企業とは一口で言えば環境適応業です。そこで、経営の骨組みの再構築を行う際に参考にするために、日本企業と米国企業の環境適応方法の比較について1980年に行われた調査結果を要約して掲載します。現在の御社の環境適応方法と比較してみて下さい。(出展:『日本の企業システム 第2巻 組織と戦略』伊丹敬之、加護野忠男、伊藤元重 編 有斐閣)
この調査は日本と米国でほぼ同時に行われたもので、対象は、米国は『フォーチュン』誌の鉱工業売上高ランキング上位2000社、日本は東京証券取引所第1部、及び第2部上場の製造業1031社です。米国では最高経営責任者個人宛に、日本では社長室宛に質問票を郵送し、会社を代表して答えることができる人に回答を依頼したものです。
質問票に対する回答は、米国では、GM、デュポン、モービル石油、フォードなど227社、日本では日立製作所、松下電器産業、富士通、東レなど291社から寄せられた、とのことです。
| 調査項目\国 | 米国企業 | 日本企業 |
|---|---|---|
| 経営目標 | 投下資本収益率(ROI) 株主利益の重視 | 市場占有率 新製品比率の重視 多元的目標 |
| 経営戦略 | より広い活動領域 機動的な資源展開と経営資源の有効利用 高い花形製品比率 正攻法の競争志向 製品戦略の重視 | 経営資源の長期蓄積 高い負け犬製品比率 ニッチ戦略 生産戦略の重視 |
| 生産技術 | ルーティン性の高い生産技術 | ルーティン性の低い生産技術 |
| 組織構造 | 高度の公式化・集権化・標準化(機械的組織) 横断関係の制度化 財務・会計部門の大きなパワー 高い事業部制採用率 より高度な業績評価 業績―報酬の結びつきが強い 高度の細分化と自己充実性 垂直的統合機構 | 低度の公式化・集権化・標準化(有機的組織) 製造部門の大きなパワー 低い事業部制採用率 単純な業績評価 業績―報酬の結びつきが弱い 低度の細分化と自己充足性 横断的統合機構 |
| 組織過程 | 個人のイニシアティブによる決定 問題直視によるコンフリクト解消 アウトプット・コントロール | 情報志向的リーダーシップ 集団的意思決定 強権と根回しによるコンフリクト解消 価値・情報の共有によるコントロール 変化志向的組織風土 ローテーションと内部昇進 |
| 経営者の個人属性 | スペシャリスト 高い価値主導性 革新イニシアティブ 実績 | ジェネラリスト 高い対人関係能力 |
経営環境には一般環境と個別環境の2つがあり、一般環境は政治的・制度的条件、経済成長率、社会的・文化的条件などですが、これらはアンケート調査をしなくても分かるので、この調査では各企業の個別環境について調査しています。
製品市場、労働市場、組織間ネットワークの3つの個別環境について調査しました。これらの環境は、企業自身の選択の結果生み出されたものであり、企業の過去の戦略を反映したものですが、同時にこれらの環境は将来の環境や組織のあり方に制約を加えるものでもあります。
製品市場環境では、米国企業はより多様で敵対度の高い製品市場に直面しているのに対し、日本企業はより変動的ですが、参入障壁が高いことが分かったのです。つまり、常識とは異なる結果になったのです。と言うのも、常識では日本企業は競争が激しく、その結果、競争力を高めたと考えられていたからです。
また、日本企業は技術、及び需要の両方において経営環境の変動性がより高いと考えています。これは当時の日本の経済成長率が高く、日本は8.9%であったのに対し、米国は1.8%だったためだと思われます。多くの日本企業の戦略や組織は、このような変化に対応するようにできていたことがこの調査によって明らかになりました。
労働市場は、常識通り、米国の方がより流動的です。しかし、日米ともに地域や業種によって流動性に違いがあります。
日本企業は組織間ネットワークからの制約が強いと感じており、米国企業は政府からの制約が強いと感じています。米国企業においては政府との敵対的な関係があり、それを反映したものと言えます。政府との関係を除けば、日本企業はより緊密な組織間関係のネットワークに取り囲まれており、その制約を強く受けています。財閥グループ、融資系列、下請生産会社のネットワーク化、研究開発や市場開拓などの同業者間協力など、相互依存関係がみられます。
