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開発&コンサルティング

第44回 目的を明確にして活性化すべきである

活性化という言葉がよく使われますが、企業により、人により、その意味が異なります。また、何のための活性化活動なのか、目的をはっきりさせないと失敗します。

かつて、ある企業から、「営業部門の活性化」をしたいという話がありました。部門の活性化なので組織が対象だと思っていたのですが、話を聞いてみると、「営業マンの活性化」だと言います。また、なぜ活性化したいのかを聞いてみると、売上が落ちてしまったからだと言います。そこでまず、営業マンの活性度を調べてみました。すると、活性度は高いことがわかりました。次に、なぜ売上が落ちたのかを調べてみました。すると、その原因は製品の陳腐化にありました。それで結局、「新製品開発」がテーマになったのです。全く見当違いだったということです。

もし、クライアント企業の依頼どおりに、「営業マンの活性化」に取り組んでいたとすれば、売上はますます落ち込んでしまい、とんでもないことになったでしょう。でも、このようにクライアント企業がテーマを決めて、コンサルティング依頼をすることはよくあります。コンサルタントが改めて調べること、つまり、診断することは企業にとっては恥部をさらけ出すことですから避けたいのです。病院に行って、腹の具合が悪いから胃薬をくれ、と言っているようなものです。腹の具合が悪いのは心筋梗塞が原因かも知れないのです。実際に心筋梗塞の症状に腹具合が悪くなることがあるのです。企業も人も誤診は命取りになります。

さて、「活性化」とは何かですが、これは本来、化学用語で、分子や原子が熱や圧力を加えられた時に、動きが速くなることをいいます。しかし、まさか会社で、人の動きが速くなっても活性化したとは言いません。経営用語として使う場合には、明確な定義がありませんので、人により、企業により、その意味が異なるのです。かっこいい言葉ですので良く使われますが、気をつけなければいけません。

一般には、組織の活性化と人の活性化とは異なります。組織の活性化は硬直した組織を柔軟な組織にすること、つまり、環境の変化にすばやく対応できる組織構造にすることをいい、人の活性化は人を動機づけすることをいいます。ですから、営業部門の活性化と営業マンの活性化とは異なるのです。

では、私の活性化に対する考えを述べます。

まず、一般には、組織の活性化は硬直した組織から柔軟な組織に変えることであり、組織構造を変えることですから、分かりやすく「組織構造改革」と私は呼んでいます。人により、「組織再構築」「組織再編成」などと呼ぶ場合もあります。また、実は、私は組織の活性化は組織構造を変えるよりも、組織風土を変えることだと考えております。なぜなら、多くの企業では、組織が活性化していないのは組織構造が原因ではなく、組織風土が原因だからです。したがって、これを、分かりやすく「組織風土改革」という呼び方をしております。組織開発と呼ぶ論者もおりますが、あまりなじめない言葉のようです。ちなみに、「組織改革」という言い方をした場合には、「組織構造改革」と「組織風土改革」との両方を言います。

次に、一般的には人の活性化、つまり動機づけですが、企業では研修という方法を取る場合が多いです。しかし、多くの場合失敗します。動機づけは教育してもダメです。第41回と第42回で動機づけについて取り上げましたが、本来、動機づけは自分でやるべきです。仕事を一生懸命にやるかやらないかは基本的には本人の問題だからです。会社としては、そのための支援や刺激(インセンティブ)を与える必要があります。

それがいろいろな人事制度なのですが、制度があるがゆえに、かえって従業員のやる気をなくしている会社が多いのです。それは、人事制度が動機付けを目的として作られていないからです。また、動機づけは個人的な問題でもありますので、1人ひとりと面談して対処する必要があります。つまり、カウンセリングが必要です。したがって、動機づけは「人事制度の再構築」または「人事制度の改革」というテーマになります。組織を活性化するためにも、人を活性化するためにも、人事制度の見直しは必要なのです。組織の構成員は人ですから、組織活性化は人の活性化でもあるわけです。そこで、私は「人と組織の活性化」という呼び方をしております。

いずれにしても、活性化は教育ではなく実践活動になります。ところが、活性化と称して一方的に考えを押し付けたり、単に尻たたきをする会社があります。こういうことを仕事にするコンサルタントもおりますが、これは全く逆効果です。部門長や社長がこれをやる会社は最悪です。従業員はいっそうやる気をなくしてしまいます。こういう会社には、部門長(特に人事部長)や社長に対する研修が必要です。

最後に、何のために活性化するのかが重要です。実は、活性化したいという企業のほとんどは何が目的かが明確ではないのです。漠然としているのです。業績が悪いからとか、活気が感じられないからとか、会議をやっても建設的な意見が出ないからとかなのです。活性化の意味が企業により、人により異なるのは、むしろ活性化の目的が不明確だからでしょう。ですから、活性化に取り組んでも必ず失敗します。目的とアウトプットを明確にし、活性化の方法と手順をじっくり検討して、その企業に合ったやり方をしないとダメなのです。

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