いろいろな企業でコンサルティングをしていると、ダメ社員をどのように解雇するかで苦労している会社が多いことがわかります。このような会社こそ業務改革を行うべきなのです。なぜなら、本当はダメ社員ではなく、自分に合った仕事がないため、やる気にならないからです。
業務改革は業務効率化と異なり、単なる人減らしではなく人の有効活用が主な目的だからです。つまりムダな業務を削減するとともに、今後やるべき業務などを計画しこれらの業務に適材を配置し、これによって人の活性化を図ることが目的なのです。業務改革とは昔から言う適材適所を達成する活動なのです。
ところが、単調な仕事を毎日行って満足している人たちもいます。こういう人たちは役員や部課長クラスに多いのですが、変化のある仕事や新しい仕事を好まないのです。例えば、毎日部下の作った書類に“はんこ”を押すことに優越感を感じ満足していたり、会議に出席して、できるだけ従来どおりが良いという意見を言っている人たちです。現状維持の方が楽だし、一応、課長とか部長とか言われているので、ムリしてこれ以上出世しなくても良いと思っているからです。
こういう人たちが多い会社で、私は「ためしに係長と部長を取り替えてみましょう」と提案します。実際に取り替えた会社は残念ながら無いのですが、本当に取り替えるのかと冷や汗をかく人も多いので意識改革にはなります。
業務改革活動は役員も部長も課長も一般従業員も関係なく進めます。すべて「○○さん」と呼ぶようにしていますし、課題によっては係長クラスをリーダーにして部課長クラスをメンバーにします。また、実際に、課題を解決しようとしている時には、良い意見や案を出した人に他の人は自然に従うものです。伊達に部長をしているわけではない、というところを見せられれば良いのですが実際にはそうでない場合が多いです。
現状にあぐらをかいている人たちが現状を改革しなければならない時に、どれだけ意識が変わり現状を改革できるかが企業が生き残るポイントとなります。したがって、こういう人たちの意識改革が必要です。どうしても意識が変わらない人は解雇するしかありません。人の足を引っ張るだけですから。
ダメ社員の上手な解雇の仕方を説明する前に、人減らしに苦労している会社の例をいくつか紹介します。
さて、本論に戻ります。どうすればダメ社員を上手に解雇できるのでしょうか。会社を辞める(労働契約の終了)方法は、労働者側からの退職、会社側からの解雇、会社と労働者の合意に基づく合意解約の3つがあります。合意解約は撤回することができますから、最もトラブルにならないのは労働者側からの退職です。したがって、ダメ社員を上手に解雇する最も良い方法は、解雇ではなく退職に持ち込むことです。
そのためには本人が納得する方法を取ることです。日ごろから本人と上司や同僚、会社との関係をギクシャクしないようにしておくことです。また、人事制度を充実させ、人の能力評価と職務内容と給与との連動、教育訓練などいわゆる人事トータルシステムを整備しておくことです。そのうえで何度も配置替えをしたり、教育訓練しても成績が悪くまた態度が悪い場合には本人も納得せざるを得ません。
2つ目の方法として、会社からの解雇の場合ですが、会社が悪いのだということをはっきりと言うことです。つまり、会社の業績や経営状況が悪くあなたの能力を十分に活用できないから仕方なく辞めてもらうのだ、是非、他の会社で能力を発揮して欲しいと言うのです。会社から解雇する場合、明らかに就業規則違反など法的に解雇できる場合以外、裁判に持ち込んでも勝てません。
最後に合意解約の場合ですが、解雇の通告をする場合には週をまたがないで5日以内に返事を出させることです。例えば、月曜日に通告し返事を金曜日までに出させるのです。これ以上短くても、また長くてもダメです。短い場合には、本人や家族の心構えができないためにごねることになります。また、週をまたいだり長い場合には、家族以外の人に相談するため、余計な入れ知恵をする人が必ずいてトラブルになり、よけい長引いてしまいます。
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