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開発&コンサル手イング

第61回 山でクマに出会ったら

これまでに3回、丹沢でクマに出会った。最近では、数年前に東丹沢の三峰コースを歩いていた時に出会った。目の前でガサッと音がしたので、何かなと思って近づいて見ると、クマが走って逃げていくのが見えた。また、獣の臭いがした。

下山口の宮ヶ瀬で地元の人に聞くと、この辺りは昔からクマがよく出るという。三峰コースは主脈縦走コース、主稜縦走コースと並んで、丹沢三大縦走コースの1つだが、比較的、歩く人が少ない。ヒルが夏には多いためかも知れない。

クマは通常は人を恐れて逃げるが、時には人を襲う。猟師がクマを仕留めるには、クマが猟師を襲うように仕向けなければならない。逃げられては元も子もない。クマに襲わせるには、後ろを向いて逃げるそぶりをする。すると、必ず襲ってくる。クマは相手が自分より弱い動物だと分かると必ず襲ってくるからだ。

そこで、振り返って、目を見て威嚇する。すると、クマは立ち上がり、自分を大きく見せてこちらを威嚇する。そこで、心臓を狙って引き金を引く。

昔のクマ猟師は、クマが獲れるまで1人で愛犬を連れて山を歩き回った。連発銃は重いので、軽い単発銃を使った。つまり、すぐには2発目を撃てない。そのため、1発で仕留める腕を持っていなければならない。だからこそ、心臓を狙う。

しかし、時には外すこともある。弾が外れた時には、クマは一目散に逃げるか、それとも死に物狂いで襲ってくる。襲ってきたら猟師はどうするか。

クマは木登りが得意だから、木に登ってもダメである。では、よく漫画に描かれている死んだふりはどうか。これもダメである。死んだふりをしても、クマは食べられるかどうかを確かめるために、前足でつついてみたり、ひっくり返してみたり、少し食べてみたりする。要するに、試食するのだ。また、走って逃げてもクマの方が足が速いから必ず襲われる。

クマが死に物狂いで襲ってきたら、猟師はどうするか。猟師は常に、銃と共に、先が二またになっている杖を持ち歩いている。この杖は、山を歩く時の杖として使うだけでなく、銃を撃つときに手振れしないように銃を支えるためでもある。この杖でクマの顔を叩きながら後ずさりし、その間に弾を込める。愛犬はクマの足に咬みつきクマの動きを止める。そして、撃つ。

では、もし、銃も杖も手から離してしまった時にはどうするか。ベテランの猟師がそんなことをするわけがないが、万一、そんなことになったら、こうする。

上着を脱いで広げて、両手で高く持ち上げて、クマの目を見て威嚇しながら立ち上がって、上着を前後左右に動かす。クマが立ち上がって威嚇するのと同じように、である。すると、クマは逃げていく。クマは自分より大きな動物は襲わない。人間が襲われるのは、人間がしゃがんでいるときが多い。

この話は猟師から聞いた。そこで、私はこの話が本当かどうかを、確かめさせてもらった。この猟師はかつて、子連れと知らずに母グマを撃った。すると小熊が2匹、死んだ母グマの周りを歩き回って離れようとしない。そこで、2匹の小熊を抱えて自宅に持ち帰った。そして、許可を得て自宅で飼った。

最初は猟犬と同じように、首輪をつけて犬小屋で飼った。そのうち、クマが大きくなったので、クマ用の大きな檻を作った。

私がこの檻に近づいて行くと、2匹のクマもこちらに近づいて来る。餌をもらえると思ったのか。それとも、私を餌だと思ったのか。そこで、上着を脱いで両手で高く持ち上げて、前後左右に振ってみた。すると、2匹のクマは一目散に檻の隅の方に逃げて行った。

もし、山でクマに出会ったら、クマに気づかれないうちであれば、ゆっくりと後づさりして離れる。しかし、クマに気づかれたら、必ずこちらに近づいて来る。クマの狙いは、ザックの中の食べ物かも知れない。そこで、ザックを下ろしてその場に置き、ゆっくりと離れる。

このとき、絶対に背を向けて走って逃げてはいけない。そうするとクマは必ず追いかけて来て襲う。また、クマが立ち上がった時は威嚇するためであるから、もう逃げられない。戦うしかないのだ。よって、こちらもクマを威嚇する。

私は山歩きをするときには、いつも腰にポシェットを着けている。ポシェットの中には、タオルや行動食などと一緒に、レジャー・シートを入れておく。山で座って食事をするときや昼寝をするときに使うのだが、クマに出会った時にも使おうと思っている。

ザックを下ろして上着を脱ぐよりも、腰のポシェットからレジャー・シートを取り出す方が速いからである。取り出して、両手で高く持ち上げて、広げてバサバサと煽ってやれば、クマはきっと逃げていくに違いない。

Ⓒ 開発コンサルティング

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