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開発&コンサルティング

1-4 小売業の課題と対策(1)

小売業を大規模(従業者数50人以上)と中規模(5人から49人)と小規模(1人から4人)とに分けると、大規模小売業は小売業全体の1%、中規模小売業は小売業全体の24%、小規模小売業は小売業全体の75%を占めています。

わが国小売業の商店数は昭和53年以降、一貫して減少しています。そこで、規模別商店数の推移を見ると、大規模及び中規模の小売業は近年一貫して拡大を続けているのに対して、小規模小売業は昭和57年以降大きく減少しています。

また、販売額の推移を見ると、大規模小売業は一貫して増加、中規模小売業は横ばい、小規模小売業は減少しています。したがって、小規模小売業の衰退が顕著であることが分かります。さらに、小規模小売業の多くが存在している商店街の9割が衰退・停滞しています。以上が小売業の実態です。

そこで、小規模小売業の衰退の原因を見ると、中小企業庁の調査結果から「低価格競争」「大型店との競争」といった競争の激化があります。また、「魅力ある店舗が少ない」ことがあります。つまり、消費者にとって魅力ある店舗が減少したことから低価格で品揃えの豊富な近年の大型店との競争に対抗できなくなっていることが衰退の原因であることが分かります。したがって、「個店の改善・活性化」が課題となっています。また、「後継者がいない」ことも課題となっています。

このような課題を解決するためには、まず、個々の店舗が魅力を高め、集客力を高める努力をしなければなりません。また、この取り組みをサポートする商店街や市街地全体としての集客力向上の取り組みが求められます。

そこで、まず個店としての取り組みについて説明したいと思います。対策をひと言で言えば、地域・顧客に密着したきめ細かな対応が必要なのです。中小規模小売業は品揃えや価格面で大規模小売業に対抗することはできません。そこで、大規模小売業では難しく、むしろ中小規模小売業が強みとするきめ細かな対応が大規模小売業に勝つ決め手となります。これによって消費者の支持を獲得することができるのです。

具体的な事例をいくつか挙げましょう。まず、今では珍しくなくなっていますが、青果店を営むA社は有機野菜を作る農家だけから仕入れ、プライスカードに生産者の顔写真を載せて生産者を明示し、安全・安心な野菜だけを販売し、高価格でありながら顧客から支持を得て売上を増大しています。

また、薬局を営むB社では薬剤師が顧客へのアドバイスを丁寧にするようにし、特に高齢者にはいろいろな相談に対応するようにしました。健康に関することや健康食品に関することなど、テレビで放送したことでよく分からないことなども薬剤師が相談に応じました。特に、テレビでは説明しなかった健康食品のマイナス面や、その健康食品が相談者個人に合っているかどうかなどの相談にも応じました。また、病院で診察を受けたときに医者の説明がよく分からなかった場合などにもB社の薬剤師が相談に応じました。しかも、薬品などを買わなくてもいつでも相談に応じるようにしたために、気軽にこの薬局を訪れる高齢者が多くなり、自然と売上が増大したのです。

自転車販売業のC社は経営者がかつてプロの競輪選手を目指していたことから、自転車の調整にはこだわりがありました。それで、レーサー用などの高機能の自転車をホームページを通じてオンライン販売しています。メーカーから仕入れた半完成品の自転車をすべていったん解体し、一から組み立て直しているため、ロードレースやオフロードレースなどに出場する顧客が希望する調整ができるのです。このため、全国から注文がきて売上が増大しているのです。

玩具小売店のD社はターゲットを地元の子供に絞り、品揃えを低価格で売れ筋商品に特化し、品切れ防止に努めています。売れない商品は早めに見切り、問屋の抱き合わせ販売には応じず、売れ筋商品が見つかったら早めに仕入れ、常に品切れさせないようにしました。このため、品揃えを絞り込んでいるにもかかわらず、逆に、子供たちからは同社に行けば「何でも揃う」という評判が立ち、8坪の店舗でありながら毎日400人近い子供たちが集まり売上を増大させています。

さて、大規模小売店に対抗するための方法として、連携があります。中小小売店は経営資源が乏しいため単独で大規模小売店に対抗することはできません。しかも、低価格で品揃えを豊富にすることは大規模でなければ通常はできないのです。そこで、小規模小売店は連携して対抗するのです。連携する場合、各社の自主性・独立性を保ったボランタリーチェーンが適しています。なぜなら、元々、自営業者には自主独立性が高い人たちが多いからです。前回は卸売業が主宰してボランタリーチェーンを構築することを紹介しましたが今回は小売業が自ら主宰して構築するわけです。

しかし、ボランタリーチェーンには問題があります。それは各加盟店が自主独立性が高いがために、チェーン全体のリーダーシップを発揮できないのです。そこで、リーダーシップを発揮できる人材を集め本部を株式会社にするのです。つまり、本部も利益を追求するようにし、加盟店が儲かれば本部も儲かるようにするのです。要するに加盟店の利益の数%を本部が徴収するのです。

これによって、共同仕入を行って仕入価格を削減したり、品揃えを豊富にするだけでなく、商品開発を行ったり、共同配送センターを作って物流コストを削減したり、情報技術を活用して売れ筋・死に筋商品の情報を各加盟店に提供し在庫を削減して低価格を達成したりすることができるのです。

中小家電店が連携して大手量販店に対抗している事例もあります。中小家電店の強みは経営者が持つ技術です。据付工事や修理がすぐにできることが強みです。しかし、価格面や品揃えでは大手量販店にはかないません。そこで、中小家電店が連携してこの弱みを補うようにしたのです。まず、共同仕入れを行い仕入れ価格を引き下げて低価格を達成します。

そして、各店舗では売り場面積が限られていますから、このままでは十分な品揃えはできませんが、これを補うために各店舗にパソコンを置いて電子カタログを見られるようにしたのです。これによって、どの店舗にどの商品があるかが分かるので、顧客の欲しい商品をその日のうちに届け、すぐに据付られるようにしたのです。これによって、大手家電店に対抗するだけでなく、強みである据付や修理もすぐにできるので顧客の利便性が高まり、売上が増大したのです。

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