多くの経営者は景気が悪いことを嘆く。しかし、有能な経営者は景気が悪いことをむしろ喜ぶ。なぜなら、景気が悪いほど経営者の能力が明確になるから。
景気が悪い悪いと嘆いてばかりいる経営者がいる。売上が伸びないのは景気が悪いからだと言う。確かにそのとおりかもしれない。しかし、嘆いてばかりいても景気が良くなるわけではない。それどころか、そういう経営者では景気が良くなってもやはり売上は伸びない。なぜなら、経営努力を怠り、売上が伸びないのを景気が悪いせいにしているからだ。
その証拠に、景気が悪くても売上や利益を伸ばしている会社もある。有能な経営者は景気の良し悪しにはまったく無頓着である。「俺が景気を悪くしたわけではない」と言う。売上が伸びないのは景気が悪いからなのか、それとも、経営の仕方が悪いからなのかを知っているのである。
景気の変動と売上の変動との相関関係をグラフにすることは簡単なようで難しい。売上の変動が景気の変動によるものか、経営の良し悪しによるものかを区別し、定量化しなければならないからである。業界全体または同業他社の売上と比較することによって、相対的には知ることが出来る。絶対的な相関関係を知るには、その因果関係を突き止めなければならない。どんな経営戦略や戦術を採用したのか、その後、市場にどんな変化が起きたのかを常に記録し、分析していれば次第にその因果関係が見えてくる。そして、それらをデータベース化しておけば、今後の経営に役に立つ。
景気の良し悪しは国全体の国民経済の問題であり、企業業績の善し悪しは1企業の個別経済の問題である。国全体の経済は1企業の経済に影響を及ぼし、1企業の経済は国全体の経済に影響を及ぼす。しかし、個々の企業は独立しており、その経営の仕方は同じではない。よって、同じ業種業界でも業績に大きな差が出る。このことがわかっているにもかかわらず、多くの経営者は景気が悪いことを嘆くのである。
有能な経営者は景気が悪いことをむしろ喜ぶ。なぜなら経営の良し悪しが明確になるからである。つまり、経営手腕が明確になるからである。有能であることが誰の目にもはっきりとわかり、存分にその力を発揮できるからである。
ところで、企業とは荒海に漕ぎ出す小船のようなものである。海が荒れれば荒れるほど船頭の力量が問われ、また船頭はその能力を発揮することができる。だから、就職先を探すにも、株式投資をするにも、景気が悪いときのほうが良いのだ。
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