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開発&コンサルティング

3-13 チャネル戦略(2)

前回、メーカーと小売業との力関係に触れましたが、今回はこの力関係(パワー)と対立(コンフリクト)、およびこの対立を管理する方法などについて説明します。

メーカーの力には基本的に商品そのものが備える力、すなわち商品力とリベート(割戻し)やアロウワンス(機能割引:メーカーが要求した機能を小売業が果たした場合に支払われる)、特定地域の独占的販売権の付与などの報酬(アメ)と出荷量削減や出荷停止などの制裁(ムチ)があります。

一方、小売業の力には豊富なPOS情報とそれを分析した独自の売れ筋・死に筋情報があります。これら以外にも、メーカーはいろいろな商品情報、技術情報などを保持しており、小売業は顧客情報などを保持しています。

これらの力によってお互いに相手を支配しようとするわけですが、自社が保持していない情報は相手に依存せざるを得ない事情もあるので、結局、この力関係はお互いの力と依存度とによって決まることになります。つまり、支配しようとする力と依存せざるをえない度合いとがプラス・マイナスして決まるわけです。

例えば、ある商品の仕入依存度が特定のメーカーに対して高い小売店はそのメーカーに対して弱い立場になるのでメーカーの力が強くなりますし、一方で小売店の販売力に対する依存度が高いメーカーはその小売店に対して弱い立場になるので小売店の力が強くなります。

同様に、メーカーの持つ商品情報、技術情報やリベートなどに依存度が高い小売店はメーカーに対して弱い立場になるのでメーカの方が強くなりますし、一方で小売店のPOS情報や顧客情報に依存度が高いメーカーは小売店に対して弱い立場になるので小売店の方が強くなります。

以上の力関係は一度決まればそれで安定するわけではありません。外部環境や内部資源など状況が変化すれば力関係も変化します。そこで、管理が必要となります。では、これらの力関係をどのように管理するのかというと、報酬と制裁(罰則)によります。つまり、アメとムチです。こちらが期待するような行動を相手がとればアメを与え、反するような行動をとればムチを与えるというわけです。

したがって、相互に対立(コンフリクト)が生まれます。対立は力関係が変化する場合だけでなく、そもそも目標が異なっていたり、役割分担が納得できなかったり、現状の認識に差があったりしたときにも明確な形となって現れます。例えば、価格維持が目標のメーカーと低価格販売が目標の小売店では対立が当初から明確です。

こうした対立を避けるために、製販同盟や製販統合などの垂直統合、あるいはチャネル全体を管理するSCM(サプライチェーン・マネジメント)が行われているわけです。こうしたことは当初は力の強い企業がチャネルリーダーとなって、資本や契約により他の企業を管理下におくために採られた方法です。しかし、近年では他のサプライチェーンとの競争が激しくなったことから、メーカーと小売店とが協力関係を築いた方が相互にメリットが生まれるため、見直されるようになりました。

そこで、対立を避け、協力関係を構築するために、経営者による交渉、担当者による交渉、人事交流、第3者による裁定などが行われています。例えば、経営者が互いに話し合い、期限を定めて取引関係について契約を取り交わすとか、担当者同士が話し合って取引の都度発生する取引条件を決めるとかです。

実際に担当者同士で良く行われていることは、「今回はこちらが目をつぶるから次回はそちらが目をつぶってくれ」といったことです。また、人事交流では、メーカーと卸と小売との人事交流を出向という形で行ったり、仕事の分担を変えるという形で行ったりしています。仕事の分担を変えるというのは、例えば、これまで小売店がメーカーや卸売店に商品を取りに行っていたのを、今後しばらくはメーカーや卸売業者が商品を小売店に届けるといったことです。

また、現在では、従来の垂直統合やSCM(サプライチェーン・マネジメント)などをチャネルリーダーが管理するチャネル管理ではなく、メーカーと流通業者との共同による新たなチャネル管理の方法が生まれています。

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