抽象的に考えれば資本主義社会のあらゆる企業は、すべて同一の目標を持つと考えられます。すなわち、利潤最大化、あるいは現在価値の最大化ですが、現実の企業経営はより具体的、多元的、かつ相互に対立的な目標をもとに行われています。企業内外の多様な利害集団の願望、企業が直面する社会経済的条件、製品市場や生産技術の特徴、さらには様々な制度的条件を反映しています。
経営目標に関しては、企業の多元的な目標の相対的な重要度を調査しました。そのため、9種類の目標をあげ、この中から重視している上位3つの目標についてその順位を聞く、という方法がとられました。
日米の比較をすると、第1に、米国企業がROIを最も重視しているのに対し、日本企業は市場占有率という企業成長にかかわる目標を最も重視し、同じく成長に関わる新製品比率を高い目標にしています。
一般的に言えば、米国企業は収益目標を重視し、日本企業は成長目標を重視しています。とりわけ、シェア志向は日本企業の顕著な特徴です。日本では終身雇用が重視されているため、企業の規模を維持拡大しようとする目標が重視されがちなのです。
第2に、米国企業が株価を2番目に重要な目標としているのに対し、日本企業では9種類の目標のうち、株価は最下位の目標になっています。これは、おそらく米国企業が株式市場からの直接金融をより重視していることと、株価の低下によって、企業が買収される恐れが増大するからだと思われます。
日本では株主の利益をあまり重視しておらず、逆に、米国では株主の利益を重視し過ぎているため、長期的な視点からの経営が行えないという特徴をもたらしています。
米国企業の目標がROIと株価に集中しているのに対し、日本企業はいろいろな目標を掲げており、多元的だと言えます。目標に関する日米間の差異は前述の環境の差異とも関係しています。日本企業が成長目標を中心とした多元的な目標を追求できるのは、日本企業の取り巻く環境がより変化に富み、収益機会に富んでいるからでしょう。
同様に、多様な組織間関係のネットワークを形成していることから、株主利益を追求することは不可能かもしれません。日本企業が株主利益に拘束されないということは、次に説明する経営戦略の特徴にも反映されています。
企業の環境適応の鍵となるのは経営戦略です。この調査において経営戦略とは、「企業が保有する経営資源と環境との間にどのような対応パターンを生み出すかについて企業の方針あるいは志向をさすこと」です。
また、全社レベルの戦略とは、「企業全体のドメイン(事業活動の領域)の拡大や変更、事業分野間の資源配分や資源蓄積、企業全体の競争上の優位性の確立に関する戦略のこと」です。
ドメインの拡大や変更の戦略に関しては米国企業の方がより「国際化志向」が強いです。「シナジー志向」に関しては日米に有意差は認められません。
資源展開については、日米両国で大きな差が見られます。米国企業は買収・撤退を機動的に行い、資源の長期蓄積よりも、短期の資源配分の効率を高める戦略を取っています。
この特徴は米国企業が収益性を重視し、より敵対的で収益機会の乏しい環境に直面しているという事実とも対応しています。敵対的な環境のもとで収益性を高めるには、短期志向の機動的な資源展開を行わなければなりません。
さらに、米国企業がこのような戦略を可能にしている条件として、流動的な労働市場とより開放的な株式市場をあげることができます。労働市場を通じた労働力の調達と、株式市場を通じた事業の売買が機動的な戦略の採用を可能にしているのです。
株式市場における事業の売買は、短期収益を維持しながら環境の変化への対応を可能にしているとも言えます。事業の売買が比較的容易に行われる場合には、高いリスクをかけて社内で研究開発を行うよりも、既存会社の買収によって環境変化に対応する方が合理的となる場合が多いでしょう。
競争上の優位性の戦略に関しては、米国企業の方が、「対決型競争志向」が高いという結果が得られています。この結果は、米国企業の方が市場における競争がより敵対的であるとみなしているためであり、対決志向型の戦略がより敵対的な市場環境を作り出していると言えるでしょう。
日本企業は、むしろ、ニッチ(適所)を志向し、多様な次元で競争相手と差別化し、共存をはかろうとする志向が強いです。このような志向は弱者あるいはフォロワーにみられます。
戦略策定に関しては、日本企業の方が、より多様な情報を考慮して分析的な方法を用いて行っていることが分かります。日本企業が分析的な方法を重視するのは、戦略策定に多くの人が関与しているからかも知れません。
