原価は英語ではコスト(Cost)と言います。つまり、原価とコストとは同じです。したがって、どちらを使ってもかまいません。本書でも原価と書いたり、コストと書いたりします。
「原価とコストとは違う」などと言う学者(大学教授)や実務家がいますから、惑わされないようにしてください。筆者は昔、惑わされてしまいました。
「原価とコストとは違う」などと言う人たちは、実は、理論と実務とは違うと言っているだけなのです。なぜなら、簿記・会計の教科書では原価が多く使われているのですが、実務ではコストの方が言いやすいのでコストが多く使われているからです。また、理論と実務では原価(コスト)を計算する目的や計算の仕方が違うのです。しかし、言葉の意味は同じです。日本語と英語の違いだけです。
では、原価(コスト)とは何かですが、「経営目的に使った費用」をコストと言います。つまり、メーカーでは製品の製造や販売のために使った費用を言い、卸・小売業では商品の仕入や販売のために使った費用を言います。
では、費用とは何かですが、簡単に言えば使った(消費した)金額です。正確には、「一定期間における企業活動で発生する経済価値の減少を貨幣価値で表したもの」を言います。したがって、費用は一定期間において収益(売上)と対比する場合に用いられます。つまり、売上-費用=利益(又は損失)、として一定期間の利益や損失を計算するときに用います。
販売費や一般管理費もコストになります。販売費や一般管理費は一定期間に発生する費用ですが、これらは経営目的に使われるのでコストとなるのです。つまり、コストには製品の製造コストや商品の仕入コストと、販売費や一般管理費のように一定期間に発生するコストとがあるのです。なお、一定期間に発生するコストを期間原価と言います。
ここで、費用とコストとの違いを確認しておきます。メーカーでは材料を購入するために使った費用であっても、その材料を製品の製造のために使わなければコストにはなりません。また、製造途中の仕掛品に使った費用もコストにはなりません。これらは在庫金額(棚卸資産)となります。
卸・小売業においても、商品の仕入費用のうち販売しなかった商品、あるいは売れ残った商品の仕入費用はコストとはなりません。在庫金額(棚卸資産)になります。したがって、製造原価、仕入原価、売上原価などには棚卸資産は含まれていません。
ところで、費用であってコストでないものは、経営目的のために使わなかった費用ですので、棚卸資産の他に、遊休資産、投資目的で購入した株、寄付金、支払利息、火災などの損失金、損害賠償金、法人税・所得税などの税金、配当金などいろいろあります。