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開発&コンサルティング

第40回 組織編制は職務を決めてから人を決める

組織編成は、組織の目的を達成するための職務を先に決めてから、人を当てはめていくのである。ところが、多くの会社では、いまだに人を先に決めている。しかも、非公式にできた組織をそのまま公式組織にしてしまっている。これでは組織は機能しない。企業が厳しい環境におかれている現在、本来の組織編成をすべきである。

前回、管理過程(サイクル)は、プラン、ドゥ、チェック、アクションではない、なぜなら、ドゥ(実行する)というのは管理ではないから、と書いた。また、管理過程は、一般に、計画設定(プラン)、組織編成(オーガナイズ)、動機づけ(モチベイト)、統制(コントロール)であるが、多くの企業では、プラン、ドゥ、チェック、アクションとしているため、組織編成および動機づけが十分にできていない。したがって、管理ができていない、と書いた。そこで、今回は組織編成について書いてみたい。次回は動機づけについて書く予定である。

まず、組織とは、簡単に言えば、目的を達成するために人々が協力して働く仕組みである。公式組織とは意識的(意図的)に作った組織であり、非公式組織とは自然発生的にできた組織である。共通の目的を持っ数人が集まり、その目的を達成する意欲が各自にあれば、お互いに話し合ってその目的を達成するための職務を決め、その分担を行なう。こうして出来上がったものが公式組織である。これが、有名な「チェスター・バーナードの公式組織の定義」を分かりやすく説明したものである。

例えば、山に登るのに岩が崩れて登山道がふさがれているとする。そこへ通りかかった登山者たちが、協力して岩を取り除くために、何をすべきか(職務)を決め、その職務の分担を決めると公式組織ができるのである。これに対して、非公式組織とは、例えば、火事場の見物人とか一杯飲み屋で隣り合わせた人たちなどで、その人たちには共通目的がなく、また、そのため協力して目的を達成しようという意欲もない人たちの集まりである。簡単に言えば烏合の衆である。

企業組織は当然、公式組織でなければならない。したがって、組織編成はまず目的と役割(具体的には職務)を決め、後からその役割を果たすのにふさわしい人を決めるのである。しかし、日本の多くの企業では逆になっていて、先に人を決め、後からその人の職務を決めている場合が多い。つまり、自然発生的にできた非公式組織のような企業組織を作ってしまうのである。

これでは組織は機能しない。よって、組織目的は達成できない。なぜかと言えば、目的も役割(職務)もきちんと決めていないうえ、必要な職務をきちんとやらないからである。それだけでない。必ず、不要、不足、重複、過剰などの職務(業務)が発生するのである。

当社には人材(財)がいないから仕方ない、と言ってごまかしている会社が多い。人材がいないのなら他から探してくれば良い。またはその職務をアウトソーシング(外注)すれば良い。しかし、重要な職務には社外から人を入れようとはしない。また、日本の多くの会社は、職務、職務分担、権限と責任、指示命令系統などが不明確になっている。

いわゆる集団主義で経営しているので、みんなで決めれば怖くない、みんなで実行すれば責任は誰にもない、となっているのである。また、集団主義とは仲間であるみんなで仲間でない他を排斥することでもある。昔の家制度、村制度と同じである。同じ家や村の人たちは運命共同体であるが、他の家や村の人はよそ者なのである。家が部や課、会社が村と考えれば理解できるだろう。うちの部、うちの会社という言い方をすることでもわかる。日本の企業組織には家や村の制度がそのまま残っているのだ。

よく、日本の組織は日本の城に似ている、欧米の組織はヨーロッパの城に似ている、と言われる。日本の城は大きな石や小さな石が巧みに組み合わされて作られている。一方、ヨーロッパの城は同じ大きさの石が整然と組み合わされて作られている。つまり、日本の組織は人を基にして作られており、欧米の組織は職務を基にして作られているのである。最近の日本の城は、城壁のあちこちに穴があき崩れていたり、支えるべき建物(事業)がなかったりする。早く修復しないと天守閣ごと城が崩れてしまう。いっそのこと、ヨーロッパの城に作り替えたらどうだろうか。

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