「社会的責任」に関しては日本の方が重視する度合いが高いですが、これは企業がより緊密な組織間関係ネットワークの中にいることを反映しているものと言えます。
ボストン・コンサルティング・グループやマッキンゼー社によって開発された製品市場ポートフォリオ分析において、日本企業はより多くの「負け犬」と「問題児」を抱えています。
逆に、米国企業はより多くの「花形事業」と「金のなる木」を保有しています。資金フローのバランスという観点からは、米国企業の方がより安定したポートフォリオを生み出しています。この事実は、米国企業が資源配分の機動性と短期的な投資効率を重視していることをはっきりと示しています。
事業レベルの戦略に関しては、過去5年間では日本企業は生産戦略を重視しており、米国企業は製品戦略を重視しています。なお、将来5年間については、日本企業も製品戦略を重視しています。
この調査ではウッドワードの技術スケールを用いて企業の生産技術の特徴を測定しました。ウッドワードのスケールは、個別受注生産、小ロット生産、大ロット生産、大量生産、装置生産の5つのタイプに分けられており、個別受注生産から装置生産への方向で技術の複雑性を測定するものです。
しかし、生産過程で発生する例外の頻度という視点からみた技術のルーティン性を測定するものと解した方が妥当です。つまり、装置生産が最もルーティン性が高く、個別受注生産が最もルーティン性が低いと言えます。
調査結果では、日本企業は個別受注生産、小ロット生産、大量生産の比率が高く、米国企業は大ロット生産、装置生産の比率が高くなっています。したがって、日本企業はルーティン性が低い生産技術であり、米国企業はルーティン性の高い生産技術であるということになります。
つまり、日本企業はより弾力的な生産過程でより多くの例外の発生に直面していると言えます。この事実は、日本企業の経営環境がより変化に富んでいるという特徴とも対応しています。
組織構造が米国の機械的組織と日本の有機的組織の違いにより、環境適応についても機械的適応と有機的適応の違いになっています。バーンズとストーカーやヘイグは、高度の公式化・集権化によって特徴づけられる組織を「機械的組織」、低度の公式化・集権化によって特徴づけられる組織を「有機的組織」と呼びました。
米国企業は機械的組織に近似しており、日本企業は有機的組織に近似しています。バーンズとストーカー、及びローレンスとローシュは、機械的組織は定常的な効率性の追求に敵し、有機的組織は変動的なタスクの処理に適していることを明らかにしています。
日本企業がより変動的な環境に直面し、ルーティン性の低い、より弾力的な生産技術を採用しているのに対し、米国企業はより競争的で変動の少ない環境に直面し、資源配分の効率を重視した戦略を採用しているのです。日本企業は変化への対応に適した組織を生み出しているということです。
組織構造を「公式化」「集権化」「管理システムの制度化」「横断関係の制度化」の4つの次元(概念的なものさし)と「財務部門の相対パワー」の測定によって、米国企業と日本企業との比較を行った結果、いずれについても有意差が認められました。
米国企業は日本企業に比べると、より公式化、集権化された組織構造を持ち、管理システム全般の制度化、並びに横断関係の制度化が進み、財務部門がより強い発言力を持つような構造を生み出しています。
「公式化」とは組織における規則・手続きの明確化とその遵守が強調されている程度を指し、「集権化」とは意思決定の権限が組織の上層部に集中されている程度を指します。
「管理システムの制度化」とは組織における計画・決定・統制のシステムの標準化の程度を指し、「横断関係の制度化」とは縦の権限階層と並行してそれを補完する制度であり、戦略的事業単位(SBU)、プロジェクト・マネジャー制、プロダクト・マネジャー制、マトリックス組織などが該当します。
「財務部門の相対パワー」は、マーケテイング、研究開発、製造などの現業部門の影響力に対する財務・会計部門の影響力の比率ですが、米国企業では財務部門の地位が第2位を占めているのに対し、日本企業では第5位と低い地位しか占めていないことが注目されます。
日本企業では製造部門が第2位を占めていますが、これは、米国企業の目標・戦略が収益を重視しているのに対し、日本企業は生産戦略を重視していることと整合しています。
