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開発&コンサルティング

3-9 価格設定戦略(1)

価格を設定するためには、基本的に、コスト<価格<商品価値となるようにしなければなりません。当然ですが、商品が売れて、かつ企業が儲かるようにするためです。特売のように、たとえ、この式が成り立たないような低価格を設定することがあったとしても、それは販売促進のための一時的あるいは部分的な価格設定にすぎません。

また、エブリデイ・ロープライス(常時低価格)戦略を採用している企業であっても、いわゆる薄利多売を意図しているのであって、常に、この式が成り立つように価格を設定しているのです。

この式が成り立つように価格設定するためには、コストとの関係から価格を設定する方法と、商品価値との関係から価格を設定する方法とがあります。また、この式とは関係なく競争関係から価格を設定する方法もありますが、結局はこの式が成り立つようにしないと商品は売れませんし、企業は儲かりませんから存続できません。そこで、これらについて順に説明したいと思います。

1.コストとの関係から価格を設定する方法

(1)コストプラス法

一定の利益額をコストに加えるか、またはマージン(利益率)をコストに掛けて価格を設定する方法です。つまり、単純に、価格=コスト+利益額、とする方法、または、価格=コスト×(1+利益率)、とする方法です。あるいは、利益率を重視する場合、価格=コスト÷(1-利益率)、で計算する方法もあります。このときのコストは見込み販売数量を考慮して、コスト=変動費+(固定費÷見込み販売数量)、で計算します。

(2)マークアップ法

流通業では仕入価格に値入額(マークアップ)をプラスして価格を設定する方法をよく用います。価格=仕入価格+値入額、です。この値入額は店舗運営費、売れ残り損失、営業利益などをカバーできるような金額にしなければいけません。この場合でも、価格=仕入価格×(1+値入率)、または、価格=仕入価格÷(1-値入率)、で計算する方法もあります。

(3)損益分岐点活用法

損益分岐点販売数量を活用して価格を設定する方法です。コストプラス法では見込み販売数量を用いるので販売数量の見込みによって価格が変わってしまいます。また、マークアップ法でも売れ残りの見込みによって価格が変わります。そこで、損益分岐点販売数量を活用することによって利益を確保できるように価格設定をする方法がこの方法です。

損益分岐点販売数量=固定費÷(価格-変動費)、ですので、目標利益を達成するためには、

目標利益達成販売数量=(目標利益額+固定費)÷(価格-変動費)、で計算すれば良いことになります。

この方法では、価格と目標利益とを決めればどのくらいの販売数量が必要かが分かりますので、何度かトライ&エラーで計算すれば最適な価格を決めることができます。したがって、販売途中で、必要な販売数量が確保できないようであれば計算し直して価格をいくらに変更すればよいかが分かります。ただし、このためには固定費と変動費とを予めきちんと計算しておく必要があります。

2.商品価値との関係から価格を設定する方法

(1)知覚価値に基づく価格設定法

顧客が商品の価値をどのくらいだと知覚する(認識する)かに基づいて価格を設定する方法です。したがって、企業は顧客がその商品の価値をどのくらいだと知覚するかを予め市場調査などで調べておき、それに合わせて価格を決めます。このためには企業は商品コンセプトを明確にし、商品価値を顧客に訴求しておく必要があります。企業が認識する商品価値と顧客が認識する商品価値とが食い違ってしまえば、設定した価格では売れないことになります。

(2)需要差別に基づく価格設定法

同じ商品やサービスを顧客によって、あるいは時と場合によって異なる価格に設定する方法です。次のような差別があります。

  1. 学生割引、レディース割引などの顧客差別
  2. 山の上や観光地などで通常より高く設定する場所差別
  3. シーズンオフなどで通常より安く設定する時期差別

3.競争関係から価格を設定する方法

(1)実勢価格

競合他社の価格に基づいて自社の価格を決める方法です。その1つは競合他社と同一価格にすることです。その理由は業界各社が競合他社と同一価格にすれば、業界全体で同一価格になり業界の調和を乱さずに済むからです。また、業界全体で同一価格なら妥当な利益が得られるからです。

例えば、自動販売機の缶コーヒーは各社同一価格で昔は100円でしたが現在は120円です。これを各社が相談して行えば談合となり不正競争防止法違反となります。しかし、相談しないで各社が自主的に行えば談合したことにはなりません。

もう1つは、これとは逆に競合他社とは常に異なる価格を設定する方法です。例えば、他社より◯円安くするとか、他社より◯円高くするとかです。これは基本的に他社との力関係によって決まります。通常は、最初に決めたプライス・リーダーの価格に従ってプライス・フォロワー(価格追随企業)が決めます。例えば、他社より常に1円安くするという店があります。

(2)入札価格

通常、競合する複数の企業が入札によって価格を決める方法です。生産財においてよく用いられる方法です。入札価格を高く設定し落札できれば利益は大きくなります。しかし、入札価格を高くすれば落札の確率は低くなります。逆に、入札価格を安くすれば落札の確率は高くなりますが、利益は低くなります。そこで、通常、期待利益の考え方が用いられます。

例えば、入札価格が100万円の時に落札できる確率を50%とすると、100×50%で期待利益は50万円となります。また、入札価格を80万円に下げると落札の確率が90%に上がるとすると、期待利益は72万円となります。そこで、さらに下げて入札価格を70万円にした場合に、落札の確率が95%になるとすると、期待利益は66万5千円にしかなりません。よって、この場合は70万円より80万円にした方が良いことになります。

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