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開発&コンサルティング

第25回 意思決定に情報が必要なら従業員に聞くべきだ

経営者は自分の考えで経営すべきです。もし、意思決定に情報が必要ならまず従業員に聞くべきです。なぜこんな当たり前のことをしないのでしょうか

意思決定する時に、よく、「アメリカでは何々」と何かにつけアメリカを引き合いに出し、自分の決定を正当化しようとする経営者がおります。「アメリカでは何々」と経営者が言うたびに、「ほらまたアメリカ出羽の守がお出ましになられた」と言うコンサルタントがおりました。

日本人が未だにアメリカの真似ばかりし、アメリカにコンプレックスを持っていることを批判しているのです。このコンサルタントの嘆きは私にもよくわかります。いったい、いつになったら日本の経営者は自信を持って自分の考えで経営するようになるのでしょうか。アメリカのやり方ばかり真似するのはいいかげんに止めて欲しいです。うんざりです。

なぜ、経営者は世の中の流行を追い求めるのでしょうか。例えば、新聞に企業統治(コーポレート・ガバナンス)のことが書いてあるからと言って、なぜ、我が社でも企業統治について検討すべきだ、と言うのでしょうか。あなたの会社でも不祥事がよく起きるのですか。それより今やるべきことをやってください。今やるべきことは当然、年度計画に盛り込まれているはずです。計画に無いことが世の中で話題になっているからと言って、慌てて取り上げようとするのを成行経営と言います。世の中の成り行きに任せて経営しているということです。

なぜ、日本の経営者は、社員に対して、「ドラッカーはこう言っている」などと言うのでしょうか。ドラッカーがどう言おうとあなたの会社とは関係ないではありませんか。社員はドラッカーがどう言ったかを聞きたいのではなく、経営者であるあなたがどう言うかを聞きたいのですから。

もしあなたがそう言うのをドラッカーが聞いたとしたら、きっと「俺はいつからこの会社の経営者になったんだ」と言って苦笑するでしょう。それにしても日本の経営者はドラッカーが好きですね。実は、ドラッカーは日本人が好きそうなことを日本人向けに書いているのです。

ドラッカーは元GM専属の新聞記者ですから、GMの経営の仕方を良く知っているのです。それを基に本を書いているのです。しかし、それは欧米の経営者はみんな知っています。なぜなら、当時のGMの状況を新聞記事で読んでいるからです。また、学生は歴史としても学ぶからです。そのため、欧米ではドラッカーの本はほとんど読まれていません。

日本の大学の経営学部でもドラッカーの本を授業で取り上げる大学はほとんどないでしょう。なぜなら、ドラッカーは経営学者としては三流だからです。学者として必要なのは論文をたくさん書くことですが、ドラッカーはほとんど論文を書いていないからです。ドラッカーが書くのは新聞記者として見聞きしたGMの経営の仕方です。もちろん、その中には役に立つこともたくさんあります。なにしろ、GMは当時世界一の企業だったのですから。

ところで、なぜ、経営者は同業他社のことばかり気にするのでしょうか。経営というのは同じ条件の下で競争するスポーツとは違います。条件は各社で異なるのです。条件とは、経営環境ではありません。経営資源のことです。つまり、自社の経営資源を活用して経営しなければならないのです。同業他社に負けないようにするには自社独自の経営をすべきなのです。そのためには同業他社ではなく、従業員やお客様や取引業者をまず気にすべきなのです。

意思決定に必要な情報収集は遠い所から集めるものではありません。アメリカのことより、世の中の流行より、ドラッカーより、同業他社より、まず従業員からです。なぜなら、お客様や取引業者と直接接して働いている従業員が最も正確で重要な情報を持っているからです。

Ⓒ 開発コンサルティング





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