革活動を再び行うことになります。

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