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開発&コンサルティング

1-3 発明や開発ができる人とできない人(2)

専門家は発明や開発ができません。専門家というのは、特定の分野について深い知識を持っており、長年にわたって特定の分野で経験を積んできた人たちです。ところが、発明や開発は従来とは異なる考え方で、新たなアイデア(知恵)を出さなければならないわけですから、専門的な知識や経験があればあるほど、従来とは異なる考え方やアイデア(知恵)が出せないのです。

発明や開発は、いくつかの専門分野をまたがるような、いわゆる学際的な分野とか、今までなかった新たな分野のように、従来とは異なる分野から生まれる場合が多いのです。したがって、いわゆる雑学のように、いろいろな分野に興味を持っている人とか、あるいは専門分野を持たない人などの方が発明や開発ができるのです。よって、どちらかと言えば素人と言われる人の方が発明や開発ができるのです。

企業で商品開発を行う場合、開発部門を作ったり、プロジェクト・チームを作っていろいろな専門家を集めたりします。しかし、そのようにしても良いアイデア(知恵)はあまり出ませんので、発明や開発はあまりできません。いくら、いろいろな分野の専門家を集めてもダメなのです。なぜなら、そもそも専門家は発明や開発ができないからです。専門家はむしろ人が出したアイデア(知恵)を評価したり、人が出したアイデアの問題点を指摘したりするのが得意なのです。

実は、専門家を皮肉った専門家の定義があります。それは、「専門家とは、できない理由をたちどころに10以上言える人をいう」というものです。つまり、なぜできないかを説明することは簡単にできるのですが、どうすればできるかを説明することは専門家にはできないのです。

なぜなら、専門家というのは、過去の人が考えたことや発見したことを理解し、覚えることを中心に長年努力してきたからです。これまで誰も考えたことがないようなことを考えることは、あまりしてこなかったからです。それが専門家なのです。

また、専門家というのは、難しい試験に合格した人が多いですから、新しいことを考えることが苦手なのです。なぜなら、試験問題はすべて過去の専門的な知識が問われるので、難しい試験に合格するためには長年勉強して、専門的な知識を積み重ねる必要があるからです。

もちろん、難しい試験に合格したすべての人がそうだとは限りません。専門家であっても、斬新なアイデア(知恵)を出すことができる人もいます。それは専門家であっても、これまで培ってきた自分の専門的知識にとらわれずに、常に新しいことに挑戦している人です。つまり、常にアイデア(知恵)を出す習慣がある人です。

難しいことを習得するには努力が必要です。時間もかかります。何年も努力し続けなければなりません。しかも、すでに過去の人が考えたことや発見したことですから、あまり面白いことではありません。専門家になるには、あまり面白くないことを、長い間一生懸命に理解し覚えなければならないのです。

多くの専門知識はこのようにして習得するのです。長年努力し続けなければ習得できません。このため、そのような習慣ができてしまうのです。脳がそのように習慣付けられてしまうのです。このため、アイデア(知恵)を出せるようにはならないのです。

ところが、アイデア(知恵)を出すことは、本来楽しいことなのです。しかも、努力する必要は全くありません。なぜなら、人間の脳が本来そのようにできているからです。脳は常に考えるようにできています。考えることは人間の本能なのです。人間は考える生き物だからです。

例えば、いつもつまらないダジャレやおやじギャグばかり言っている人がいますが、こういう人はいつも考えています。誰も考えないことを考えているのです。楽しいからです。たまに面白いことを言ってそれがウケたりすると、より嬉しいのです。より楽しいのです。

なぜなら、誰も考えつかなかったことを考えたため、脳が活性化するからです。脳からドーパミンがドーパっと出るのです。ドーパミンと言うのは快楽物質です。だから、快楽になるのです。これが本来の人間的な活動なのです。

アイデア(知恵)を出すというのは人間の本能的な活動です。なぜなら、人間はいつも快楽を求めているからです。つまらない勉強ばかりしている人は、快楽を求めないのでしょうか?

動物はアイデア(知恵)を出すことができません。したがって、アイデア(知恵)を出すということは最も人間らしいことなのです。アイデア(知恵)を出すことを普段行っていない人は、人間らしいことを行っていないということです。動物と同じだということです。よって、毎日が楽しくないのです。人間らしい活動をしていないのですから、楽しいはずがありません。また、生きがいもないはずです。そんな人たちがあまりにも多すぎます。

毎日、創意工夫をして楽しく過ごして下さい。毎日、何かを考えてください。そうすれば楽しくなります。考えるということ自体が楽しいのです。考えることが人間らしい活動なのですから。考えなければアイデア(知恵)は出ません。考えるということは頭を使うことです。頭を使わなければ人間ではなく、動物になってしまうのです。

いつも考えるためには、何かに興味を持つことです。何かに興味を持った人は考えることが好きになります。でも、仕事については考えようとしない人が多いです。それは仕事に興味がないからです。仕事について創意工夫をしない人は、仕事がつまらないだけでなく、「仕事ができない人」という評価を受けてしまいます。実に大きな損失です。

これは本人だけの問題でなく、企業の問題でもあり、また企業の責任でもあります。企業は社員に興味のない仕事をさせてはいけません。社員が興味のある仕事をさせなければいけません。

本来、仕事と言うのは楽しくなければいけません。仕事は毎日行うのですから、楽しい人生を送りたいのであれば、楽しい仕事をするべきでしょう。人生は1度しかないのですから。

また、企業は考えることが好きな人を大事にしなければいけません。良いアイデア(知恵)を出すことができるか、できないかは、企業の栄枯盛衰にかかわるからです。企業というのはアイデア(知恵)で競争しているのです。知識で競争しているわけではありません。ですから、考えるのが好きな人を大事にする必要があるのです。そのうえで、考えるのが好きな人を集めて訓練すればいっそう良いのです。

ちなみに、弊社では、商品開発のコンサルティングを行う場合、簡単なアンケート調査を行って、考えるのが好きな人と、嫌いな人とを区別しています。すると、いわゆる専門家と称する人たちは、考えるのが嫌いであることが良くわかります。そこで、考えるのが好きな人を商品開発のメンバーに選定し、そのうえでアイデア発想の訓練を行っています。そして、考えるのが嫌いな専門家にはメンバーの出したアイデアを評価してもらっています。つまり、アイデア発想を行う人とアイデアの評価を行う人を区別しています。

参考:第85回 考えることを忘れた日本人

Ⓒ 開発コンサルティング





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