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開発&コンサルティング

第70回 特許等の電子申請の勧め

電子政府の取り組みとして、まず、インフラ整備があり、次に電子申請の利用促進があるわけですが、政府はインフラ整備はほぼ完了したとしています。しかし、誰もが知っているようにインフラ整備を進めたのは政府ではなく、Yahoo!BBです。ADSL回線が普及したのは紛れもなくYahoo!BBのおかげだからです。

なぜなら、Yahoo!BBはもし普及しなかったら採算が取れないというリスクを負って最初から低価格で販売したのですから。それを政府が実施したかのように白書に書いたり新聞に発表したりするのはどうかと思います。

さて、電子政府の推進に関する調査(平成16年6月9日)によると、オンラインの申請・届出等の手続きの利用状況は平成15年度で81.0%となっているとか。しかし、その内容は個別の専用システムとして特許出願、通関情報に関するものが81.9%で、各府省の汎用的な電子申請システムが0.7%となっているということです。

つまり、多くの一般の人が利用する汎用的な申請・届出などの手続きはたったの0.7%というお粗末な利用状況であるにもかかわらず、少数の人だけが利用する特許出願や通関情報に関するものが81.9%だったということで、オンライン申請・届出は81%推進したなどと言っているわけです。実に、小ざかしいと言う他ありません。政府のやり方というのはこんなものなので、あまり白書や新聞などを信用してはいけません。なお、以上の内容は先日、経済産業省の委託事業として行われた「電子著名・認証フォーラム」で発表されたものです。

さて、以上のように政府は小ざかしいことを行っているのですが、そのようなことを暴露するのが本稿の目的ではありません。むしろ、政府の取り組みのすばらしさを特許出願を例に書いてみようというのが目的です。なぜなら、多くの人が利用する申請手続きに関しては行政書士や社会保険労務士などが中心になって普及を図っているのですがあまりにも政府の対応が悪いためにうまくいかないようなのです。というのも、実は汎用的な電子申請が0.7%というのも行政書士や社会保険労務士がほとんど代行申請したものだそうです。

つまり、政府はなぜか多くの人が利用するものに関しては普及を推進しようとしていないのです。その理由は、なんと言っても、法律的な制限があることです。例えば、契約書をはじめ各種の法的書類は紙でなくてはならないと法律で定めているからです。また、ハンコはお役所が大好きなものですが、これも紙の上に押したものでなければならないと定められているからです。電子記録が認められている決算書類にしても、税務署に提出するのは紙でなければならないわけです。電子申請の利用促進は法律の改正を待たなければならないわけで、しかもそれは当分無理だということです。

以上の状況の中で特許等の申請に関しては電子申請の普及が進んでいます。その理由とともに利用をお勧めしようというのが本稿の趣旨です。昨年から今年にかけて私は実用新案権を1件、特許権を3件出願しました。その出願手続きについて詳しく書いて多くの中小企業や個人の特許等の電子申請をお勧めしたいのです。もとより、特許申請するよりも発明する方が先決ですが、発明の方法やアイデア発想の方法については別のコーナーやこの「ひと言」のコーナーでも書いておりますのでそちらを参照下さい。

さて、特許等の出願というのは昔から郵便局から郵送出願するものと決まっていました。現在でも特許庁の窓口では出願を受け付けてはくれません。それは、わが国では先に出願した方が特許を取れる「先願主義」を採用しているからです。特許庁の窓口に全国から申請に訪れた人が我先にと窓口に殺到したのでは混乱してしまいます。そこで、郵便局から郵送することになっているのです。したがって、郵便局が押印する郵便受付日時が出願日時となるのです。これは、署名・認証という意味では確かに受け付けましたという郵便局の署名とタイムスタンプに相当するわけです。

ちなみに、アメリカでは先に申請した人ではなく、先に発明した人を優先しますので、何日の何時に発明したかが重要になるのです。したがって、その証拠物件が必要になります。これについては電話の発明についてエジソンとベルとの争いが有名です。エジソンが先に申請したのに発明したのはベルの方が先だったため、ベルが権利を取得したという話です。

さて、わが国では、先願主義ですから申請書類ができたらすぐに郵便局に行って特許庁宛に郵送するのが通常の手続きでした。しかし、最近はそういう人や会社はほとんどいなくなったのです。80%以上が電子申請に変わっているからです。

まず、電子申請のメリットを書いてみようと思います。そうすればなぜ特許の電子申請が急速に普及したのかがわかるからです。特許申請書類を郵送した場合、特許庁に届くとまず方式審査がなされます。つまり、申請した書類が形式的に不備がないかどうかを審査するのです。例えば、出願人と発明者の住所、氏名など必要な事項が書かれているかとか、半角の数字が使われていないかといったことを審査するのです。特許申請書類に使う文字はすべて全角を用いることになっているからです。

