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開発&コンサルティング

第1章 商品開発・製品開発は誰でもできる

1-1 理解して覚えることと工夫して創作すること

多くの人は子供の頃に親や先生から「勉強しろ」「勉強しろ」と言われました。勉強というのは、ほとんどが理解して覚えることであって、工夫して創作することではありません。よって、多くの人は、工夫して創作することの楽しさやすばらしさを知らないまま、大人になってしまったのです。

学校の勉強というのは、教科書に書いてあることや先生に教えてもらったことを理解して覚えることなので、子供の頃から勉強ばかりしていた人はあまり工夫する(考える)ことがなかったと思います。筆者の経験では、勉強というのは80%以上が理解して覚えることで、工夫する(考える)ことは20%以下です。中には理解すら必要がなく、単に丸暗記するだけというものもありました。

工夫する(考える)ことは、例えば、作文をすること、絵を描くこと、工作をすること、自由研究をすることなどです。要するに、工夫して(考えて)創作することです。昔から創作が苦手な人が多いようです。この原因は、試験勉強ばかりやらされていたからでしょう。中間テストや定期テストだけでなく、頻繁に行われる小テストなどもありました。

入学試験はもちろん、資格試験のための受験勉強なども、ほとんどが理解して覚えることです。勉強というのは、昔の人が考えたことや発見したことを理解して覚えることです。別の言い方をすれば、既に答えがある問題に対して答えを出すことです。よって、試験に合格するには、答えを知っているか、答えの出し方を知っていれば良いのです。要するに、記憶していれば良いのです。ほとんどの試験は記憶を問う問題だからです。興味のないことを理解して覚えなければならない受験勉強ほどつまらないことはありません。

このため多くの人は受験勉強をあまりしないのです。その結果、入学試験や資格試験に失敗してしまうのです。かと言って、作文も、絵を描くことも、工作も、自由研究もあまりしないし、学校でもあまりさせないのです。なぜなら、勉強が何より重視されているからです。良い人生を送るためには入学試験や資格試験に合格しなければならないのです。しかし、つまらない勉強はやりたくないのです。かと言って勉強以外のこともあまりやらないのです。多くの人は何をやりたいのか分からないのです。

そして、多くの人は学校を卒業すると、できるだけ良い会社、あるいは大きな会社の入社試験を受けます。自分が何をやりたいのか分からないので、とりあえずそういう会社を受けるのです。そして、会社は、受験者の学生時代の成績と入社試験の成績で合否を決めます。入社が決まると会社の都合でどのような仕事をしてもらうかを決めるのです。このため、多くの人は社会人になっても、自分が何をしたいのか分からないまま、会社が決めた仕事を毎日行っているのです。よって、つまらない毎日を送っているのです。

実は企業も同じなのです。企業も何をすべきか分からないのです。このため、経営環境が変化しても、多くの企業は今までやってきたことを継続してやっているのです。その結果、多くの企業は商品開発や製品開発、あるいは新事業開発などを行っていないのです。その理由を経営者に聞いてみると、人材がいないとか、資金がないとか、技術がないとか、と言います。しかし、これは言い訳です。なぜなら、商品開発や製品開発は小学生でも主婦でも出来るからです。

小学生でも特許を取っていますし、主婦は自分が欲しいものを開発するので成功確率が高いのです。よって、中小企業でも小学生のように発明を楽しんで行えば良いのです。また、主婦と同じように消費者の立場で考えれば良いのです。中小企業だからといって、できないことはないのです。では、なぜできないのでしょうか。その理由は、これまでやったことがないので、できないと思っているからです。つまり、単に気持ち(意識)の問題なのです。

なぜ、小学生でも特許が取れるのかと言いますと、発明協会が子供たちの創造性開発育成事業を推進しているからです。「少年少女発明クラブ」が全国都道府県に21ヵ所あり、現在2800名の指導員がいるそうです。そして、発明の仕方や特許の取り方を教えているのです。また、毎年、「学生児童発明くふう展」を開催しています。

ところで、だいぶ前になりますが、毎週火曜日の夜7時に、「伊藤家の食卓」というテレビ番組があって、主婦や子供たちが工夫したことを放映していました。これを見ると、自分で工夫したと思われるものだけでなく、いわゆる、おばあちゃんの知恵であるとか、誰かから教えてもらったものなどもありました。

これらを専門家と称する人が、「◯◯の法則を上手に利用したものです」「◯◯の原理を応用したものです」などと解説していました。その法則とか原理というのが、「表面張力」だとか、「てこの原理」など、よく知られているものだけでなく、聞いたこともないような法則や原理がたくさんありました。実際に、主婦や子供たちが、◯◯の法則や◯◯の原理を知っていて、それを上手に利用したのかというと、そうではありません。それらを全く知らないで工夫したのです。

では、なぜ、できたのでしょうか。それは、工夫しようと思ったからです。工夫しようと思って、いろいろと考えたからできたのです。工夫しようと思わなければ絶対にできないのです。当たり前です。重要なのは、楽しみながら、ああでもない、こうでもない、と考え続けられるかです。つまり、工夫することが楽しいと思えるかどうかです。楽しくなければ工夫しようとはしません。

では、なぜ楽しくないのかを考えて見ましょう。考えることが好きな人と嫌いな人がおります。考えることが好きな人は、考えた結果、何かができて嬉しかったとか、考えたことが何かの役に立ったとか、人に褒められたとかを経験しているのだと思います。

例えば、料理を見れば良く分かります。料理は創作だからです。料理が好きな人は、何を作ろうか、どのように作ろうかと考えるのが好きなのです。なぜなら、以前に作った料理を食べた人から、「うまい」とか「おいしい」とかと言われたからです。ところが、料理が嫌いな人は、そういう経験をしていません。よって、何を作ろうかと考えるのが嫌いなのです。考えたくないのです。考えるのが面倒くさいのです。よって、作ろうとはしません。

人は、誰もできなかったことが、自分にできたときは非常に嬉しいものです。そして、このことによって自信が生まれるのです。「誰もできなかったことが自分にできた!」という経験によって、難しいことでもできるかもしれない、いや、自分なら絶対にできる、と思うようになるのです。なぜなら、実際に誰もできなかったことが自分にできたからです。

ところが、多くの人は、このような経験をしていません。小学校以来、学校で興味のない勉強を無理やりやらされて、勉強嫌いになった人は多いと思います。なぜなら、興味のないことを無理やりやらされて好きになることはないからです。「勉強しろ」「勉強しろ」と親や先生に言われて、無理やり勉強させられたのです。

しかも、それは工夫して創作することではなく、理解して覚えることばかりだったと思います。それで、工夫して創作することの楽しさやすばらしさを知らないまま、大人になってしまったのです。筆者のように、子供の頃にあまり勉強をしなかった人は考えることが好きになるのかも知れません。

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