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開発&コンサルティング

第86回 今こそ改善・開発を行うべきである。

今回の世界中を巻き込んだ大不況に対して、その原因を作った一人、前アメリカFRB議長が「100年に一度の津波が来た。全く予測できなかった」と言ったところから、「100年に一度の大不況」という言い方がされている。誰もが金融バブルに踊らされて、こうなるとは予測できなかったと言う。まさに、未曾有の大不況である。

すでに、これを少しでも食い止めるべく各国ではあの手この手を打っているが、まだ先が見えない。不況に最も強い会社として知られるトヨタでさえも、ついに赤字に転落した。先を読むということはまことに難しいものである。

このような状況の中で増収増益の会社もある。ファストリ(ユニクロ)だとか、マクドナルドなどである。この理由は内需中心であっただけでなく、消費者ニーズに適切に応えたためである。今回の不況で特に業績が悪化したのは外需中心の輸出産業である。外需中心の企業は海外の不況のあおりをもろに受けてしまった。しかも、かつてないほど急激な落ち込みである。

この理由は金融に対する不信である。国の経済を担う銀行が信用できなくなったのだから、一気に景気が悪化したのである。1929年の大恐慌の時はいわゆる取り付け騒ぎが起きた。つまり、多くの預金者が銀行に殺到し、預けた金を返せを言って騒いだ。今回はこのようなことは起きなかった。政府が全ての預金を保護したからである。

さて、ではこれからどうする。答えはわかっている。不況には関係ない人たちが世界には大勢いる。いわゆる富裕層である。まず、当面はこれらの富裕層をターゲットにすれば良い。例えば、自動車メーカでは、現在、富裕層をターゲットにしたハイブリッド車の販売を行っている。また、次第に景気が回復するにつれていわゆる中流層もターゲットとなっていく。このようなことは国内でも海外でも同じである。

つまり、富裕層及び中流層向けの商品を開発するか、それとも従来ある商品をコストダウンして低価格で販売するかである。これから行うことは結局、顧客ニーズを先取りした商品開発とコストダウンである。このことは景気が良くても悪くても同じであるが、ターゲットが異なる。

既に継続的に商品開発やコストダウンを行っている企業はこれらにいっそう力を入れるべきである。なぜなら、今は仕事がなく、しかも人が余っているのだから。先日、トヨタは「今後研究開発を積極的に行う、研究開発費は絶対に減らさない」と言っていた。当然である。企業は明日に向かって進むのだ。ただし、現在は倒産しない程度に縮小せざるを得ない。そして、少しでも改善・開発余力を残して将来に備えるのである。

倒産しない程度に縮小するためには、まず、あらゆる側面でのコストダウンを行うことである。人を減らして人件費を削減するのも1つの方法である。しかし、将来のために人は必要である。技術やノウハウを習得した人まで削減すれば、今、倒産を免れても、将来、景気が回復したときに競争に負けて結局倒産することになる。したがって、今はできるだけ人は削減しない方が良い。ムダを削減するのである。

筆者の経験では、ほとんどの企業にあきれるほどのムダがある。例えば、人の稼働率を調べてみると20%~40%程度である。つまり、ほとんどの企業が人を遊ばせているのである。トヨタ流の言い方をすれば、人が単に動いているだけで働いていないのである。つまり、付加価値を生んでいないのである。この原因は手待ち、不良品の手直し、クレーム処理、再検査、トラブル対応など後ろ向きの業務に時間を取られているためである。これらの時間は金を生まないのでムダであり、人は動いていても働いていないことになる。

このようなムダが多い会社は人を削減するより、知恵を出し合ってムダをなくしたり、商品開発をしたり、新事業に取り組んだりするべきである。そうしないと、会社の将来はない。かつて、不況時には社内ベンチャーを立ち上げることが盛んに行われた。昔は社員を簡単には減らせないので将来に向けて新事業を開発したのである。戦後は、日本だけでなく、韓国や台湾、中国などの工業化が進み、これらの国は人件費が日本より安いためコスト競争力が高くなった。

日本の不況の歴史を振り返ると、最初に繊維産業が打撃を受け、壊滅状態になった。次に鉄鋼業が打撃を受け、「鉄冷え」なんていう言葉が流行した。そして、日本のほとんどの溶鉱炉の火が消えたのである。このときに多くの企業はどうしたかと言うと、事業転換をしたり新事業開発に取り組んだりしたのである。例えば、カネブチ紡績は紡績会社から化粧品メーカーに変身してカネボーとなったし、新日鉄では100社以上の新事業を行う子会社を作った。

企業と言うのはこのように環境の変化に対応して自ら変身しなければならないのである。企業とは環境対応業であると言われるゆえんである。したがって、この未曾有の不況時の今こそ変身しなければならない。幸いにも中小企業は大企業より変身しやすい。変身するためには、まず、徹底的なコストダウンを行う。そして商品開発、さらに新事業開発を行うのである。なぜなら、コストダウンはほとんど金がかからない。人の知恵だけでできるので最初に取り組む。

次に、商品開発は試作など多少金がかかるが、人のアイデアが勝負である。新事業開発は金がかかるから最後に取り組むのである。つまり、まずコストダウンを徹底的に行って金を生み出し、その金で商品開発を行い、新商品で儲けたら新事業開発を行うのである。この順で行えば必ずうまくいく。逆に行ったら会社は倒産する。もちろん、人を削減するだけで何もしないでいれば確実に倒産する。

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