これからマーケティング戦略について順次解説するに当たって、まず、マーケティングとは何かについて簡単に説明しておきます。アメリカ・マーケティング協会(AMA:American Marketing Assosiation)の定義を要約すると、「顧客価値を創造し、その価値を顧客に届けること」と「顧客関係を管理すること」です。
また、日本のマーケティング協会の定義を要約すると、「マーケティングとは市場を創造すること」です。また、マーケティングの大御所、P.コトラーによれば、「マーケティングとは顧客のニーズと欲求を満たすために、交換過程を通じてなされる人間の活動」です。
これらの定義からマーケティングの目的は、「顧客価値を創造し、その価値を顧客に届けること」であり、「市場を創造すること」であり、「顧客のニーズと欲求を満たすこと」です。
さて、「顧客価値を創造し、顧客に届ける」ため、「市場を創造する」ため、あるいは「顧客のニーズと欲求を満たす」ためには、まず、市場について分析、検討しなければなりません。そこで、通常は市場セグメンテーション(細分化)を行うのです。
ところが、マーケティングの教科書に書かれている市場セグメンテーションは、市場セグメンテーションではなく、顧客セグメンテーションになっているのです。市場は顧客だけで成り立っているわけではないにもかかわらず、市場=顧客となっているのです。この理由は、マーケティングの大御所であるP.コトラーが、「市場とは顧客の集合である」と定義しているからでしょう。しかし、これでは市場について分析、検討することはできません。
経済学では市場とは需要と供給の場を言いますから、需要者である顧客と供給者である企業との両方をセグメントして双方の関係を分析しなければ市場のことは分かりません。そこで、ここではそのようにしたいと思います。
さて、市場について分析する場合に、顧客の立場で考えると、供給側は企業の代わりに商品にしたほうが良いと思います。なぜなら、顧客が求めるのは商品であり、企業ではないからです。また、顧客(需要側)と企業(供給側)とを結ぶものは商品だからです。したがって、市場を分析するためには、顧客と商品との両方をセグメントしてそれらの関係を分析することにします。
さらに、顧客と商品を分析する際に、顧客と商品とを結ぶものは何かを考えると、それは顧客の欲求やニーズです。なぜなら、商品は顧客の欲求やニーズを満たすものだからです。したがって、市場を分析、検討する際に、顧客、顧客の欲求やニーズ、商品の3つの関係を分析すれば市場が良くわかるわけです。
そこで、筆者はこの3つをセグメントして3次元のマトリックスにして市場分析を行っています。このようにすると、市場についていろいろのことが分かるので、マーケティング戦略を立案するのに都合がよいのです。ちなみに、商品開発を行う際には特にこの3次元マトリックスが重要です。
顧客の欲求やニーズは見方を変えれば顧客要求機能(顧客が要求する商品の役割)であるし、この商品の機能(役割)を別の言い方をすれば商品の用途になるので、顧客の欲求やニーズ=顧客要求機能=商品用途と捉えることができます。
このように捉えて市場をセグメントして分析している人は筆者だけだと思いますので、筆者のクライアント以外おそらくこのような市場セグメンテーションは行っていないと思います。教科書に書かれているような顧客セグメンテーションだけでは分からなかったことがいろいろと見えてきて、新たなマーケティング戦略が立案できますので、是非とも実行してみてください。
次の図は市場セグメンテーションを3次元マトリックスで描いたイメージ図です。筆者はこれを市場マトリックスと読んでいます。これはあくまでイメージ図ですから、実際のものとは異なります。
顧客の欲求やニーズ(顧客要求機能、商品用途)と商品とをセグメントするにはセグメントの視点(切り口)がいろいろあり、通常、数百から数千ありますから、実際に描いてみれば、非常に大きなマトリックスになるわけです。しかし、昔と違って現在はコンピュータで簡単にマトリックスを描くことができるし、いろいろな視点(切り口)で切り抜くことができますから、いろいろな分析ができます。
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