前回、企業から消費者に向けたコミュニケーションの手段についてそれぞれの特徴をまとめてみました。今回は消費者の反応について書いてみようと思います。これについては、従来からよく知られている反応プロセスモデルがあり、また最近ではインターネットの活用による消費者の反応が知られているので、まず、これらについてまとめてみようと思います。
これらの消費者反応プロセスモデルは学者や研究者が作成したものであり、「なるほど」とは思いますが、だから何なの、実際にどう役に立つのと思ってしまいます。そこで、企業では個々のコミュニケーション手段に対する特徴を踏まえて、これらを組み合わせ、いかに売上に結びつけるかについて努力しているわけです。この組み合わせ方をコミュニケーション・ミックスと呼んでいますが、この、ミックスを考えるに当たって参考となるコミュニケーション手段の相対的重要性というのがあります。
これは消費財と生産財によるコミュニケーション手段の相対的重要性の違いを表したものですが、このように企業では消費財か生産財かによってコミュニケーション手段の組み合わせ方を工夫しているわけです。この組み合わせ方はプル戦略かプッシュ戦略かによる戦略の違いとも言えます。
すなわち、プル戦略においてはまず、広告によって消費者の需要を直接喚起し、吸引力を引き出し、この吸引力を基にさらにSP、人的販売等により消費者の購買へと導く戦略で消費財の場合によく用いられます。
これに対して、プッシュ戦略においてはメーカーが卸売業者に対して自社製品を売り込むことからスタートし、次いで卸売業者は小売業者へ、小売業者は消費者へと順次売り込みを図ることで消費者の購買へと結びつける戦略で生産財の場合によく用いられます。したがって、プッシュ戦略においては広告よりも人的販売やSPが重要となるわけです。
さらに最近では、新しいコミュニケーションの考え方・動きとして、ミックスではなくインテグレーション(融合化)という考え方・動きがあるということです。インテグレイテッド・マーケティング・コミュニケーション(IMC)と呼ばれるこの考え方・動きは、これまで企業のコミュニケーション対応の責任部署がばらばらであり、これらを調整し管理する責任者がいなかったことへの反省から生まれたということです。
つまり、これまでは広告は広告部門、人的販売は営業部門、パッケージは製品開発部門、といったようにそれぞれ異なる部門で効果目標や予算が編成され、内容が決められていたのです。個々ばらばらに内容が決められたものがミックスされて消費者に訴求されてきたのですが、ミックスされた効果よりも融合化された新しい効果が期待できるのではないかということです。
この考え方・動きが重視されるようになったのは、次のような理由もあるとのことです。第1は、SPの発達があるとのことです。つまり、いろいろなSPが考案され実施されるようになったことです。第2は効果測定が比較的容易になったことです。つまり、POSデータ、スキャナー・パネル・データなど、販売情報、購買情報などの取得や分析が容易にできるようになったことです。第3は個人を対象としたいわゆるマン・ツー・マン・マーケティングの発展があるということです。個人の住所、氏名だけでなく所得、趣味、購買履歴などの個人情報が利用できるようになったことです。
以上により、大衆(マス)を対象としたマーケティングから個人を対象としたマーケティングに転換することにより、きめ細かな訴求ができるようになったのでIMCが重視されるようになったわけです。したがって、今後はIMCがいっそう重視されるようになると思います。
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