企業は常にいろいろな改善・改革・開発活動を行っています。環境の変化に対応し、消費者ニーズの変化に対応し、競合他社との競争に対応するなどのためです。そうしないと企業は生き残ることができないからです。つまり、改善・改革・開発活動が成功するか否かは企業の存続にかかっている重要なことなのです。
そこで、いろいろな企業で30年以上のコンサルティング経験からこれらの活動の成功要因について書いてみようと思います。
4つの成功要因があります。1つ目は「発想と評価を区別すること」です。改善・改革・開発活動では必ずアイデア発想とそれの評価という作業が付きものです。BS法(ブレーン・ストーミング法)でも発想するときには批判厳禁というルールがあります。それで、多くの企業では時間を区切って発想と評価とを区別しています。
例えば、15分間発想に専念し、その後評価するとか、午前中は発想し午後は評価するとかです。しかし、この方法ではダメです。発想する人と評価する人とを区別する必要があるのです。つまり、別の人が行うべきなのです。
日本では根本的にこの区別ができていないようです。というのも、経営レベルにおいても、企業統治(コーポレート・ガバナンス)に関する問題で、実質的に社長が決めて社長が実行して社長が監査するという日本的な経営が従来から問題になっていました。取締役会があっても機能していないし、監査役がいてもその人事は社長が決めるわけですから社長に異議を申し立てる監査人はいないわけです。それで、最近、企業統治に関する商法の改正が行われました。
また、業務レベルにおいても相変わらずプラン、ドゥ、チェック、アクションのプランとチェックを同じ人が行うためチェックがきちんとできていない場合が多いのです。自分で計画して自分でチェックするのですから、どうしてもチェックが甘くなってしまいます。
同様に、アイデア発想とその評価を同じ人が行うと評価が甘くなるのです。しかも、もっと重要な問題があります。それは、アイデア発想をする人と評価する人とは根本的に能力が異なるということです。つまり、発想の得意な人と評価の得意な人とがいるのです。分かりやすく言えば、漫才のボケ役と突っ込み役のちがいです。
医学的には右脳が発達している人と左脳が発達している人です。これは従来から言われてきたことですが、最近になってDNAによって区分できることが分かったそうです。したがって、プロジェクトチームを編成するときには、アイデア発想が得意な人をプロジェクトメンバーとすべきであり、評価が得意な専門家をメンバーとしてはいけないということです。
なぜなら、専門家というのは長い間、特定の専門分野の研究をしてきたので、左脳が発達し、評価は得意ですが発想は不得意だからです。専門家はある特定の専門分野に興味を抱き、それを深く研究することが好きな人なのです。一方、発想が得意人は分野を問わず興味があれば何でもいろいろ考えてしまう自由奔放な人なのです。よって、専門家をプロジェクトメンバーにすると発想を妨げてしまうのです。多くの企業で行っているプロジェクトメンバーの選定方法は間違っているということです。
成功要因の2つ目は発想の方法です。これについては、すでに、このサイトのいろいろなところで解説しております。人には思考の関所があって、自分の持っている知識や経験、生まれ育った環境から生じる価値観などにより、一定の枠の中でしか発想できないのです。自分が知らないことや経験したことがないことは発想できないのは当然のことです。
ちなみに、多くの発想法と称するものが以前からありますが、どれもあまり効果がないのはそのためです。チームで発想しても同じです。発想するのは1人ひとりであり、チームメンバーの頭が1つの頭に合体して発想するわけではないからです。
そこで、良いアイデアを出すためには、まず、思考の関所を乗り越える必要があるのです。その方法は異分野の知識経験を得ることです。しかし、そのためには長い間の勉強や実務経験が必要ですので簡単にはできません。そこで、特定の課題に絞って異分野について調査すればよいのです。つまり、課題についてあらゆる分野の解決方法を調査するのです。
しかし、課題が明確になると分野が狭くなってしまい、発想が限られてしまいます。そこで、課題を機能に置き換えるのです。課題は「○○を解決するには」であり、機能は「○○を××する」ですから「○○を××する方法」と置き換えれば、表現は異なりますが狙いは同じです。機能(役割)というのは課題をより抽象化したものですので、機能を果たす方法はあらゆる分野に存在するのです。
例えば、「より強力に接着する方法」が課題であれば、機能は「AとBを結合する」であり、機能を果たす方法は結合方法となります。したがって、あらゆる分野に結合方法がありますから、それらを調べて課題解決の方法を探るのです。
ちなみに、機能条件としては「結合強度○○kg以上」などとなります。多くの企業では、課題設定の際に、往々にして課題を具体化しすぎるため問題解決ができない場合が多いのです。そこで、課題を機能に置き換え抽象化するのです。
成功要因の3つ目は評価の仕方です。評価するのは難しいと言う企業があります。評価は、開発テーマの選定とかアイデアの選定などですが、これは事前に評価基準を明確にしておけば機械的に評価することができます。評価基準を決めないで評価しようとするために評価が難しいということになってしまうのです。
しかも、開発テーマの選定などに失敗すれば開発活動そのものがムダになってしまい、その責任を取らなくてはならないので、評価は難しいと言われるのです。そのようなことがないように、事前に評価基準を関係者できちんと決めておけば、誰が評価しても同じような結果になるわけですから問題ありません。
成功要因の4つ目は推進組織です。これについては、すでに第58回「研修・コンサルティングで成果を上げるには」において解説しておりますので、そちらをご覧ください。
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