また、既に登録されている商標名が明細書に使われていないかとか、図面の書き方が間違っていないかとかです。こういった審査に数か月かかるのです。そして、もし不備が見つかったとすると、補正指令が出されるわけです。そして、補正書を提出するわけです。その補正書がまた不備だったりすると、補正書の補正指令がなされるわけです。そんなことをしていると申請書類が正式に受理されるまでに半年以上かかったりしてしまうのです。

一方、電子申請の場合はどうかというと、申請用のソフトがあって、無料で配布されています。このソフトを使って、作成した申請書類をフィルターにかけると自分で形式的な審査ができてしまうのです。「なんてすばらしいんだ!」と思わず叫びたくなります。例えば、何十万あるか何百万あるか知らないですが登録済みの商標をすべてソフトに記録してあって登録商標が使われていないかをチェックしてくれるのです。

例えば、マジックテープです。これは登録商標ですから、勝手に使うことはできません。例えば、「着脱自在連結用テープ」など書かなければいけないのです。したがって、このソフトを使うとあっという間に形式的な審査ができてしまうので、もし、何か問題があったとしてもたいていはその場で修正できてしまいます。

形式的な審査ができれば、早速、出願します。これも、パソコンからインターネット経由で書類を特許庁宛に送るので、あっという間に終わってしまいます。すると、数秒後に特許庁から「以下の書類を受理しました」という受領書が届きます。その受領書には日付と出願者の識別番号、氏名などの他、書類名、整理番号、受付番号、出願番号通知などが書かれています。つまり、郵送では数か月かかるものがあっという間に出願番号が通知されるわけです。

この出願番号は特許登録できた場合に付される登録番号と共に永久に使われる番号なのです。つまり、出願したという証拠となるのです。実際に、申請提出した書類すべてに、例えば、「整理番号:04-003 特願2004-378515(Proof)提出日:平成16年12月28日」と書かれているものが返信されてくるのです。これは出願してから30分程度で送られてきます。これらの出願した証拠となるすべての書類はその後の各種手続きの際に必要となるわけです。

以上のことからいかに電子出願が便利かということがわかると思います。しかし、実は問題があるのです。でも、それはすぐに解決されますので、大丈夫です。問題というのは現在はISDN回線しか使えないということです。数年前に政府はISDN回線を普及させようとしました。それ以前に一般的だったダイアルアップ方式に比べて早いし、1回線で電話とインターネットと両方使えるからというのが理由です。

ところが、少し価格が高かったためにあまり普及しないまま、ADSL回線が急速に普及してしまったわけです。そこで、政府・特許庁はそのための対策として、各地の発明協会支部などから一般の人が無料で電子出願できるようにしたのです。私もその恩恵を受けました。ちなみに、この問題は今年(2005年)の11月からADSL回線で特許申請できるようになりますので解決します。そのためのソフトも無料で配布されます。したがって、11月になれば個人でも自宅のパソコンからインターネット経由で簡単に電子出願できるようになります。

また、発明協会では以前から無料で出願書類の書き方などの相談を受け付けておりました。それで、私は数年前から足繁く通って出願書類の書き方を無料で学びました。これも政府の政策です。さらに、出願した場合に先行技術調査というのを無料で行ってくれます。これは、出願した特許と同じものあるいは類似のものがすでに以前に出願されていないかどうかを調査してくれるものです。

こんなありがたいことはありません。なぜかというと、特許庁で審査してもらうのに20万円かかるのですが、この先行技術調査ですでに同じものが出願されていたとすると、ムダな審査請求をしないですむからです。特許出願は1万6千円ですので、まず、出願しておいてそれからゆっくりと調べてもいいわけです。もちろん、出願する前に自分で調べますけど、自分だけではどうしても調査漏れしてしまいます。やはり、プロの調査員が調査してくれるのとは訳が違います。プロが調査してくれて、しかも無料なのですからありがたいです。

最後に、私はどうしても書いておきたいことがあります。実は、出願した後で出願した書類に自分で間違いを見つけまして、自分から補正手続きをしたのですが、その補正の仕方が発明協会の弁理士に相談してもよくわからなかったために、自分で調べて補正書を書いて提出したのです。ところが、その補正書が不備だったことから、特許庁の担当官が私に電話してくれて詳しく教えてくれたのです。

その後、その担当官は何かあると私に電話してくれて教えてくれるのです。私が短期間でいくつも出願しているためかもしれません。あるいは、誰にもそのように親切にしているのかもしれません。

いずれにしても、特許庁の対応はお役所とは思えない実に親切な対応なのです。資源を持たない日本が生きていくには、いろいろな技術や知的財産権などの知恵が必要なのですから、発明者に対して親切にしているのかもしれません。とにかく至れり尽くせりというのが特許申請にかかわる政府の対策であり対応なのです。特許申請が急速に進展した理由がここにあると思います。そこで、多くの中小企業や創業を計画している個人は発明をして特許申請することをお勧めいたします。

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