次に、事業部制の組織構造についてですが、事業部制の採用・不採用、事業部の調整と統制のための組織構造の差異は環境や戦略の違いを反映しています。事業部制の構造的な特徴は、「事業部制採用率」「事業部制自己充足性(保有機能数)」「垂直的統合機構」「水平的統合機構」「事業部の細分化」「事業評価の詳細さ」「事業部への権限移譲」「業績―報酬関係」の8つの次元で測定しました。
事業部制採用率は日本企業は59.8%であるのに対し、米国企業は94,4%となっています。米国企業では事業部制を採用していない企業の方が例外的です。ウィリアムソンは事業部制の採用に伴って、企業は利潤極大化行動に近づくと主張しているが、米国企業の収益性重視の目標と短期志向の戦略は、高い事業部制採用率を説明する要因となるかもしれません。
次に注目されるのは、米国企業が事業部の細分化を進め、事業部の調整と統制のための垂直的統合機構(事業グループ重役など)を生み出していることです。米国企業の方がより多様性の高い環境に直面していることと、統制範囲の原則から事業部数の増大に対して新たな管理層が必要になることの2点から納得できる結果です。
米国企業と比較すると、日本企業の事業部の自己充足性は低く、事業部の業績評価はより簡単で、事業部の業績と責任者の報酬との関係も弱いことが注目されます。事業部の本来の特徴は、事業部の自己充足性を高め、業績評価と責任者の報酬を結合させることによって、最高度に活かされるのです。日本企業では事業部制を本来の形からかなり修正して採用していると言えます。
組織内の意思決定の様式、経営者・管理者のリーダーシップ行動、コミュニケーションやコントロールの方法など、組織における相互作用や行動のパターンを示す変数は組織過程と呼ばれます。この調査では、リーダーシップ、コンフリクト解消、コントロール、意思決定、コミュニケーションについて日米比較を行いました。
リーダーシップ行動については、「配慮行動」「タスク行動」「情報行動」「価値注入行動」の4つの次元で調査しました。
「配慮行動」はリーダーと部下との相互信頼、尊重を生み出す行動であり、「タスク行動」は組織目標を達成するためにタスクを割り当て、計画を立て、仕事の方法を指示する行動です。「情報行動」は経営者の情報収集・伝達行動の積極性を指し、「価値注入行動」は一定の価値や理念を戦略や組織の中に体現させる行動を指します。
リーダーシップに関して日米の有意差があるのは、「情報行動」の側面であり、日本の経営者の方が情報ルートの開拓、情報要求の明示、情報収集などの行動をより多くとっています。
この事実は、日本の企業においては組織の公式化・制度化が遅れており、様々な階層の人々が意思決定に影響を及ぼしているという組織構造上の特徴と対応しています。経営者自らの情報収集活動が公式化の不十分さを補い、多くの人々の意見を意思決定に反映させるという効果をもたらしていると言えます。
コンフリクト解消方法には、「強権」「根回し」「妥協」「問題直視」の4つの方法がありますが、日米間でかなりの差が見られます。「強権」は日米双方で良く用いられ、速やかなコンフリクト解消に適した方法です。これに対して、たとえ時間がかかっても、当事者の対立した意見の解消が必要な場合には、米国では「問題直視」が良く用いられ、日本では「根回し」が良く用いられます。
もう1つ注目されるのは、日本企業はコンフリクト解消方法のすべてをより多く用いていることです。この事実は、日本の組織の中では様々なコンフリクト解消法を用いなければならないような、多様なコンフリクトが発生していることを暗示しています。このことも、日本の組織は公式化・制度化の程度が低いことと無関係ではないでしょう。
コントロールは、成員の行動を組織目標に同調させるために行うのですが、「自律的コントロール」「アウトプット・コントロール」「価値と情報の共有によるコントロール」の3つの次元で調査しました。
「自律的コントロール」は規則や監視ではなく、成員の自律性と仕事への関心によってコントロールを行うものであり、「アウトプット・コントロール」は業績に基づいてコントロールを行うものです。「価値と情報の共有によるコントロール」は頻繁なコミュニケーションによる情報と価値の共有を通じて行うコントロールです。
日本では、「価値と情報の共有によるコントロール」と「自律性によるコントロール」が多く用いられるのに対し、米国では、「アウトプット・コントロール」と「自律性によるコントロール」が多く用いられます。
