e-Tax や電子特許申請、あるいは電子入札などに使用する電子証明書は認証局(電子証明書発行機関)が本人であることを確認してから発行する。このことを本人認証(本人であることを認め証明する)と言うが、この本人認証が間違っていたのである。これは身分証明書や印鑑証明書を発行する機関が本人を間違えて発行したのと同じであるから由々しき問題である。犯罪に使用される恐れがあるからである。
筆者は以前より電子特許申請などのために電子証明書をある認証局から取得し利用していたが、その使用期限が切れたのでこのたび再度申請をした。そして、その認証局から「申請書の書類審査が完了しましたのでお知らせいたします。電子証明書を発行いたしますので、別添のご請求書にてご利用代金をお振込みのほどお願い申し上げます」との返事が来た。
ところが、そのあて名を見るとは弊社の旧商号である「有限会社経営相談どっと混む」となっていたのである。また、同封されていた郵便局の払込票も「有限会社経営相談どっと混む」となっている。既に2年前に、弊社は有限会社から株式会社に変更しているのにである。
「申請書」にはもちろん現在の商号である「株式会社経営相談どっと混む」としてあるし、申請書に添付した「登記簿謄本」も「印鑑証明書」も当然、「株式会社経営相談どっと混む」のものなのである。
つまり、認証局の「申請書の書類審査が完了しましたので・・・・・・」などというのはうそで、書類審査など行っていないことが分かるのである。おそらく、申請者の氏名が以前と同じだったので会社の商号も同じだろうと判断したらしい。実にいいかげんである。
「有限会社経営相談どっと混む」という会社はすでに解散しているので存在しない会社である。もし、利用代金をこのまま振り込めば、この認証局は私を存在しない会社の代表者として電子証明書を発行することになる。
本来、電子証明書というものは本人であることを確認するために必要なものであるから、その発行には本人が所属する会社の登記簿謄本や印鑑証明を審査する必要があるのである。それなのに、こうした書類を審査することなく電子証明書を発行すれば、当然、本人認証ができないことになるし、不正に申請して電子証明書を取得する者がでてくる可能性がある。つまり、消滅した会社名でいろいろな取引ができてしまうことになるのである。
早速この認証局に電話して事の真相を聞いてみた。すると、請求書を発行する担当者がデータベースに登録してある旧商号のあて名で請求書を発行してしまったものだと言う。書類審査は別の部門が行っており、書類審査が終了した後にこの担当者が請求書を発行することになっていると言う。要するに、書類審査をした際に商号の変更に気づかずにデータベースを変更しないままで請求書を発行してしまったということである。
しかし、本当に書類審査をしたかどうかは不明である。なぜなら、書類審査をしたのであれば審査部門で商号の変更に気づくはずだからである。データベースの変更をしていないのであるから、書類審査もしていないものと思われる。したがって、もし代金を振り込んだ場合にはそのデータベースを基に電子証明書を発行することになるから、やはり、旧商号のままで電子証明書が発行されることになる。
この認証局の問題は、認証局でありながら、肝心の本人認証に必要な書類審査をきちんと行っていないことと、部門にまたがって業務を行う場合に、その引継ぎや連絡をきちんと行っていないことである。
さらに、この認証局にはもう1つ問題があった。既に書いたように、以前からこの認証局で取得した電子証明書を電子特許申請などに利用していた。
実は、初めて電子証明書を利用しようとしたときのことである。この認証局のホームページから電子証明書をダウンロードしたところ、既にインポートしてあったPGPという別の電子認証ソフトとバッティングを起こし、この電子証明書が使えなくなってしまったのである。そこで、PGPを削除し、この電子証明書をインポートしようとしたが、既に壊れていて使用できなくなっていた。
そこで、この認証局のテクニカルサポートに問い合わせしたのだが、きちんと対応してくれず、「ITの専門家ではないので修復の仕方はこちらではわからない」の一点張りであった。自分のところで販売した商品に対して、すでに販売し、手を離れたものは関係ないという態度なのである。品質保証やアフターサービスという意識が全くないのである。
そこで、改めてもう1度ダウンロードしようとしたができなかった。再度、問い合わせてみると、ダウンロードは1回限りであるとのことであった。そこで、どうすれば再度ダウンロードできるかと問い合わせると、もう1度申請書を書いて登記簿謄本や印鑑証明などの書類を添えて改めて申し込んで欲しいと言われた。電子証明書が使えなくなったのだから新たに購入申請してもらわないとダメ、とのことであった。
以上のように、認証局としての役割を果たさず、しかも販売した商品である電子証明書に対しても無責任な認証局である。したがって、皆さんが電子証明書を購入する際には気を付けた方が良い。私は信頼できそうだと思ってこの認証局に決めたにもかかわらずこのような状況だったのである。この認証局は「日本商工会議所」である。
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