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開発&コンサルティング

第79回 技術開発・商品開発に技術戦略マップを活用しよう

先日、日本技術士会の「技術士フォーラム2007」に出席した。副題として、「我が国の新産業・新技術の方向性~経済産業省の『技術戦略マップ2007』に学ぶ~」とある。さらに、資料には次のような序文が書かれている。

技術士フォーラム2007は、経済産業省が策定された「技術戦略マップ2007」を通して『我が国の新産業・新技術の方向性』を確認し、技術立国日本の将来を担う技術士の活動に資することを目的として開催するもので、活発な意見交換を期待しています。

「技術戦略マップ2007」は、市場ニーズ、社会ニーズの実現に必要な25の技術分野からなる2分冊950ページの報告書です。産学官の知見を結集し、新産業の創出に必要な技術目標や製品・サービスの需要を創造するための方策が示されています。主要な産業分野の技術動向、市場動向等を把握し、取り組まれるべき重要技術の絞込み、研究開発の方向性等を確認できる絶好の機会になるものと考えます。

今回のフォーラムでは、膨大な報告書の企画および多方面から注目される分野を取りまとめられた方に、その要点をご紹介いただきます。今後の技術士活動の上で本報告書を広く積極的に活用し、我が国技術の発展に貢献いただきたいと存じます。

また、議題として、

1.経済産業省 産業技術環境局研究開発課企画官 福田 憲一 氏
   『技術戦略マップ』策定の背景・目的と活用法

2.経済産業省 産業技術環境局研究開発課調整官 藤原 達也 氏
   情報通信分野の新技術の方向性と実用化のシナリオ

3.(財)エネルギー総合工学研究所 主管研究員 角本 輝充 氏
   エネルギー分野の新技術の方向性と実用化のシナリオ

4.(独)産業技術総合研究所 知能システム研究部門長 平井 成興 氏
   ロボット分野の新技術の方向性と実用化のシナリオ

となっていた。

この議題の中で、1.を除く2.3.4.については25の技術分野のうちの主な3つについてそれぞれ詳しく説明されたものなので、1.の「『技術戦略マップ』策定の背景・目的と活用法」についてその要点を書いてみようと思う。そして、この技術戦略マップがいかに企業の技術開発・商品開発に役立つかを知っていただきたいと思う。

<技術戦略マップ策定の目的>

  1. 技術動向、市場動向等を把握するとともに、重要技術の絞込み等を行い、経済産業省が研究開発プロジェクトを企画立案するための政策インフラを整備する。
  2. 専門化する技術、多様化する市場ニーズ、社会ニーズに対応するため、異分野・異業種の連携、技術の融合、関連施策の一体的実施を促進するとともに、産学官の総合力を結集する。
  3. 経済産業省が行っている研究開発投資に関し、その考え方、内容、成果等について国民に説明を行い、理解を増進する。

<技術戦略マップの構成>

  1. 導入シナリオ:研究開発成果が世の中に出ていく筋道とそのための関連施策を示したもの。研究開発成果が製品・サービスとして社会で利用されるイノベーションの道筋、特に、解決すべき制度的隘路などを関連施策を明示したもの。
  2. 技術マップ:技術課題を俯瞰し、重要技術を絞り込んだもの。実現すべき技術を階層的に体系化し、技術課題・要素技術を俯瞰。その中で国が取り組むべき重要技術を抽出したもの。
  3. 技術ロードマップ:求められる機能等の向上、進展を時間軸上にマイルストーンとして示したもの。重要技術について、達成すべき技術目標値や求められる機能を時間軸上にマイルストーンとして展開したもの。

<導入シナリオの目的と活用>

  1. 将来のあるべき社会や革新技術が切り拓く市場を見据え、そこに至るまでの主要な研究開発への取り組みを体系化
    ⇒将来像・最終目標(National Goal)を明確化した研究開発の立案・遂行
  2. イノベーションの実現に不可欠な関連施策の整理・明確化
    ⇒制度改革・標準化等必要な施策の明確化
  3. 関係者・関係機関が時間軸上でNational Goalを共有
    ⇒導入シナリオを参照し、企業は事業化戦略を検討

<技術マップの目的と活用>

  1. 実現すべき技術を俯瞰し体系化
    ⇒目標(イノベーション)実現に必要な技術を俯瞰し、整合性・一貫性ある研究開発を推進
    ⇒専門家以外にも理解しやすい技術俯瞰図により、異分野からの参入障壁を軽減
  2. 構成技術の体系的比較の中でプライオリティ付け
    ⇒国が行うべき観点から時間展開すべき重要技術(キーテクノロジー)の特定

<技術ロードマップの目的と活用>

  1. 研究開発の中で達成すべき技術的目標を時間軸上で明確化
    ⇒研究開発の進捗状況の評価を容易に
    ⇒同時並行で展開される関連技術・競合技術開発との整合性チェック
  2. 産学官の全ての関係者が研究開発の設定目標・道筋を共有
    ⇒関係研究者・民間企業が時間軸上のマイルストーンを共有して自律的な取組促進
    ⇒異分野からの参入による連携・融合を容易に

<新ビジネス創出への活用(中堅・中小企業向け)>

ビジネスモデル設計手法と戦略ロードマッピング手法とを結合・統合した新ビジネス創出プランニング・ディスカッション・マニュアルの策定・公開
  1. 自社の◯◯技術を核に現在◯◯万円の年商を◯◯億円にするために、新たな事業展開の検討
  2. ◯◯技術に関連する技術を技術戦略マップから抽出
  3. 抽出した技術の動向を基に、ビジネス目標を設定。その達成のための自社技術ロードマップを描き,それを基として新事業展開に向けた戦略を策定

<技術戦略マップの策定分野>2007年版:25分野

  1. 情報通信分野:
    半導体・ストレージ不揮発性メモリ・コンピュータ・ネットワーク・ユーザビリティ(ディスプレイ等)・ソフトウエア
  2. ライフサイエンス分野:
    創薬・診断・治療機器・再生医療・がん対策等に資する技術
  3. 環境・エネルギー分野:
    CO固定化有効利用・脱フロン対策・化学物質総合管理・3R・エネルギー
  4. ナノテクノロジー・材料分野:
    ナノテク・部材
  5. ものづくり分野:
    ロボット・航空機・宇宙・MEMS・グリーンバイオ・超伝導・人間生活・ファイバー

以下省略

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