次ページ  目次

開発&コンサルティング

第3回 山小屋ではお互い様

1年間で最も山小屋が混むのは、5月の連休、梅雨明け、紅葉の時期、そして正月休みである。ちなみに、お盆休みは分散するためか、それほど混むことはない。

さて、この混む時期に、人が集中する山小屋に泊まると、とんでもないことになる。3人で1つの布団に寝るのはまだ良い方で、布団も無く、廊下で寝かされることがある。最悪の場合には、土間で膝を抱えて、一夜を明かすことになる。そのうえ、食事もトイレも延々と待たされるのだ。

そこで工夫が必要になる。1つ目は、できれば日程をずらすことだ。連休最後の5月5日に、北アルプスの涸沢小屋に泊まったことがあるが、客はなんと私1人だけだった。前日の5月4日には、超満員だったそうだ。そのうえ、翌日は小屋のアルバイトの人達も下山するというので、宴会となり、私もご相伴に預かった。

2つ目は、分岐点にあるような小屋や、山頂近くの小屋を避けて、1つ手前か、1つ先の小屋に泊まることだ。例えば、槍ヶ岳に登るのであれば、穂高との分岐点にある横尾山荘を避けて、槍沢ロッジに泊まる。槍沢ロッジはいつも比較的すいている。横尾から槍の山頂までは距離が長いので、前日に槍沢まで登っておき、風呂に入ってゆったりと寝れば、翌日に、槍への登りが少しは楽になる。また、槍ヶ岳の肩の小屋を避けて、殺生小屋にする。この小屋はいつも人が少ないし、槍の写真を取るにはちょうど良い場所だ。

3つ目は、新しい小屋を避けて、古い小屋に泊まることだ。例えば、徳沢園を避けて徳沢ロッジにする。

4つ目は、できるだけ予約をすることだ。例えば、横尾山荘では、予約すると優遇されて、2段ベッドで寝られるが、予約なしでは雑魚寝、または廊下で寝かされることになる。上高地から予約の電話を入れても、優遇してもらえる。また、徳沢園など、予約なしでは泊めてくれない所もある。本来、山小屋は、人命救助のため、どんな場合でも、宿泊の申し出を断ることはできないことになっている。よって、徳沢園は、すでに山小屋ではなくなったということだ。

5つ目は、いわゆる穴場に泊まることだ。例えば、上高地の帝国ホテルの脇にある小屋は、地図にもガイドブックにも載っていない小屋であるが通年営業している。この小屋は、帝国ホテルの管理人の小屋だそうで、料理の材料は、帝国ホテルと同じものを使っているそうだ。本来は、冬に、軽装でやって来る馬鹿どもの、人命救助のために開放しているそうだが、帝国ホテルが営業中の時期でも、予約なしでやって来て、断られた人たちのために営業しているのだそうだ。

ところで一般に、人が多い山域であるにもかかわらず、泊り客が少ない小屋はサービスが良い。山小屋も人集めに一生懸命である。本来、山小屋にサービスを期待するのは、お門違いというものだが、最近の山小屋は、サービスを勘違いしているように思われてならない。私は決して、山小屋で生ビールを飲んだり、フランス料理やケーキを食べたりしたいわけではない。栄養のバランスの取れた食事を摂り、ふかふかの清潔な布団でゆったりと寝て、体力を回復したいのだ。食事については、昔に比べると格段に良くなった。保存技術や冷凍技術の発達のおかげである。しかし、布団については、昔と少しも変わっていない。湿った不潔な布団で寝るのはごめんである。

さて、混む山小屋も捨てたものでない。人が大勢いれば面白い話を聞くこともできるし、いろいろな出来事もある。いつだったかこんな事があった。2人ずれの若い女性に、上高地で声をかけられた。初めての北アルプス山行で、涸沢まで行きたいが、案内してもらえないかというので、涸沢まで一緒に歩くことにした。そして、涸沢ヒュッテに一緒に泊まることになった。

ヒュッテは非常に混んでいて、3人で1つの布団に寝なければならないという。そして、必ず、受付番号順に寝るのだという。そうすることによって、布団の取り合いを防ぐのだそうだ。ところで、私の受付番号はたまたま彼女たちの中間であった。したがって、私は彼女たちに挟まれて寝ることになる。私は少し困った?のだが、彼女たちはまったく気にしていないようだ。3人で1つの布団に寝るとなると、当然、頭と足を互い違いにしなければムリだ。よって、私の顔の両側に彼女たちの足がくることになるのだが、お互い様である。

やがて消灯時間になった。しかし、どうにも落ちついて寝られない。というのも、仰向けで自然体になると、私の両手が彼女たちの大事な所に置かれることになるのだ。実に具合が良い。いや、やはり悪い。そこで仕方なく、腕組みをして寝ることにした。どのくらい時間が経っただろうか、重苦しくなって目が覚めた。すると、なんと、彼女たちの足が私の腹の上に乗っているのだ。そして彼女たちの手は、私のチンポコの上に置かれている。また、私の手も、彼女たちのアナポコの上に置かれていた。これもやはり、山小屋ではお互い様なのである。

Ⓒ 開発コンサルティング





次ページ  目次