原価計算は難しいし面倒である。しかし、原価計算は原価管理はもちろん利益管理、予算管理などの基礎資料となるものである。つまり、儲けるために必要なものである。だから、儲けたいのならやらなければいけない。
原価計算は難しいし、面倒であるし、人材も必要だし、費用もかかる。また、原価計算をやらなくても税務署や銀行から文句を言われることもない。そのため、原価計算をやらない会社が多い。大企業でもやっていない会社がある。たしかに、決算さえしていれば、いくら儲かったのか1年たてばわかる。しかし、原価計算をやらないと毎月いくら儲かっているのか、あるいはいくら損をしているのかがわからない。
また、どの製品がいくら儲かって、どの製品がいくら損しているのかがわからない。どの部門がいくら金を使っているのかもわからない。つまり、製品別、部門別の原価がわからない。そのうえ、どうすれば儲かるようになるのかもわからない。したがって、原価計算をしないのは、まるで人の顔色を1年に1回だけ見て、元気か否かを判断するようなものである。しかも、からだの中を調べないのだから病気になっても直せないし、より健康にすることも出来ない。成り行き任せになる。
いつも、儲からない、儲からないと言っている会社は、たいてい原価計算をしていない会社である。原価計算をしていれば、どの製品が儲かっていないとか、どの部門はどの費用を使いすぎているとかと言うはずである。原価計算をしていない会社は宝の山だ。原価計算するだけで利益が出るようになるからである。
また、予算編成がたいへんだと言っている会社も、たいてい原価計算をしていない。納得のいく予算が立てられないからたいへんになるのである。予算編成に3ヶ月もかかっている会社がある。予算編成するだけで会社の利益は吹っ飛ぶ。なぜなら、予算編成をするための人件費で利益を失っているからだ。原価計算すればこのことがよく分かる。
毎年春になると賃上げ闘争などをやっている会社もたいてい原価計算をしていない。賃金をいくら上げたらいくら稼がなくてはならないかが解らないからである。労働組合が賃金を上げてもらいたかったら、その根拠を示すため原価計算をすればよい。単に、賃金を上げろと言っても上げてはもらえない。
外注加工賃を決めたり、製品の卸し価格を決めたりするにも原価計算が必要である。原価計算をしないで力任せでこれらを決めているような会社は、結局、いつまでたっても強くはなれない。優良会社にも貸し渋りしている銀行と同じで、相手が見抜けず、むしろ相手から見抜かれているのである。
ところで、技術屋のやる原価計算は経理屋にはわからないし、経理屋のやる原価計算は技術屋にはわからないので、結局、全体でどうなっているのかわからない。どの材料がどの製品にどのくらいの量必要なのかがわかるのは技術屋であり、実際に材料がどう使われたかを記録計算するのは経理屋である。
例えば、技術屋が見積りする時には、まず図面を見ながら材料の種類、形状、寸法、数量を算出し(材料取りと言う)、材料の市場価格を材料新聞などで調べて材料費を算出する。次に、生産方法を検討し、加工組立工程を設計する。さらに、加工組立時間を予測または実測して賃率を掛け加工費を出す。最後に、過去の実績資料や将来の予測をして原価を設定する。という具合である。
したがって、設計技術だけでは見積もりはできない。製造技術も必要である。さらに、標準原価を設定するには作業方法や作業時間測定に関する研究、すなわちIE(生産工学)に習熟する必要がある。
一方、経理屋の仕事である実際原価を計算するのはそれほど難しいものではない。材料購入伝票、材料出庫伝票、作業票などを基に記録集計すれば良い。記録集計する方法は日商2級程度の工業簿記の知識があればできる。ところで、実際の原価だけだとやはり結果だけで計画が立てられないので、後追いになってしまい、あまり役に立たない。やはり予定(見積り)もしくは標準原価を決めて、実際原価との差異分析を行い管理すべきである。
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