次ページ  目次

開発&コンサルティング

1-7 商店街の取組み(2)

今回は、商店街の取組み事例と市街地全体の取組み事例について中小企業白書を基に説明してみたいと思います。

1.商店街における集客力向上のための取組

商店街における集客力向上を目指す取組は、街路樹、カラー舗装、舗道分離等の街路施設の整備や駐車場・駐輪場整備といったハード面のインフラ整備が多いですが、ここではより直接的に集客力の向上につながる事例を紹介します。高齢者の多様なニーズにこたえ、暮らしやすい社会的基盤を創出するとともに、商店街に足を運んでもらい、活性化を図ろうとする動きが注目されています。

(1)高齢者生活支援サービス券を発行している事例

A商店街振興組合(京都府)では高齢者に優しい商店街のイメージを演出することを考え、高齢者生活支援サービス券を発行し、商店街の各店に配布しています。相談窓口を商店街内に設け、各店よりサービス券を受け取った高齢者の相談への対応や各種高齢者向け関連施設の紹介等を行っています。そして、施設まで足を運んでくれた住民がその足で商店街にも立ち寄ってもらうことを期待しています。

(2)品揃えの豊富な高齢者向け商品専門店を設立した事例

B商店街(福岡県)では、空き店舗を利用して高齢者にターゲットを絞った身近な日用品や健康用品を品揃えした専門店「おたっしゃ倶楽部」を運営しています。同商店街では、「商店街が高齢者の支持を得るためには、若者の流行を追いかけるような背伸びをやめて、高齢者が日常生活で必要な商品や、商店街を利用したくなるようなサービスをワンストップで提供することが必要」と考えました。しかし、各個店では困難です。

そこで、高齢者の日常生活に必要な消耗品や介護用品・介護機器、高齢者に配慮した衣料品、たとえば、マジックテープを使って簡単に着脱できる靴やカラフルなステッキ、軽い拡大鏡など高齢者に人気のある商品を一箇所で買うことができるようにしました。このため、「おたっしゃ倶楽部」に対する評価は上々で、「ここに来ると何でも揃う」「ようやく自分たちの店ができた」と喜ぶ顧客が多いということです。さらに、同商店は高齢者の交流の場としての役割も果たしています。

(3)商店街独自のオリジナルブランドを開発し、ホームページでPRしている事例

C商店街(東京都)の中には、対面販売の店舗が多く残っており、「あの商店のあの商品なら安心」という顧客を多く持っています。このため、同商店街では、「安心」という消費者の評判を一歩進めて、なるべく添加物の少ないような健康志向の商品をいくつか作り、商店街オリジナルブランドにしました。商品の開発コンセプトは「健康志向」という取り決めがあるだけで、後は各商店主が独自の工夫をしながら作っています。

商品は主に主婦の意見を反映させ、現代の消費者に向くような味付けにしており、評判は上々です。このような地域の声を反映させたオリジナルブランドを宣伝するために、ホームページを立ち上げています。商品はホームページでも販売していますが、ほとんどの消費者はホームページを見て商店にまで足を運んでいることから、オリジナルブランドとホームページとが宣伝となり、来店者数の増加につながっています。

(4)商店街に立ち寄らない層の取り込みを目指す事例

D商店街(東京都)では、商店街に立ち寄らない消費者の意見をグループインタビューという手法を用いて積極的に取り上げ、個店の意識改革を促すとともに、このような消費者の取り込みを期待しています。同商店街はこれまでも駐車場設置、ポイントカード事業、ショッピングマップ作成などを行ってきましたが、今後の商店街の方向性を決定するために、コンサルティング会社を利用して消費者調査を行いました。商店街に立ち寄らない消費者に気軽に答えてもらうために、匿名形式のグループインタビューにしたこと、参加者への謝礼を用意したこと等が功を奏し、意見の集約が可能となりました。

この結果、商店街に立ち寄らない層からは、「常連客と差別されている感じがする」「入り口が狭くて入りづらい雰囲気」というイメージを持たれていることがわかりました。つまり、接客態度や店の雰囲気に嫌気がさしてしまい、商店街に出向かなくなってしまったことがわかったのです。接客態度や店の雰囲気は個店の経営者の意識改革や店舗の構成の変更によっても大幅な改善が期待できるので、同商店街では経営指導や勉強会を通じて新規顧客獲得に向け親しみやすい商店街づくりを目指しています。

