今回は中小企業庁の調査結果に基づき、消費者の購買行動について説明します。消費者の購買行動がわかれば小売業は何をすれば売上が上がるかがわかるからです。調査の前提条件として、業態については、百貨店や大規模なスーパーマーケットなどの「大型店」、ドラッグストアやホームセンターなどの「量販専門店」、「コンビニエンスストア」といったものと並んで、これらの店舗に含まれないものを「中小店」として扱います。店舗の立地場所に関しては、「近所」か「近所でないか」を区分しています。なお、この調査では、通信販売・インターネットでの購買についても調査しています。
まず、消費者が、商品・サービスを購入する場合や飲食する場合に、日常的に利用する場所・業態として、中小店を選ぶ消費者の割合は、大型店、量販専門店、コンビニエンスストア、通信販売・インターネットを選ぶ割合に及ばず、近所の中小店で4割、近所以外の中小店は2割程度です。なお、年齢階層別にみると、29歳以下はコンビニエンスストアの利用割合が高いのが特徴的です。しかしながら、最も頻繁に利用する場所・業態を1つ挙げる場合には、近所にある中小店は、29歳以下を除くと、大型店に次いで2番目に利用されており、30~49歳の利用が他の年齢層よりもやや多くなっています。この傾向は都市規模に左右されません。
それでは、中小店で、どのような品目・サービスが購入されているのでしょうか。最もよく利用する場所、業態として選択肢を1つに絞った回答を集計すると、中小店が他業態と比較して利用される場合が多いのは、理容・美容、クリーニングといったサービスと飲食であり、物販では他業態の利用が多いです。物販の中で中小店の利用割合が高いのは、書籍、趣味・教養関連のソフトウエア、衣服・ファッション用品、お米・お酒、生鮮食品、惣菜・パン等その店でつくる食品、家電製品の順です。このうち、食品は近所の中小店の利用割合が高く、衣服・ファッションは近所以外の利用割合が高いです。これについて年齢階層別の特徴をみると、衣服・ファッション用品、家電製品を除き、30歳代以上の世代の方が中小店の利用割合が高いです。特に近所の中小店の利用割合が高まる傾向にあります。
次に、品目・サービスごとに中小店を利用する理由について見ると、いずれの商品群においても上位は、「価格・品揃え」、「家から近い」で占められています。それ以外の理由として挙げられている項目は、品目によってばらつきが見られます。飲食では「すぐ行ける」という理由が多く、衣服は「その店ならでは」、家電は「ポイントカード」、理容・美容は「顔なじみ」、クリーニングは「価格・品揃え」等を理由として挙げる消費者が多いです。また、惣菜・パン等や生鮮食品では「品質・安全性」という理由も多く選ばれています。なお、都市規模別に見ると、人口5万人未満の小規模都市では「自動車で行きやすい」、人口50万人以上の大規模都市では「家から近い」と重視するアクセス条件が異なっています。
こうした消費者の中小店に対する需要を踏まえた上で、消費者自身の購買行動の変化と、消費者による中小店への期待を整理します。まず、消費者の購買行動が、過去5年間でどのように変化したか、今後5年間でどのように変化するかを見ます。過去、今後ともに「通販・ネットでの購買増加」が最も多く、購買行動における大きな影響がうかがえます。この他、過去5年間では「価格重視」、「自動車での買い物増加」、「近所での買い物増加」が上位に挙げられましたが、今後においては「商品の安全性」「安心、安全に買い物できること」をより重視するようになるとの回答が上位に挙げられました。この他、「モノよりサービスに消費」が過去よりも多い割合で挙げられています。こうした安心安全重視、モノよりサービスは全世代を通して見受けられ、安心安全重視は高齢者ほど高い傾向があります。
次に、中小店に充実を期待する商品・サービスを見てみると、惣菜・パン等、及び生鮮食品への期待が特に高く、しかも近所での充実が期待されています。また、全般に高齢者ほど中小店への期待が高いです。中小店への改善要望としては、惣菜・パン等、及び生鮮食品において「品質、安全性向上」へのニーズが高くなっています。商圏の狭い中小店は、これら周辺住民のニーズがよく把握できているかどうかが生き残りや発展の鍵となるでしょう。
一方、商品・サービスの提供以外に中小店に期待される「付加的なサービス」とはどのようなものでしょうか。無償で提供されるサービスとして期待が高いものは、「商品のおまけや試供品」、「商品の故障の診断」、「商品の取り寄せ」、「関連情報の提供」です。一方、有償であっても提供が期待されるサービスでは、「商品の宅配」が多い他、高齢層では「一人暮らしの高齢者見回りサービス」、「配食サービス」への期待が、若年や中年層では「子育て支援サービス」への期待が高いです。
近所や繁華街等で期待する地域づくりに関する取り組みについては、清掃・美化活動、防犯・見回り、祭り・イベント等に対して期待が高いです。小規模都市では、これらの他、特産品・名物づくりなど、より幅広い役割が期待されています。
以上のように、消費者が中小店に期待しているのは、惣菜・パン等、生鮮食品、理容・美容などのサービス、飲食などの分野であり、「価格・品揃え」、「家から近い」こと等となっています。今後の購買行動変化として、安心安全重視が全世代で高まるとみられ、こうした顧客ニーズを捉えた価格・品揃えや安全に買い物のできる環境の確保が求められています。また、店舗での商品・サービスの提供以外に、宅配などの付加的サービスや、地域づくりへの貢献も期待されています。
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