次ページ  目次

開発&コンサル手イング

第54回 登山技術をどのように習得するか(2)

私の場合は、中学生の時に、1人で、あるいはクラスメート2、3人で山歩きを始めた。クラスメートの都合がつかない場合が多かったので、1人で山へ行くことが多かった。

金がないので、装備と呼べるものはなかった。学校へ通う時に履くスニーカー(ズック靴)を履いて、体育の授業で使う運動着(トレーニング・パンツ)を着て山へ行った。また、学校に通う肩掛けカバンを持って行った。

しかし、本来、どのような装備が必要かは図書館で山の本を読んでいたので、ある程度は知っていた。当時の本には、ハイキングにはキャラバンシューズ(布製ハイキングシューズ)が良いとか、綿の下着よりも絹の下着の方が良いと書かれていた。ちなみに、当時は吸湿速乾性のある下着などなかったし、絹の下着は高価だったため、大人でも綿の下着を着て山へ行った。

何度か日帰りで山歩きをしているうちに、次第に山歩き技術が身に付いたと思う。例えば、山歩きに慣れてないときには、若さにまかせて最初から飛ばして歩き、すぐにバテてしまう。ところが、山歩きに慣れてくると、楽にしかも早く歩けるようになった。

なぜなら、歩き始めはゆっくりと歩き、次第に体が慣れてくるに従い、自分に合ったマイペースで歩くようにしたからだ。ウサギと亀の寓話は本当の話だと分かった。このような山歩きの基礎技術は本にも書いてあったが、やはり実際に自分で経験してみないと分からない。

中学2年の正月休みに、1人で初めて冬の丹沢へ行った。その時はズック靴にわら縄を巻いて滑り止めにした。また、冬山に行くたびに風邪を引いた。綿の下着では汗をかいて体を冷やしてしまうので、風邪を引きやすくなる。そのため、どうすれば良いか悩んだ。

本にいろいろと書いてあったので、自分で片っ端から試してみた。最も簡単で効果的だったのが、背中にタオルを広げて入れておき、下山したときにタオルを引き抜くという方法だった。

吸湿速乾性のある下着を着る現在でもこの方法は効果がある。下山してから自宅に帰る間はバスや電車に乗っているので、体を動かさない。そのため、汗で濡れた下着で体が冷えて風邪を引いてしまうのだ。タオルは綿なので速乾性はないが、吸湿性があるので、これを利用するわけだ。このような基礎的な登山技術は中学生のときに会得した。

日帰りのスリーシーズンの低山から始めて、数日かけての夏の高山へ、次に冬の低山へ、そして春・秋の高山へ、さらに冬の高山へと次第に困難な山へと経験を積んでいけば、無理なく登山技術が習得できる。

また、小屋泊まりを経験してからテント泊まりを経験すれば、装備の違いや荷物の重さの違いが実感できる。テント山行では重い荷物を背負って歩くので、計画する際にどのくらい体力が必要かが分かる。よって、テント山行を行うには普段から体力づくりをしておく必要があるのだ。

初心者だからといって、人に頼ってグループ山行や集団山行に参加するのが良いわけではない。人を頼る人ばかりが集まって山へ行き、しかも、名ばかりのリーダーの下では事故が起きるのは当然である。山の事故や遭難は自己責任であることを肝に銘じておくべきだ。山では絶対に人を頼ってはいけない。

ところで、昔は、山岳会やハイキングクラブなどがたくさんあったことを前回書いたが、私は山岳会やハイキングクラブに入会することはあまり好きではなかった。かつては、私も登山技術を習得するために、山岳会やハイキングクラブに入会したことがある。しかし、いろいろな問題があった。

例えば、ある山岳会では新人訓練と称して、新人だけに重い荷物を背負わせたり、長いルートを歩かせたりした。どの山岳会も通常は先輩後輩の区別が厳格で、先輩の命令には絶対に服従しなければならなかった。また、まるで軍隊のような山岳会もあった。そして、殴る、蹴るは当たり前であった。しかも、登山技術を教えてもらえず、先輩たちは山で自慢話ばかりしていた。そのうえ、リーダーとしての責任も果たさないのである。

また、和やかな雰囲気のハイキングクラブでも登山技術は習得できなかった。雰囲気の良いクラブであるほど、先輩(リーダー)の役割は単に道案内に過ぎなかった。よって、一般の旅行と同じである。これでは、登山技術を習得することはできない。

登山技術を習得するには、1人で、あるいは気心知れた数人の仲間で山歩きをしながら経験を積むのが良いと思う。山の技術を本で読んだり、人に教えてもらったりして、その技術をトライ&エラーで実践し、知識・経験を積むのが最も良い方法だと私は思う。逆に、最も悪いのは、山で人に頼ることである。

Ⓒ 開発コンサルティング

次ページ  目次