
冬山は寒いし危険だから行かない、と言う人は多い。だが、冬山の方が好きと言う人もいる。その理由は、
冬が寒いのは当たり前である。寒ければ防寒着を着れば良い。また、冬山だから危険だということはない。危険なのは、スリーシーズンでも同じである。技術と経験と体力を考えて、自分に合った山へ行けば良いのである。
これまで何度も書いているが、冬の荷物が軽くなるのは、飲み水の量が少ないからである。飲み水は春・秋の日帰りハイキングでは、通常、水2リットル程度で、夏は水3リットル程度だが、冬では水1リットルあれば充分である。
これは、日帰りハイキングで、10キロ程度の荷物を春夏秋冬いつでも背負っている私の場合なので個人差はあると思う。真夏の低山では水を3リットル持って行っても足りない場合もある。
冬の低山で必要なのが軽アイゼンだが、基本装備に軽アイゼンを追加しても重量は冬の方が夏より軽い。軽アイゼンは6本爪で300g程度だからである。しかも、歩いている時にはアイゼンは靴に装着しているので荷物にはならない。
冬に汗をあまりかかないのは当然であるが、それだけ寒いので、保温性の高い防寒具が必要である。かといって、汗をあまりかいてはいけない。冬は汗をできるだけかかないようにしなければいけない。なぜなら、汗をかくと体を冷やすからである。また、他のシーズンのように簡単に下着の着替えもできないからである。
よって、着たり脱いだりこまめに温度調節をする。そこで温度調節しやすい衣類を着る。例えば、防寒着は頭からかぶるセーターよりも前開きのフリースや薄手の羽毛ジャケットの方が温度調節しやすい。風のない天気の良い日などは、雪の照り返しで夏のように暑くなるので、低山では真冬でも下着1枚で歩くこともある。
最近では、良い下着がある。化学繊維で吸湿速乾性があり、しかも汗で発熱したり、起毛して保温性を持たせた下着がある。通常、スリーシーズンは薄手のものを使い、冬は中厚手、又は厚手のものを使う。綿は吸湿性はあるが速乾性がないので、山では絶対に使えない。体を冷やしてしまう。
昔から保温性が高いとされている羊毛は速乾性がないので、汗をかいて濡れると保温性も失われてしまう。天然繊維はとにかく下着には使えない。
ただし、春と秋なら化学繊維に綿を加えて肌触りを良くした綿混や保温性を高めた毛混も使える。また、最近流行しているメリノウールは繊維が細かいため肌触りが良いのに加えて、薄いため比較的早く乾き、冬山でも下着として使える。ただし、汗をたくさんかくと保温性がなくなってしまい、体を冷やしてしまう。
よって、ウールはやはり中衣として着た方が保温性を生かすことができる。私は、夏でも冬でも、下着は吸湿速乾性のある化学繊維を使い、その上に、中衣として長袖のウール、又は毛混のカッターシャツを着るようにしている。
なお、化学繊維は熱に弱いので、コンロやストーブで乾かしてはいけない。山小屋の乾燥室を利用するのであれば問題ない。ストーブから離れたところで一晩かけてゆっくり乾かすからである。山で下着を乾かすのは基本的には着干しである。つまり、着たまま自分の体温で乾かすのである。
そのためには、できるだけ汗をかかないように歩いて、少しでも汗をかいたら休憩する。そして、汗が冷えて寒くなったら歩きながら体温で乾かす。この繰り返しである。この技術がないと長期のテント山行はできない。なぜなら、着替えをたくさん持って行くわけにはいかないし、テントでは乾かすことが難しいからである。
最初に書いたように、雪で道が歩きやすくなるのは、小石や木の根などが雪に埋まってしまうので、道が平らになるためである。そのうえ、寒さで雪が固く締まり凍るからである。凍った道はアイゼンを使えば滑らないので歩きやすくなる。
雨が降った後で凍った場合もアイゼンを使用する。アイゼンは低山であれば6本爪の軽アイゼンで良い。なまじ、低山に10本爪以上のアイゼンを持って行くと、重い。
アイゼンを靴に取りつけるときには、しっかりと取り付けないと歩いている途中で外れてしまう。よって、あらかじめ着脱の練習をしておく。また、アイゼンは幅と長さを調節できるようになっているため、靴の大きさに合わせて調節しておく。
なお、靴が軽登山靴(ハイキングシューズ)ではなく登山靴であれば、靴にワイヤーをひっかけて固定するセミワンタッチ、あるいはワンタッチアイゼンが使用できるので、着脱は簡単であるし、途中で外れることはめったにない。
ところで、年末に丹沢の表尾根を歩いた。山頂の塔ノ岳からは雪をかぶった富士山がくっきりと見えたのはもちろんだが、東京スカイツリーも良く見えた。江の島も伊豆大島も良く見えた。要するに、相模湾を一望できた。冬は遠くの景色が良く見えるので、景色を見たいのであれば、冬に山歩きをすると良い。
双眼鏡を持って行くと、遠くの景色をよりいっそう楽しめる。また、望遠レンズ付きのカメラを持って行くと、普段撮れない写真が撮れる。冬には木の葉が落ちてしまうので、小鳥やシカや猿などの動物も良く見える。また、冬山の夜は空気が澄んでいるので星がたくさん見える。
ところで、夏山と冬山の違いの1つに、昼間の長さがある。夏山では夕方6時を過ぎても明るいが、冬山では4時を過ぎると薄暗くなる。また、山は街よりも早く日が暮れる。なぜなら、通常、下山する道は谷にあるからである。
冬山初心者が陥りやすいのは、日帰りハイキングでヘッドランプを持って行かずに、下山途中で暗くなってしまうことである。日帰りだからヘッドランプは必要ないと思っている。そんなことだから、ビバーク(不時露営)の準備もしていない。
そのうえ、冬は汗をあまりかかないだろうと着替えを持たずに行くと、寒さで汗が冷えて風邪を引くことになる。時には、低体温症になることもある。よって、冬山では必ず、ヘッドランプと着替えは持って行かなくてはいけない。準備をしっかりして、自分の技術と体力に合った山へ行けば、冬山は危険ではなく、むしろ快適なのである。
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