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開発&コンサル手イング

第50回 山歩きはアウトドアではない

趣味は何ですかと聞かれて、山歩きですと答えると、「あぁ、アウトドアね」と言われた。しかし、山歩きはアウトドアではない。山歩きは登山とかハイキングとかと言われるが、断じてアウトドアではない。なぜなら、山歩きは自然の中に入るが、アウトドアは自然の中には入らないからだ。

アウトドアとは、アウト・オフ・ザ・ドア・ライフ(Out of the door life)の省略形であり、その意味はドアの外の生活、つまり、「庭の生活」のことであり、庭で衣食住を楽しむことを言う。

アウトドア発祥の地アメリカでは、庭が広いために、庭でパーティをしたり、庭にテントを張って寝たりする。これが、本来のアウトドアである。日本でアウトドアが流行するようになったのは、もちろんアメリカのマネであるが、日本では庭がなかったり、狭かったりするので庭ではできない。それで、車で自然豊かな場所へ行ってアウトドアを楽しむようになったのである。

日本のアウトドアの典型的な例は、車にテントとバーベキューセットを積んで、自然(山や森や川)の近くまで行って、そこでテントを張って、バーベキューを楽しんで、テントで寝る、というものだ。

したがって、山歩きとアウトドアの違いは、

  1. 山歩きは山(自然)の中に入るが、アウトドアは自然の中には入らない。自然を外から眺めて楽しむ。
  2. 山歩きは自分の背中で荷物を背負うが、アウトドアは車に荷物を積む。
  3. 山歩きは歩いて移動するが、アウトドアは車で移動する。
  4. 山歩きは運動になるが、アウトドアでは運動にならない。車を運転して、料理して、食べて、寝るだけである。

よって、山歩きは健康に良いが、アウトドアは健康に良いとは言えない。

最近では、「屋外のスポーツやレジャー」のことをアウトドアと呼んでいる。つまり、屋外で行うスポーツやレジャーはすべてアウトドアなのである。スキー、スケート、ヨット、サーフィン、パラグライダー、海水浴、釣り、サイクリング、カヌーなど、すべてがアウトドアだと言う。

オリンピックの種目になっているスポーツまでアウトドアと呼ばれている。そのうち、オリンピックは「アウトドアの祭典」などと呼ばれるのかも知れない。

これはもちろん、企業がいろいろな商品やサービスを売るために、アウトドアという言葉の意味を勝手に変えて流行させたからである。日本人は外国の格好いい言葉には弱い。すぐに企業の企みに乗ってしまう。言葉の意味を確かめないで使うからである。しかも、外国語ができない人ほど外国語を使いたがる。

では、日本のアウトドアの典型的な例である、「車で自然の近くまで行って、バーベキューをしてテントで寝る」という楽しみ方をどう呼べば良いのであろうか。私は単にキャンプと呼べばいいと思う。実際に、アメリカではそういう楽しみをキャンプと呼んでいる。

ただし、キャンプは通常、野外でレジャーやスポーツを行う時に、近くにホテルがないために行うものである。例えば、湖に釣りに行ってキャンプをする、森にハイキングに行ってキャンプをする、などである。ところが、日本ではキャンプに行ってキャンプをするのである。つまり、アメリカでは釣りやハイキングをするためにキャンプをするのだが、日本ではキャンプをするためにキャンプをするのである。

ところで、アウトドア=キャンプだとすれば、日本にはアウトドアは存在しないということになる。元々、アウトドアは庭で楽しむことであるから、日本でそれができなければアウトドアは存在しないのである。

言葉の意味は時代により、また、人の都合により変化する。だが、私は断じて「山歩きはアウトドアではない」と言いたい。なぜなら、アウトドアは高々数十年の歴史しかないが、山歩きは人間が2足歩行をするようになってから今日まで、何万年もの長い歴史があるからである。

山歩きは、大昔の人にとっては生活そのものだった。木の実を採ったり、獲物を獲ったり、峠越えをして物々交換をしたりしたのである。現在では、山歩きはスポーツやレジャーになったが、人間の生活に根差した長い歴史があることを忘れてはいけないと思う。

Ⓒ 開発コンサルティング

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