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開発&コンサル手イング

第41回 地図が読めるようになるには

地図が読めるとは、実際の山の地形と地図に書かれている山の図形が分かり、それらが一致することである。言い換えれば、地図が読めるとは、山の中で自分が地図上のどこにいるかが分かることである。要するに、現在位置が分かることである。自分が行きたいところにどう行けば良いかを知るためには、まず現在位置の確認から行うのである。

地図が読めるようになるには、地図を読む練習をすれば良い。予め自宅で地図をよく見ておく必要があるが、自宅では地図を読む練習はできないので、実際に山へ行って練習する。また、教室などで人に教えてもらっても、実際に山で自分がいる現在位置が分からなければ何もならない。

地図を読む練習をするには自宅近くの低い山で、人がたくさんいる山が良い。なぜなら、もし道が分からなくなっても人に聞けば良いからである。例えば、東京なら高尾山が良いだろう。

地図はもちろん、山歩き用の地図を使う。例えば、昭文社の『山と高原地図』である。昭文社の地図を使うのは毎年改定しているからである。古い地図は道が現在と違っていることがある。自宅近くの山で、昭文社の地図があればそこで練習する。

地図を見ると、左上に縮尺が1:50,000などと書いてある。つまり、5万分の1の地図である。そして、小さな文字で「地図上1cmは実際距離500m」と書いてある。山の地図は、通常、5万分の1、又は2万5千分の1であるが、いろいろである。

山の地図は国土地理院の地図を基に作られている。国土地理院の地図の方が詳しく書かれているので良いのだが、初心者には分かりにくいと思う。昭文社の地図は分かりやすく書かれているので、通常、初心者は昭文社の地図を使う。ちなみに、国土地理院の地図の読み方は中学校で習ったはずなので、復習しておくと良い。

地図には必ず方位磁針(磁石の方位)が書かれている。地図はすべて上が真北になるように書かれているが、実際には磁石の北と多少ずれている。場所(山)によって、ずれの度合いが異なるので、そのずれの度合いが地図に書かれている。

例えば、今私の手元にある丹沢の地図では7°29’となっている。そして、小さな文字で「方位磁針はこの図では真北(地図上の真上)より約7°29’西(左)に傾きます」と書かれている。

そこで、まず、実際の山で地図を広げ、磁石を地図に書かれている方位磁針の図の上に置く。そして、磁石が示す真北が地図の真上(真北)より7°29’左に来るように、地図を右に少し回転させる。すると、地図上の北と磁石の北が一致する。つまり、実際の山と地図の方向が一致するのである。この作業を必ず最初に行う。

次に、現在位置の確認を行うが、現在位置の確認が終了するまで地図を動かしてはいけない。よく、地図を見やすい位置に動かす人がいるが、動かしたら方位が変ってしまう。地図を見る時には地図を動かすのではなく、自分が動くのである。

現在位置の確認をするために、私は、マクロ確認とミクロ確認の両方を行って、正確な位置を確認するようにしている。

マクロ確認の方法は、まず、実際に山で周囲を見渡して、最も目立つ高い山、あるいは特徴のある山を探す。次に、その山が地図上のどの山であるかを探す。探し当てたら、その山の頂上、あるいはその山の特徴のある地点をA地点とする。

この時に、高い山が低く見える場合があることを忘れてはいけない。つまり、最も高く見える山が地図上で最も高いとは限らないのである。遠い山は低く見え、近い山は高く見えるからである。これは遠近法のためである。地図は上空から見た図であるが、自分は地上にいるわけであるから、遠近法を考慮しないと間違ってしまう。

次に、自分がいる位置とA地点とを結んだ線上に、山の中に何か目印になるものがないかを探す。この目印は自分がいる位置にできるだけ近い方が良い。この時に、目印がちょうどこの線上になく、ずれている場合には、できるだけ自分がその線上に来るように移動する。

例えば、線上に鉄塔があったとしよう。この鉄塔をB地点とする。次に、地図上で鉄塔(B地点)を探す。すると、地図上の、A地点とB地点とを結んだ線上のどこかに自分がいることになる。

次に、同じことを別の方角でも行う。同じようにして、実際の山の地形と、地図上の図形とが一致するC地点とD地点とを探す。すると、C地点とD地点を結んだ線上のどこかに自分がいることになる。よって、2つの線が交わる点が、自分がいる現在位置ということになる。以上がマクロ確認による現在位置の確認である。

ちなみに、この方法は漁師が広い海のどこに魚がたくさんいるかを探す時にも使われている。過去に魚がたくさん捕れた時に、その場所を同じ方法で確認して覚えておき、再びその場所へ行くときにこの方法を使うのである。この方法を「山立て」、あるいは「山を立てる」と言う。現在では魚群探知機を使うが、昔はこのようにして場所を確認した。

もう1つ例を挙げると、雪国のタクシーの運転手は現在でもこの方法を使っている。雪がたくさん降り、広い畑や田んぼがすべて雪で埋まってしまった場合に、どこに道があるか分からなくなってしまう。そこで、この方法で道の場所や曲がり角の場所を確認しながら、脱輪しないように走るのである。

さて、次にミクロ確認であるが、まず、山で自分がいる場所の近くに何か目印になるような地形や人工物を探す。例えば、崖とか川とか建物とかである。次に、地図上に描かれている同じ図形を探す。そして、実際に山にある地形や人工物と地図上に描かれている図形とが一致すれば、その位置が確認できる。

このように、実際に山にある地形や人工物を複数探し、それらの地図上の位置を確認する。すると、それらの相対的な位置関係から自分がいる現在位置が確認できる。2つ以上見つければ現在位置が確認できる。

自分がいる近くに、鉄塔とか山小屋とか休憩所のような明確な目印となる人工物があれば、現在位置の確認は容易にできるが、これらの人工物がなければ何か特徴のある地形を探さなければならない。昭文社の『山と高原地図』には左上に図形の凡例が掲載されている。この凡例を覚えておき、現地で確認するのである。

また、練習を重ねれば、地図上に描かれた尾根と谷の形と位置、等高線の密度から山の勾配などが分かるので、山の地形が地図上で立体に見えるようになる。地図が立体に見えれば、山の地形と地図の図形がはっきりと分かり、それらが一致するので、より正確に現在位置の確認ができるようになる。

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