2.市街地全体としての集客力向上のための取組

商店街の問題として、「商圏人口の減少」があります。この問題は個々の商店街では解決が難しいのです。そこで、このような問題に対しては、商店街という商業集積のレベルにとどまらず、市街地全体としての集客力向上の取組が望まれます。その際には、消費者の「遊びごころ」や「日々の楽しみ」につながるよう、市街地全体の魅力をいかに向上させていくかという視点が重要です。

(1)第3セクターが先導、既存商店街が追随し、市街地の集客力向上という共通の目標に取り組む事例

滋賀県A市では、第3セクターのB社が先導し、既存商店街が追随し、互いに切磋琢磨しつつ、地元開催の博覧会を協力して成功に導くなど、市街地のトータルな集客力向上に取り組んでいます。

B社設立当時のA市街地は、郊外型大型店の進出等によりかなり疲弊していました。そのような折、明治時代から残るシンボル的建物の保存問題が起こりました。その建物の維持は商店街にとって使命とも言えるほど重要でしたがそのような余力は商店街にはありませんでした。そこで、その建物の保存とA市の街づくりの拠点としての活用を目的にB社が設立されたのです。

B社の設立当初からリーダーシップを発揮したのが商店街とは関係のない倉庫業を営むC氏でした。C氏は以前から「街の姿勢」に不満を持っていたために、商店街の事業には参加せず、独自の事業および経営を行いました。B社はガラスショップを手始めに、ガラス工房やギャラリー、レストランなどの事業を行いました。B社は若い女性客を意識し従業員も若い女性を積極的に採用し、海外に研修させるなど社員研修に力をいれ、伝統的な町並みを生かした店舗作りを行いました。

B社は第3セクターでありながら、民間の出資が5割を超え行政の信用力とC氏の経営能力とによって事業が順調に拡大したため、商店街の経営者の見る目が変わっていきました。A市の伝統的な木造建築を活かし、そこにガラスをコンセプトにした新しさを取り入れたことで、郊外型の大型店にはマネのできない魅力を創出したB社に次第に共感を覚えるようになっていったのです。B社に出資する経営者も現れました。また、観光客が増えて街に活気がよみがえるにつれ、商店街の各店舗もB社に負けじと積極的に経営するようになりました。

現在は、商店街とB社とが協力して地元開催の博覧会を催し成功に導くなど、時には協力し、時にはライバルとして互いに切磋琢磨し、市街地全体の集客力向上に取り組んでいます。

(2)市民が集い学ぶための施設を駅前に設置し街の集客力を高めている事例

D市(北海道)では、中心市街地の衰退により、明治時代からの歴史的伝統文化も消滅させてしまうという危機感をいだき、商工会議所や商店街新興組合と共に駅前広場の整備事業や活性化に向けた事業を推進しました。JR駅前に地域コミュニティの中核となる「コミュニティプラザ」と、市民が集い、学ぶ場として、さらには地域情報化の基幹施設としての「自治体ネットワークセンター」を併設した建物を置き、ここを拠点として街ぐるみの魅力を高める様々な工夫を行っています。

AV会議室、交流センター、マルチメディアホール等の集会施設があり、これらを使ってパソコン教室、高品質のAV機器や音響設備による講演会やビデオ映写会、ハイビジョン映像装置による上映会などを開催し、好評を博しています。

さて、近年の商店街の疲弊には、急速なモータリゼーションの進展、消費者のライフスタイルの変化、人口の郊外移転とそれに伴う商業施設や公共施設の郊外化による中心市街地の空洞化という構造的な原因があります。

中心市街地活性化法による商業の活性化については、広いエリアでの統一的なコンセプトによる街並みの整備や、中心市街地全体を一つのショッピングモールと捉えた魅力的な商店街づくりを行うことで街全体の集客力向上を図る取組みが求められます。このための推進基幹としてTMOに期待が寄せられています。

なお、TMOとは、中心市街地活性化法に基づき、商工会・商工会議所又は第3セクターが市町村より認定され、中心市街地における商業集積の計画的な整備を企画・調整・実施する機関のことです。

Ⓒ 開発コンサルティング

次ページ  目次