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開発&コンサルティング

第47回 勉強でも仕事でも基本が大切である

専門家は人があまり知らないこと、すなわち、専門的なことを知っている人なのですが、同時に、人が知っていること、すなわち、基本的なことも知っているはずです。ところが、専門家と称する人で基本的なことをあまり知らない人もいます。いわゆる、専門バカです。私は専門家ではないですが、基本的なことをあまり知らない1人です。困ったものです。

世の中がどんどんと進歩すると、基本的なことまで陳腐化してしまうからです。常識が常識でなくなってしまうのです。昔、私が大学の工学部を卒業する時に先生に言われました。「君たちが学んだことは10年で陳腐化してしまうだろう。よって、常に勉強を怠ってはいけない」と。基本的なことを知らないと応用が利かなくなるからです。

でも、逆に、こんなこともあります。私が工業高校の時に学んだことが未だに実用化できていないのです。例えば、熱電対を利用した冷暖房着。熱電対は電気を通すと、一方が熱く、一方が冷たくなるというものです。ヒートポンプと同じです。これを衣類に組み込めば、暖房着にも冷房着にもなるのです。もちろん冷暖房カーテンや冷暖房ふとんもできるわけです。しかも、外側が暑いほど内側が冷たくなり、外側が冷たいほど内側が暑くなるのです。なぜこんな便利なものが未だに実用化できないのでしょうか。未だに、温度センサーとしてしか利用していないようです。

まだあります。自動車のワイパーです。何であんなもの未だに使っているのでしょうか。運転の邪魔です。目の前で右に行ったり左に行ったりして、視界を遮るのですから。ジャンボジェット機も大型の船も使っているのですよ。実は、私が高校生の時に、ワイパーをなくす方法をみんなで考えてみようと先生が課題を出したのです。

私は、水スマシやあめんぼうを見習えばいいのではないかと考えました。つまり、水の表面張力を利用して水の上を歩けるのですから、同じようにして水をはじくものができるはずだと考えたのです。最近になってようやく本格的な研究が始まったと新聞で読みましたが、水をはじき、光を直進させる透明な物質は作れないのでしょうか。これが未だにできないのも、きっと基本的な研究を怠っているからだと思います。

自動車といえば、未だに自動車はできていませんね。自動車とは文字通り、自ら動く車のことです。現在あるのは、手動車ですね。運転手が手足を使って運転しているのですから。自動車が作れないかと考えたのも私が高校生の時です。私が考えた自動車を紹介しますと、道路の表面に張られた電線から電波を受けて走行し、車の前後左右にセンサーがあって、前後左右の車や人や壁などの障害物をセンサーでキャッチし、それらとの距離が遠ければスピードを上げ、近くなればスピードを落とし、ごく近くなれば停止するという自動車です。

ですから、衝突事故は絶対に起こらないし、運転する必要がないのです。運転手(乗客)が車の中で食事をしたり、コーヒーを飲んだり、新聞を読んだりしているうちに、目的地に着くという自動車です。寝ていてもいいのですよ。こういう自動車いつになったらできるのでしょうか。

こんなのはどうですか。100年以上使える蛍光灯。これは実は私が高校生の時すでにできていたのです。しかし、この蛍光灯を製造販売したら、メーカーはすぐにつぶれますね。一度、販売したらその後100年以上売れないのですから。良いものを安く作れるのに、100年以上使える蛍光灯を作らないのは何かおかしいと思いませんか。使い捨ての時代は終わったのですから、消費者が考えを変えなければいけないのです。

自分が一生使えるものを買って、大事に使うようにすべきだと思います。こういう習慣をつければ、古いものを大切にするので、資源のムダがなくなります。リサイクルもうまくいくし、環境破壊もなくなるし、技術革新も進むし、いいことづくめなのです。これもやはり人間の生活の基本的な問題ではないでしょうか。

基本というのは実は非常に難しいのです。以前にもこの「ひと言」で書いたことがありますが、基本を知らない人に基本を教えるのはベテランでないとできません。

例えば小学校で、「あいうえお」を知らない子どもに、あなたならどう教えますか。「あ」ってなんですか? 「あ」を説明するのに「ひらがな」なんて難しい言葉を使うことはできませんね。さあ、どう教えますか。外国人に日本語を教えることはできますが、日本語を知らない人に日本語で教えることは難しいのです。また、「1、2、3・・・」を知らない子どもにどう教えますか。「1」ってなんですか? 

経営も同じです。「経営」ってなんですか。きちんと説明してある本はないでしょう。それは各自が勝手にその意味を解釈しているからです。経営の意味も定かではないのですから、経営学もバラバラ、というよりジャングルのようになっていますし、経営の仕方も経営者によっていろいろなのです。よって、自分にとって経営とは何かを考えてみるとよいと思います。私も基本の勉強をもっとしっかりやらなくてはと思っています。

ところで、昔、大学の経営学部の学生だった時に経営学教授に聞いた話ですけれど、オクスフォード辞書には、経営(Management)の意味が次のよう書かれているそうです。「大きな荷物を抱えて歩いて行くときに、前が荷物で見えないので、まっすぐに目的の場所に向かって歩いて行くことが出来ない。そのため、あっちへ行ったり、こっちへ行ったりしながら目的の場所へ歩いて行くこと」が経営であると。

ちなみに、オックスフォード辞書と言うのは、新聞紙を広げたぐらいの大きさで、1冊が20巻からできていて、1冊で1つの部屋が必要なぐらい大きな辞書だそうです。私はまだ見たことがありません。日本には3冊しかないと聞いています。国会図書館と東大の図書館ともう1冊はどこかにあるそうです。

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