自分がやるべきことを自分でやらない人がいる。そして、何でも人に頼ろうとする。そういう人は結局何もできなくなる。仕事でもまったく同じである。
最近どういうわけか、会社を作りたいのだが、とか、新規に事業を始めたいのだが、とか、新しい場所に出店したいのだが、どうすれば良いのかといった経営相談が多い。ところが、自分で何も調べていないのである。
例えば、会社を作る場合に、どんな手続きが必要かとか、こういう商売を始めたいのだが、どこから仕入れるのかとか、どこどこに出店したいのだが、うまくいくかとか、こんな事業は法律的には問題がないかといった内容である。私は、何でもご相談下さいと言っているので、私にわかることは何でもお答えしているのだが、どう考えても自分で調べた方が良いだろうと思われる相談が多い。
そこで、私は調べるべき場所や本などを紹介するのだが、そうすると不満を言ってくる人がいる。あなたが調べて教えてくれ、と言うのである。なぜ、自分でやろうとしないのだろうか。こういう人たちが事業を始めてもうまくいくはずがない。自分でやればいろいろなことがわかってきて、仕事をするうえで自信がつくのだ。
例えば、会社を作る場合に、多くの人は設立の手続きを司法書士に頼むらしいが、すべての手続きを自分でやると、いろいろと面白いことがわかってきて、その後の会社運営に役に立つ。会社設立手続きなどは面倒なだけで簡単だから誰でもできる。
私がコンサルティング会社、(有)チェンジ・エージェントを設立した時には定款をどうするかが問題になった。これはどんな会社でも問題になるらしい。ご存知のように、定款には事業内容を書かなくてはならないのだが、法律上の事業と我々が考える事業とが異なっているのである。例えば、教育事業というのは法律上は人材派遣業であるという。
また、技術というのはあくまで機械とか化学といった工学技術を指すのであって、管理技術は法律上は明確にされていないらしい。したがって、コストダウン技術とか製品開発技術と言っても法務局にはわからない。いくら説明しても法務局内で意見が半分に分かれて結論が出ないと言う。結局、仕方なく技術という言葉を削除せざるを得なかった。法務局はまだいい。公証人役場はいいかげんだ。ろくに内容を検討しないで認証してしまった。そのため、法務局が待ったをかけたわけだ。
法務局では過去に問題になった定款の一覧表を見ながら判断している。その分厚い一覧表を見せてもらった。さっと見ただけで矛盾だらけだということがわかった。これでは判断出来ない。つまり明確な判断基準がないのだ。すると、法律なんてものは過去のものだ、ということがわかる。そうなると、法律というものが全く気にならなくなる。
例えば、世の中にない新しい事業をやろうとする時には、まず法務局に行って、こんな事業をやりたいから良く検討して欲しいと言えば良いのだ。お役人は国民の公僕(召し使い)なのだから自由に使っていいのだ。そのために我々は税金を払っている。実際、商法などを見ても、いかに実体とかけ離れているかが良くわかる。未だにカタカナ表記で昔の日本語を使って書かれているのだから、内容も明確とは言えない。法律家はそれを現代的に解釈して対処している。要するに、暫定処置に過ぎないのだ。私は早く改定してくれと言いたい。
法律だけではない。お役所のいろいろな裏事情を知っていれば、商売上の武器になる。そのためには、自分の足を使っていろいろなことを見たり聞いたりするのが良い。
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