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開発&コンサルティング

第22回 人のやる気を引き出す方法

人のやる気を引き出すには、不平不満を出来るだけ解消する、やりたい仕事をやらせる、少し難しい仕事に挑戦させる、常に励ます、という当たり前のことをやればよいのです。

私はコンサルティングを行う時、まずその企業の従業員にアンケート調査を行います。内容は簡単なもので、「仕事に関して日ごろ感じていることを5項目書いてください」というものです。役職と部門のみ記入してもらい名前は無記名とします。また、記入したものを直接私に手渡してもらうか、もしくは私宛に郵送してもらいます。その企業の人に内容が知られないようにするためです。

アンケートの結果はどの企業でも同じようになり、60%~70%が労働条件に関する不満です。次に、仕事のやり方に関する不満。仕事が自分に合わないという不満。上司や他部門に対する不満。経営の仕方や方針に対する不満などになります。このアンケート調査の結果を整理してみると、業務上の問題点が見えてきます。そこで、アンケート調査の他に資料調査とヒアリングを行って確認と補足を行い、改めて問題点を整理した上で、課題に置き換えてから企業に報告します。

アンケート調査は不平不満を書いてください、というものではないにもかかわらず、ほとんどが不平不満になってしまいます。日ごろ言いたいことがなかなか言えないので、この時とばかり書くのかもしれません。従業員にとっては、外部のコンサルタントによる無記名のアンケートですのですので期待するのかもしれません。しかし、アンケート調査の結果を真に受け、そのまま報告するようなことはしません。潜在化している不満をあおるようなものだからです。

これはコンサルティングの基本ですが、企業が自社でアンケート調査をする場合も注意が必要です。必ず資料調査やヒアリングで事実を確かめた上で、つまり、裏を取ったうえで問題点を整理し、それを課題に置き換えてから報告しなければいけません。さらに重要なことは、必ずそれらの課題は解決に結び付けなければいけないことです。アンケート調査の目的は問題解決にあるからです。問題解決をしないのなら当初からアンケート調査はしない方が良いのです。

さて不平不満の中で最も多い労働条件に関する不満、すなわち給料が安い、労働時間が長い、といった不満は簡単に解決出来るものではないし、それほど緊急を要するものでもありません。会社の業績が良くならないと労働条件も良くならない、ということを従業員も知っているからです。したがって、労働条件が多少悪くてもやる気が無くなるわけではありません。

だがもし、これを早急に解決したいのなら、同業他社より少しだけ良くすれば足ります。そして、そのことを従業員に知ってもらうことです。これでさし当たって、労働条件に関する不満はなくなります。同業他社より少しでも良ければそれ以上望もうとはしないからです。また逆に、同業他社より良い労働条件にしたからと言って、それだけやる気が出るわけではないからです。同業他社よりも給料はちょっぴり高く、労働時間は少し短くします。その代り従業員数も少し減らすのです。そして、やる気のある人を大事するのです。これを実現する方法は以下のとおりです。

労働条件に関する不満よりも重要なのは、仕事そのものに関する不満です。つまり、仕事が自分に合わないとか、仕事のやり方に関する不満、上司や他部門に関する不満、経営の仕方や方針に関する不満などです。これらはどうしても解決する必要があります。やる気にブレーキをかけているのはこういった不満だからです。これらは根が深いものもあるので慎重に調査した上で解決策を考えなければいけません。

しかし、簡単に解決できる場合も多いのです。その1つは、単なるコニュミケーション不足の場合です。言いたいことが言える、いわゆる飲ミニュケーションなどで解決します。この時には、当然、上司は部下の言い分をよく聞くことが大切です。もう1つは人事考課や目標管理、自己申告制度などが生かされていない場合です。単に用紙に書かせるだけ、あるいはヒアリングするだけで全く結果をフィードバックしない会社が非常に多いです。アンケート調査と同じで、フィードバックしなければかえって逆効果となってしまいます。

つまり、上司あるいは会社がこれらにどう対処しているかを知らせないことが従業員にとっては大きな不満となるのです。フィードバックしない理由は、(1)なにも対処していないから、(2)対処してはいるが、対処方法またはその結果に確信を持てないから、などです。(1)の場合は問題外ですが、(2)の場合は、実は確信を持っている会社などありません。したがって、ありのままをフィードバックすればよいのです。

なぜなら、例えば人事考課は神様でなければ人を正しく評価することはできません。もう一度言いますが、重要なのは結果を必ずフィードバックすることです。そして納得してもらえるように良く話し合うことです。従業員にとって最も関心があるからです。

さて、やる気を無くす不平不満をたとえすべて取り除いたとしても、やる気が出るわけではありません。例えば、車を運転しているときに、ブレーキを踏んでいる足を放しても加速できないのと同じです。アクセルを踏まなければなりません。それには、やる気を出す機会を作ってやる必要があるのです。仕事に対するやる気は仕事そのものから生まれます。仕事以外のことでやる気を出させようとしてもダメです。例えば、昇給したりボーナスをはずんでも一時的であまり効果はありません。物欲を満たしても仕事に対する動機づけとはならないのです。数か月すると元の状態に戻ってしまいます。

仕事をする上で最も強い欲求は自己実現を図ることです。ボランティア活動を考えてみればお判りでしょう。人は給料なしでも一生懸命に働くのです。ですから、まず、本人がやりたいという仕事をやらせるのです。会社の都合でそれは出来ないなどと言うのは、従業員と会社とどっちが大事かという問題に帰着します。今時、会社の方が大事だなどという従業員はいませんから、いつまでたっても自分のやりたい仕事ができなければ会社を辞めるでしょう。

一方で、どんな仕事でもやります、なんて言う人がいますが、そんな人は仕事のできない人です。一見やる気がありそうですが仕事ができなければ何もなりません。「こういう仕事がやりたい」と言う人を会社は大事にし、その仕事をやらせるべきです。このようなやる気のある人をダメにしないようにしてください。もう1つ重要なのは、少し難しい仕事をやらせるのです。有能な人は少し難しい仕事に取り組むとやる気を出します。そして常に励ますのです。こうすれば少数精鋭で業績も向上し、その結果、より良い労働条件にすることができ、そして有能な人が集まり、と良い循環になるのです。

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