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開発&コンサルティング

0-3.改善・開発・改革技術VVEを活用してもらうこと

本書のもう1つのねらいは、これまで30年以上の間、一部上場企業をはじめ、多くの企業でコンサルティングを行って来ましたが、その間に開発した改善・開発・改革技術、すなわちコンサルティング技術を活用してもらうことです。

この技術をVVE(バリッド・バリュー・エンジニアリング)と名づけました。なぜなら、VEの短所を排除し、長所を発展させて、より効果的(Valid)なものにしたからです。本書では「第4章 VVEによるコスト削減・原価低減の考え方と技術」でVVEについて説明し、「第5章 VVEによる企画・開発・設計の見直し」でVVEの適用を説明しています。

また、これに伴い、必要となる機能別原価計算(機能別コスト分析)を紹介しています。VVEに限らず、本来、VEでは製品の企画・開発・設計の段階でコスト削減を行うには、製品・部品の機能別原価計算(機能別コスト分析)を行います。つまり、機能別コスト分析はVEの手法ですが、VEが分かりにくいために多くの企業ではうまくできません。そこで、VVEの活用をお勧めするわけです。

また、業務効率化を行うにも業務の機能別原価計算が必要です。VVEによって、製造間接費を含めた製品別原価が正確に計算できるだけでなく、販売費・一般管理費など社内で発生するすべての作業や業務の機能別原価を明確にすることができます。また、生産者志向から顧客志向に転換できるので、投入と得られる効果が明確になります。よって、製品のコスト削減や業務効率化が容易にできるのです。

なお、業務効率化については、『IT投資ゼロ円で行う業務効率化・業務改革』に詳しく書きましたので、ご参照ください。

最近では、多くの先進企業で、製造間接費や販売費・一般管理費に対する原価計算に、活動基準原価計算(ABC)を適用するようになりました。しかし、ABCには2つの大きな欠点があります。1つは文字どおり活動基準ですから、生産者志向の原価計算であるということです。つまり、従来の個別原価計算や総合原価計算と同じように、生産者の立場で計算した原価計算なのです。

もう1つの欠点は、ABCは実際原価の計算であって、あるべき原価(目標原価)の計算ではないことです。つまり、従来の標準原価に相当する原価計算ではないことです。つまり、ABCにはあるべき原価の基になる、「本来業務はどうあるべきか」の考え方がないのです。したがって、業務の効率化も業務改革もできないのです。

これに対して機能別原価計算は、原価対象の目的と機能を追求するVEの考え方で行う原価計算です。つまり、目的別・機能別原価計算ですから、顧客の立場で計算した原価計算なのです。生産者の立場で計算した、材料別、部品別の原価や活動別(業務別、作業別)の原価を計算してもあまり意味はありません。

本来、原価計算は生産者の立場ではなく、顧客やユーザーの立場で計算すべきなのです。なぜなら、顧客は製品やサービスそのものを購入するのではなく、製品やサービスが備えている機能(役割、働き)を購入するからです。機能が発揮されることによって、顧客にとっての効用(便益、メリット)が生まれるのです。

例えば、顧客が扇風機を購入しようとするとき、顧客は扇風機が欲しいわけではありません。涼しい風が欲しいのです。扇風機の目的は「人を涼しくする」です。本来、製品の目的は顧客にとっての効用になります。顧客は効用を得たいために機能を購入するのです。

扇風機の機能は、「風を発生する」「風量・風速を調節する」「風向を変える」などです。顧客は涼しい風が欲しいから、これらの機能を購入するのです。したがって、目的と機能を追求することによって、顧客やユーザーの立場で製品に何が必要で、何が必要でない(ムダ)か、あるいは何が不足しているかなどが分かるのです。

つまり、目的別・機能別の原価を計算することによって、コスト削減ができたり、改良や開発が出来たりするのです。また、どの機能にどの程度のコストをかけるべきかが分かるのです。「風を発生する」コストはいくらか、「風量・風速を調節する」コストはいくらか、「風向を変える」コストはいくらか、などを計算するのです。

機能別原価計算は、社内で発生するすべての実際原価を、顧客やユーザーの立場で計算すると共に、あるべき原価(目標原価)を追求する原価計算でもあります。なぜなら、目的と機能を追求する原価計算だからです。しかも、実際原価もあるべき原価も、全く同じ考え方・方法で計算できるので、計算が分かりやすく容易です。

このため、顧客やユーザーの立場で、製品のコスト削減や業務効率化だけでなく、製品開発や業務改革などが容易にできるのです。また、これらによって、経営戦略やマーケティング戦略、あるいは経営計画などと各業務との整合性も分かるので、経営戦略や経営計画を実施した場合の効果測定もできるわけです。

具体的には、『IT投資ゼロ円で行う業務効率化・業務改革』に書きましたのでご参照ください。

なお、商品開発・製品開発のページや業務効率化・業務改革のページも合わせてご参照ください。

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