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開発&コンサルティング

第48回 税法は法律ではなく、単なる「便法」にすぎない

税金は国が取り易いところから取るものであり、課税には何の法的根拠がない。税法は本来の法律ではなく、単なる「便法」にすぎない。その証拠に、国の都合により毎年のように税法を作り替えている。国は減税をして経済を発展させようとしているが、現在の税法のままでは、たとえ減税しても経済は発展しない。

税金に腹を立てている人は大勢いるだろう。一生懸命に働き、稼げば稼ぐほど余計に税金を取られるのだから。そのうえ、税金の使い道がいいかげんとくれば、「理屈に合わない」と言って、働く意欲を無くしている人たちもいる。しかし、税金はもともと理屈に合わないのだ。所得税や法人税は、より多く働いた人からより多く取るようになっている。

高額所得者は所得の半分が税金だ。いったい、何のために働いているのだろう。まさに、取り易いところから取るのだ。しかし、その一方で、低額所得者からはあまり取らない。あまり働かない人や、働けない人からは取らない。生活費までは取らないことになっている。つまり、取りにくいところからは取らない。江戸時代から、税金は「庶民を生かさぬよう殺さぬように」取ることになっている。

本来は、世のため、人のために、より多く働いた者からはあまり取らないで、怠け者から多く取るべきだろう。例えば、不動産所得や利子所得は不労所得だから税金をたくさん取るべきなのだ。そして、怠けて働かない者には強制労働をさせればいい。強制労働は昔からある納税の方法である。もちろん、病人や社会的弱者などからは取らないようにする。税金というものは理不尽なものだから、ついこのようなことを考えてしまう。

先日、日経新聞に「10月に焼酎の酒税が引き上げられるのに伴い、各社は小売価格を値上げする」という記事が出ていた。酒というのは税金について考えるのに最適な対象だと私は思う。なぜなら、税金がどのように決められるかが良くわかるからである。すなわち、ウイスキーが自由化し、安く輸入されるようになると、価格の割に税金が高いことが目立ち、税金を安くせざるをえなくなった。一方、焼酎は健康志向でみんなが飲むようになったので税金を上げたのである。まさに、取り易いところから取るのである。場当たり的と言わざるをえない。

焼酎の売り上げが伸びたのは健康志向のためであるが、一旦上げた税金は簡単には下げないだろう。しかし、税金が上がれば各社は価格を上げるので、その反動で売り上げが落ちれば、また税金を下げるかもしれない。現在は焼酎に変わって赤ワインがブームだから、そのうちに赤ワインの税金が上がるかもしれない。本来、酒の種類や価格で税率が異なるのはおかしい。酒税はすべてアルコールの含有量に応じて一律にすべきである。焼酎の消費が伸びたから税金を増やそうというのは納得できない。国は国民が健康になろうとするのをじゃましていることになる。

脱税が減らないのは、課税の仕方も税金の使い方も理屈に合わないので腹が立つからであろう。それだけではない。税法を知っている人は税金を安くできるが、知らない人は安くできないようになっているのも原因の1つである。何しろ税金の計算は面倒で難しい計算をしなければならないうえ、自己申告制なのである。

しかも、税金を少なく払えばそれがばれて脱税になるが、余計に払った場合には税務署にもわからないようになっている。要するに、国に都合よくできているのだ。本来、自己申告制としている以上、税金の計算は誰にでも分かるようにすべきである。そのうえ、簡単に計算できなければならない。そもそも税理士が存在すること自体がおかしい。したがって、現在のやり方は矛盾しているのである。このままでは永久に脱税は減らないだろう。

課税については昔からいろいろと議論されてきた。しかし、いまだに国にとって都合の良い方法を取っている。つまり、税金の計算を難しくして、取り易いところから取るというものだ。しかし、課税とは本来どうあるべきかをじっくりと考える必要がありはしないか。なぜなら、日本の経済を立て直す必要があるからだ。だから、国の発展のために働いた者からは税金をあまり取ってはいけない。特に、企業者(革新者)からは絶対に税金を取ってはいけない。シュンぺーターが言うように、「国の経済を発展させるには企業者による革新が原動力となる」からだ。

課税の目的は何かをよく考えるべきだ。税法を根本から見直さなくてはならない。企業者(革新者)を生み育てるのに必要なのは革新意欲を持たせることである。そして、税法によって革新意欲を持たせ、革新者を生み育てると考えるべきなのだ。つまり、税金は国の経済を発展させるためにあると考えるべきなのだ。小手先の減税では国は発展しない。

ちなみに、シュンペーターの言う革新とは、新技術・新製品開発、新サービスの開発、新市場開拓、販売方法の革新、組織革新などである。そして、これらを担うのは企業者(家)である。企業者(家)とはすなわち革新者である。単なる起業家とは異なる。新入社員でも学生でも革新者となれるのだ。マイクロソフトのビル・ゲイツ氏がいい例である。日本のビルゲイツを育てるような税法を国は考えなさい。

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