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開発&コンサル手イング

第47回 「道草の山歩き」は安全で安心

私の山の歩き方は、「道草の山歩き」である。計画を立てずに、足の向くまま、気の向くままに歩くからだ。いわゆる「行き当たりばったり」なのである。足の向くまま、気の向くままにルートを変え、気に入った場所があればそこで時間を過ごし、また気に入った場所で寝る。

朝起きて、今日は山へ行こうと決めたら、まず、身支度をする。次に、山域を決め、地図をポシェットに入れる。そして財布を持って、靴を履いて、ザックを背負って出かける。ぐずぐずしている時間がもったいない。

スリーシーズンの低山なら、装備は準備してあるままで良いが、夏の高山と冬の低山の場合は、軽アイゼンを追加してザックに入れれば良い。防寒具はいつでも必要なため、常に通常装備としてザックに入れておく。よって、追加する必要はない。水と食料は駅のコンビニで買う。ただし、小屋泊まりの場合である。

いつでも山へ行く準備はしてある。だから、行きたくなったらすぐに出かけることができる。ザックは玄関にいつでも置いてある。私の経験では、冬の高山を除けば日本のどの山でもザックの中身は同じでかまわない。基本装備(通常装備と非常装備)を常にザックに入れておけば良い。

自宅を出たら、どの登山口から登るか、つまり、どの駅で降りるかを自宅を出てから最寄り駅に着くまでに決める。そして、駅に着いたら降りる駅までの切符を買う。電車に乗ってから考え直し、他の駅で降りることもある。

私は計画的に行動することが嫌いだ。仕事をするときや人と一緒に行動するときには、計画的に行わなければならないが、1人で山歩きをするときには、そうする必要はない。私はほとんど単独行なので、行きたい時に行きたい山に行き、歩きたいルートを好きなように歩くのだ。

そもそも、山ではいつも計画的に行動できるとは限らない。急に天気が悪くなったり、道が崩れて通れなかったり、捻挫して痛くて歩けなくなったりする。また、滑落して怪我をしたり、道を間違えたりする。

しかし、多くの場合にはそのときの気分でルートや行動を決める。景色の良いところではゆっくり過ごし、歩き疲れたら何時間でも休憩し、またどこでも寝る。だから、ビバーク(不時露営)ではない。いつもそうしているからである。計画的に行動するよりも楽しいし、安全で安心である。また、無理をせずに山歩きが楽しめる。

寝るのに必要なツェルト(簡易テント)は、軽いし、コンパクトなのでいつもザックに入れてある。ツェルトさえあればどこでも寝ることができる。私はテントを買う前にツェルトを買った。その時は、単に、山小屋に泊まる金やテントを買う金を節約して、その分、山歩きをしたかったからだ。しかし、そのため、山歩きにはいつもツェルトを持って行くのが習慣になった。

また、私は小学生のころから道草を食うのが好きだった。学校のすぐ裏に家があって、始業のチャイムが良く聞こえた。チャイムが鳴り始めたらすぐに家を飛び出し、裏の畑を突っ切って走って行けば、チャイムが鳴り終わるまでに着席できた。だから、授業が終わってから真っすぐに家に帰ると、すぐ家に着いてしまう。実に、つまらない。

そこで、毎日、遠回りして帰った。クラスメートに「一緒に帰ろう」と誘われると、クラスメートの家まで一緒に行った。時には、その後クラスメートと一緒に遊びに行った。クラスメートと別れてから1人で家に帰った。帰る途中で桑の実を採って食べたり、野イチゴを採って食べたり、あぜ道に生えているノビルを採って、家に帰ってから味噌をつけて食べたりした。文字どおり、道草を食いながら家に帰ったのである。

「道草の山歩き」は楽しいとは言っても、それなりの装備と知識・経験が必要だ。予備の水・食料やどこでも野営できる非常装備をいつも持ち歩かなければならない。そのうえ、地図読み、観天望気、怪我や病気への対処の仕方など、山歩きの知識と技術が必要である。

しかし、そうしたことは結果的に安全で安心な山歩きができることになる。予備の水・食料や非常装備の重さは3キロ程度になるが、その程度の装備で安全で安心して、しかも、自由に楽しく山歩きができるのである。

数人のグループで山歩きをしている人たちや、ハイキングクラブなどの集団で山歩きをしている人たちを見ると、荷物があまりにも少ない。私も集団山行に参加することがあるので、他の参加者に聞いてみると、ほとんどの人が予備の水・食料や非常装備を持っていない。日帰りだと着替えやヘッドランプすら持っていない人もいる。

何かあったときにはどうするのかと聞くと、誰かが助けてくれるから大丈夫だと言う。リーダーと称する人に聞いてみても、計画的に歩く予定だし、登山計画書も提出しているし、保険にも入っている。よって、問題はないと言う。しかし、本当にそうだろうか。山ではいつも計画どおりに行動できるとは限らないのである。

「道草の山歩き」をするために、私は人よりいつも3キロ程度多めに荷物を背負っている。しかし、実を言うと、最近は年を取ったせいか、その3キロが苦痛に思えるようになって来た。そこで、試しに予備の水・食料や非常装備を持たずに山歩きをしてみた。すると、かなり楽なのだ。しかし、山歩きを楽しめない。どうしても計画通りに歩かないといけないからだ。

もし、道が通れなくなっていたり、途中で天気が悪くなったり、ひどく疲れたりして、計画通りに歩けなかった時のことを思うと、それが心配になって、歩くのを止めてもう帰ろうと思ってしまう。そこで、やはり、間違いだと気づいた。「道草の山歩き」は安全・安心で楽しい山歩きができる方法なのである。

そのうえ、「道草の山歩き」が健康の維持にもなっていることに改めて気がついた。通常、多くの人は日帰りハイキングでは、6、7キロ程度の荷物を背負う。ところが、私は常に、10キロ程度の荷物を背負っている。それが私にとってちょうど良い荷物なのだ。

日帰りハイキングでも、1泊小屋泊まりハイキングでも、低山では私はいつも同じ10キロ程度の重さの荷物を背負っている。

よって、体重が増えると体重計で測らなくても分かる。なぜなら、荷物が増えるのと同じだからだ。1キロは500mlのペットボトル2本分、2キロはほぼ一升瓶1本分の重さである。荷物が増えるといつもより疲れるし、苦しい思いをしなければならない。

そこで、体重を減らす努力をする。私は元来、太りやすい体質で、油断をするとすぐに太ってしまう。だから、「道草の山歩き」を満喫するために、常に太らないように気を付けている。このことが結局、健康の維持にもなっているのである。

Ⓒ 開発コンサルティング

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