チャネルとは商品流通の経路のことで、ルートとも言います。チャネル戦略はチャネルを決めることとチャネルをどのように管理するかを決めることです。チャネルを決めることは非常に重要で、マーケティング戦略の中で最も重要な戦略と言ってもよいと思います。
なぜなら、チャネルを決めるということは、どのような経路で商品を流通させるかを決めることですから、言い換えればどのような企業と取引するかを決めることになります。その際に、取引先と企業秘密に係る情報を交換しなければならない場合もあるので、一旦決めたチャネルは簡単に変更することができません。
したがって、長期間に渡って取引することになるのでチャネルを決めることは重要なのです。チャネル戦略は消費財メーカーにとって最も重要なのでここでは消費財メーカーを想定して解説いたします。
まず、チャネルを決めるための基本的考え方に、開放的、選択的、排他的という3つの選択肢があります。これは、M.T.コープランドおよびその後の研究者によって類型化されたものです。
開放的チャネルは食料品や日用雑貨品などのように購買頻度が高い最寄品の流通に多く見られるもので、できるだけ多くの流通業者を通じて商品を流通させようとするものです。この反対に、排他的チャネルは専門品や高級ブランド品などのようにブランド価値を維持するために流通業者を限定するものです。選択的チャネルはこれらの中間的な特徴を持ったものです。
以上の3つの伝統的な選択肢の他に、近年ではチャネル間の競争が激しくなったため、より強固で長期的な取引関係を築く垂直的マーケティングシステム(VMS)が重要となっています。つまり、メーカー、卸売業者、小売業者が一体となったチャネルを構築し、他のチャネルとの競争に勝とうということです。この垂直的マーケティングシステムには結合度の高い順に、企業システム、契約システム、管理システムという3つの類型があります。
企業システムは特定の企業の資本によって流通経路の幾つかの企業を強固に結びつけるもので、メーカー資本によるものや小売業者資本によるものなどがあります。例えば、メーカーが販社を設置したり、直売の小売部門を設置する場合や、小売業者が卸売部門を設置したり、PB商品の開発製造部門を設置する場合などがあります。
契約システムは資本の異なる企業間の契約によってチャネルを構築するものです。例えば、卸主宰によるボランタリーチェーンや小売主宰によるボランタリーチェーン(コーペラティブチェーン)、あるいはフランチャイズチェーンなどです。
管理システムは資本の異なる企業間でゆるやかに結合するもので、チャネルリーダーのもとで連携するものです。
さて、どのようなチャネルにするかの意思決定はチャネル間の競争に係ることなので重要ですが、次のような課題があります。まず、競合他社のチャネルとの競争関係を分析をした上で、チャネルをしっかりとコントロールしなければならないか、それとも市場の自由な取引に任せた方が良いかです。
つまり、卸売段階については、自前の販社を持つか卸売業者を用いるかですが、自前の販社を持つ場合の投資負担と卸売業者を用いる場合の取引コストとどちらが大きいかです。ここで、取引コストとは取引先を選定するための情報収集や契約締結に関するコスト、あるいは危険負担に係るコストなどを言います。
また、小売段階については系列小売店にするか一般小売店を利用するか、あるいは量販店を利用するかですが、現在では多くのメーカーが量販店を利用するようになっております。現在では小売店を系列化するメーカーはあまりなく、また、一般小売店を利用する場合でも量販店が存在しない地域などに限られています。
その理由は消費者の利便性による売上とコストの関係にあります。つまり、消費者にとって小売店で購入するよりも量販店で購入した方が、1つの店でいろいろなメーカーの商品を比較し、より自分に適した機能・品質の商品をより安く購入できるので、利便性が良いのです。
したがって、量販店の方が売上が大きく、小売店のほうが売上が少なくなるのです。また、コスト面では、量販店では1箇所で大量に扱うためコストが安くなるのです。したがって、小売店よりも量販店を利用したほうが良いということになります。
最適なチャネルが決定・構築されたとしても、それだけでは不十分です。なぜなら、チャネル・リーダーによって適切に管理する必要があり、適切に管理して始めてその効果が生まれるからです。メーカー主導型のチャネルではメーカーがチャネルリーダーとなって管理し、大規模小売店主導型のチャネルでは小売店がチャネルリーダーとなって管理しますが、その管理の仕方は異なります。
メーカー主導型のチャネルでは昔は建値制とリベートにより管理していました。すなわち、メーカーが卸と小売の利益(マージン)が確保できるように価格を決め、競争が激化してコストアップになるとリベートを支給してマージンが確保できるようにしていたのです。
したがって、卸も小売もメーカの言うとおりにしていれば利益が確保できて、事業を継続できたのです。しかし、大手のスーパーや量販店、ディスカウントストアなど大量に販売する店舗が消費者の利便制を高めると同時により大きな利益を確保しようとして、薄利多売をするようになったために、この建値制とリベート制が機能しなくなったのです。
そこで、これに対抗するために、メーカーではオープン価格制を採用するようにしました。これによりメーカー希望小売価格というものがなくなったために、小売店にとっては、「メーカー希望小売価格から〇〇割引」の表示ができなくなり、割引して安くしていることを消費者に訴えることができなくなりました。
よって、消費者にとっても価格が安いのか高いのかが分からないという問題があります。小売店が自由に価格を決めればよいわけですから、自由競争となるのですが、メーカーにとってはあまりにも低価格で販売されたのでは、商品のブランド価値が低くなってしまうという問題があります。これにより、メーカーと小売業者との力関係が複雑になり、チャネルの管理が難しくなっています。
ちなみに、小売店では自ら設定した価格に対して〇〇割引という表示をするようになりました。このため、当初から値札に高めの価格を記入しそれを消していかにも割引したように見せかける、「二重価格」という違法行為をする小売業者もいて問題になっています。
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