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開発&コンサルティング

第24回 経営とは流行を追いかけることではない

近頃ちまたではやるもの、情報技術・システム化、リスク管理、コーポレート・ガバナンス等々。企業経営とは流行を追いかけることでしょうか。ということは人まねですね。ということは何も経営していないということです。

8月27日付の日経産業新聞に、経営コンサルタント調査という記事が出ていました。これによりますと、経営コンサルタントを利用して解決したい経営課題として、多い順に情報技術・システム化、リスク管理、コーポレート・ガバナンス等と書いてありました。この記事を見て、またか、と思いました。

ちょっと前まではリエンジニアリングとか、リストラクチャリングという言葉がはやりました。その前にはホワイトカラーの生産性向上、顧客満足なんて言葉が、そしてその前には、時短、コーポレート・アイデンティティなんて言葉がはやりました。さらにその前には、減量経営とかスリム化とかという言葉が、そのずっと前には経営合理化という言葉がはやりました。

えっ、順序が違うって。私の記憶も曖昧なもので勘弁してください。いずれにしても、なんでこんな風にどの企業でも同じ時期に同じ経営課題に取り組むのでしょうか。今ごろスリム化なんて言葉を使っている企業は流行遅れなんです。なぜなら、これらは本来の経営課題ではなく、単なる流行語にすぎないからです。

実は経営課題というのは昔からほとんど変わっておりません。例えば情報化・システム化は数十年前からづっと課題となっておりますし、AI、DXなどこれからも情報技術の進展に伴ってづっと課題であり続けるでしょう。リスク管理も最近始まった事ではありません。保険制度は産業革命の頃からありますし、欠陥商品に対する消費者運動も戦後まもなく始まっているのですから。

コーポレート・ガバナンスも監査役とか公認会計士の制度が始まった頃にはすでにあったのです。ところで、昔から存在する経営課題が今でもあるということは、いまだに根本的な解決がなされていないということです。それで何か事が起きると、誰かが火付け役となって、新しい言葉に変えて、はやらせるのです。そして飽きてくると自然消滅し、またその頃に新しい言葉がはやり出すというわけです。同じ課題に対してです。

あなたの会社では、今どんな経営課題に取り組んでいますか。なぜその課題に取り組んでいるのですか。隣の会社で実施しているからですか。それとも新聞やテレビなどで話題になっているからですか。本当はもっと他に重大な課題があるのではないですか。昔流行した経営課題は全て解決したのですか。どの企業にもその企業特有の課題があるはずです。それに取り組むことが経営なのです。

なぜこのような当たり前のことが実施されないのか、不思議です。昔、「隣がコンピューターを買ったから、うちでも買おうと言うのは、隣がピアノを買ったからうちでも買おう」と言うのと同じだ、本当にコンピューターが必要かどうかを考えてから買うべきだ、と良く言われました。この言葉はいつの時代でも言えるかもしれません。人まねではなく、今、我が社で取り組むべき課題は何なのかを良く見極めることが経営の第一歩だと思います。

さて、この日経産業新聞の記事に、「ニーズは強いが利用は3割」と大きく書いてあります。ところが、その理由が書いてありません。コンサルタント側の意見も抽象的で良くわかりません。そこで私がお答えいたします。

経営コンサルタントの仕事は、一言で言えば経営課題の解決の支援をすることです。クライアント企業がある課題に取り組みたいと言えば、その課題解決のための支援をするのが仕事です。しかし、その課題よりもこちらの課題の方が御社にとって重要です、とか、その課題を解決するためには、まずこの課題の解決が必要です、などと言ったら、では手伝ってくれなくても結構です、となります。ここが経営コンサルタントの限界です。したがって頼まれたことをやるだけです。

たとえ、その課題が解決できなくともです。なぜなら、「外部の専門コンサルタントに依頼して解決を図ったができなかった」という事実があればそれでよしとするからです。経営者としての責任を果たしたということです。要するに、経営者が保身のために経営コンサルタントを使うのです。私の経験から言うと、大企業ほどこの傾向が強いです。

大企業は、経営コンサルタントというのは特定の分野の専門家である、と考えています。たしかに、専門分野というのはあります。しかし、どの専門分野でも会社全体の重要な問題を無視することはできませんし、無視すればその専門を生かすこともできません。経営者が特性分野の専門家ではないのと同様、経営コンサルタントも特定分野の専門家ではありません。ところが、経営コンサルタントですと言いますと、専門は何ですか、と必ず聞かれます。しかし、同じ質問を経営者にする人はあまりいません。経営者の専門は会社全体の経営だからです。

特定の分野の課題だけを取り上げて、それを解決しようとしても、いろいろな事が関係してきます。例えば、「業務の情報化・システム化」という課題は情報技術の専門家では解決できません。できるのは、せいぜい、新しい情報技術の導入と活用ぐらいでしょう。情報化・システム化の対象になる業務の効率化や業務改革ができなければ、業務の情報化・システム化はできないのです。

業務の効率化や業務改革のためには、その業務を遂行する人の考え方、価値観を変えなければならないのです。つまり、業務の効率化や業務改革は人間の考え方・価値観の改革なのです。そのうえで、業務の情報化・システム化が必要なのです。なぜなら、業務の情報化・システム化は、単に、単純作業を情報化・システム化することではありませんから。

従って情報技術の専門家を使っても、新しい情報技術の導入・活用にとどまり、本来の業務の効率化や業務改革という課題の解決はできないのです。これは他の経営課題、例えば、リスク管理についても、コーポレート・ガバナンスについても同様です。従って何十年経っても同じような課題が解決されないまま残るのです。

そして仮に、このことを企業が理解していたとしても、経営コンサルタントを使って解決しようとはしません。なぜなら経営者自身の改革が必要だからです。経営者が考え方を変えようとしない限り、業務の効率化や業務改革はできませんし、その結果、業務の情報化・システム化もできません。

以上、「ニーズは強いが利用は3割」の理由について私なりに答えしました。ところで、コンサルティングを通じて多くの企業から学び、それをコンサルタントが自分なりに消化し、コンサルティング技術として仕上げていく。それを企業に提案し、さらに技術を高めていく、これが経営コンサルタントの仕事です。コンサルティング技術というのは元はといえば多くの企業から学んだものです。

企業経営者と経営コンサルタントとは、教えたり、また、教えてもらったりする関係なのです。従って丁々発止、本音で議論し協力しあって課題解決に当たるというのが本来の姿ではないでしょうか。ただし、コンサルタントは提案し助言するのが仕事であり、経営者は意思決定し、リーダーとして実行するのが仕事です。コンサルタントはあくまで黒子ですので、リーダーとなることはできません。

Ⓒ 開発コンサルティング

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