有機的構造を持つ日本企業が、「価値と情報の共有」を重視し、機械的構造を持つ米国企業が「アウトプット」を重視するのは理解できますが、「自律的コントロール」は米国の方が高いのです。それは、日本の経営組織では自律性が重視されるが、その反面、成員の行動は厳しく管理されているからです。
米国企業が「アウトプット・コントロール」を重視するのは、事業部制の採用率が高く、事業部の業績と責任者の報酬との結びつきが強いことと、流動的な労働市場、短期効率重視という米国企業を取り巻く環境や戦略とも適合しています。
意思決定スタイルは、意思決定にあたって集団の調和が重視される程度を指す「集団的意思決定」により測定されました。意思決定の集団志向性に関しては日米間で顕著な差が見られます。
日本では集団の合意に基づいた意思決定が尊重されるのに対し、米国では個人のイニシアティブが尊重されます。
集団的意思決定は、日本人の集団志向を反映したものと考えられるかもしれませんが、有機的組織の特徴でもあることを忘れてはなりません。有機的組織では意思決定に必要な情報は組織内に分散しているため、質の高い意思決定を行うためには、集団志向の意思決定を行わなければならないのです。
コミュニケーションの様式は、伝達が非公式的に行われる程度を指す「コミュニケーションの非公式性」について調査しました。また、人事に関しては、人事制度がどの程度まで公式化されているかを示す「人事の公式化」、内部昇進の頻度を測定する「内部昇進」、それに「変化志向的組織風土」と会社への「同一化」の4つの次元で調査しました。
「コミュニケーションの非公式性」、及び会社への「同一化」に関しては日米間で顕著な差は見られません。これらは日本の組織の特徴と言われてきたものですが、この調査対象である会社の上層部では、会社への同一化、職場内のインフォーマルな接触という点に関しては日米間で決定的な差はないのかもしれません。
「変化志向的組織風土」に関しては日米間で顕著な差があります。日本の組織の方が変化許容力が高いです。一般に有機的組織は変化への適応という点に関しては優れていることが分かっていますが、この事実は予測とも合っているし、日本企業がより変動性の高い環境に直面していることとも合っています。
「内部昇進」については日米間で有意差が見られます。多くの人の印象どおり、日本の方が内部昇進とそのための計画的ジョブ・ローテーションによる人材開発を重視しています。
「人事の公式化」については日米間でほとんど差がありません。組織全体の制度化については、既に指摘したように米国企業の方がより高くなっていますが、人事に関しては例外でしょう。
経営者の個人属性については、次の6次元について調査しました。「ジェネラリスト」は個々の分野における深い知識よりも、会社全般についての知識や多様な情報を統合する能力が要求される程度を指します。「価値主導性」は強固な理念や会社への忠誠心が要求される程度を指します。「対人関係能力」は社内外の人間や集団との良好な関係を維持する能力が要求される程度を指します。
「革新イニシアティブ」は新しいアイデアを受け入れ、それを実現するためにリスクに挑戦するという志向が要求される程度を指します。「計画・統率力」は人々をリードし、計画するという一般的なリーダーシップの能力が要求される程度を指します。「実績・経験」は過去の実績や経験が重視される程度を指します。
調査した結果、日本では、「ジェネラリスト」と「対人関係能力」がより重視されるのに対し、米国では「価値主導性」「革新イニシアティブ」「実績・経験」が日本よりも重視されています。この事実は、これまでの事実と一貫しています。
つまり、より機械的な構造を生み出している米国企業は、より専門的な能力を重視し、機械的な構造に欠けている環境変化への適応力を補充するために、トップの革新へのイニシアティブを重視しているのです。パワーが上層部へ集中している機械的な構造の基では、トップ・マネジメントのみが組織の適応のためのアクションを取り得るのです。
これに対して、日本企業においては、経営者は対人関係能力を通じて、様々な組織成員の意志や感情に働きかけ、それを通じて有機的組織が持つ変化対応能力を促進しようとしていると言えます。
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