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開発&コンサルティング

4-2 経営の骨組みの再構築を行う目的と基本的なステップ

第4章は業務改革の説明になりますので、まず、業務改革を通じて経営の骨組みの再構築を行う目的(理由)について説明いたします。

経営の骨組みとは、経営を行うのに必要な基本的な仕組みであって、経営理念、経営戦略、事業領域、中期経営計画、経営組織、人事制度などを言います。これらを見直し、再構築することで、間違いのない業務改革ができるわけです。骨組みがしっかりできていれば、肉付けは各社の状況に応じて行えば良いのです。

1.中期経営計画を達成できるようにするため

多くの企業では、業務改革は業務発生の源となる中期経営計画の達成を目的に行う場合が多いです。しかし、その中期経営計画が何の根拠もなく立案されているのです。これでは、業務改革を実施しても中期経営計画の達成はできません。

では、そもそも、中期経営計画を達成する目的は何でしょうか。それは、前回説明しましたように、経営環境の変化に対応するためです。このために、経営戦略を策定して中期経営計画を立案したのです。したがって、経営戦略を実行するためでもあります。なぜなら、経営戦略を実行するための計画が中期経営計画だからです。

しかし、経営戦略や事業領域を見直すだけではダメです。中期経営計画を達成するためには、経営組織、人事制度などを見直しする必要があるのです。なぜなら、中期経営計画がどのような根拠で立案されているかだけでなく、中期経営計画を実施するためにどのような経営組織や人事制度が必要かを明確にする必要があるからです。

また、多くの企業では中期経営計画そのものを見直しする必要もあります。中期経営計画があまりにも理想的で企業の実態とかけ離れている場合があるからです。要するに、中期経営計画が絵に描いた餅なのです。このような形だけの中期経営計画では業務改革が実施できません。

その理由の1つとして、経営資源が不足している場合があります。つまり、人材がいないとか、資金がないとか、技術がないとかがあります。

しかし、多くの企業では経営の骨組みがきちんと構築されていないのがその主な理由です。経営戦略や事業領域(ドメイン)さえ明確にしていない企業もあるのです。あるいは、これらを明確にしていても、経営環境の分析に基づいて経営戦略や事業領域を設定してない企業もよくあるのです。つまり、中期経営計画の根拠がないのです。

本来、経営戦略や事業領域(ドメイン)は経営環境の変化に応じて変えなければならないのですが、ほとんどの企業では経営環境の変化に対応できていません。なぜなら、定期的に経営環境の分析を行っていないためです。

経営環境は常に変化しているわけですから、経営環境の分析を定期的に行い、経営環境の変化に対応した経営戦略、事業領域、中期経営計画、経営組織、人事制度などを構築し、それらを基に経営を行う必要があるのです。

よって、経営の骨組みの見直しを行って、再構築する必要があるのです。そこで、業務改革を通じて経営の骨組みの再構築を行うのです。

2.ムダな業務を指示命令しないようにするため

経営の骨組みの再構築を行うもう1つの目的は、間違った意思決定によってムダな業務を指示命令したり、ムダな業務を実施したりしないようにするためです。経営環境が変化しているにもかかわらず、従来の経営の骨組みのままであれば、当然、間違った意思決定を行ったり、間違った業務を指示命令してしまったりするからです。

また、業務効率化の説明で既にお分かりのように、業務の目的や機能を考えないために、ムダな業務を指示したり実施したりしてしまうのです。そこで、新規業務や新規事業を企画・設計する場合にも、業務の目的と機能を明確にして設計しなければなりません。そうしなければ、また、ムダな業務を指示したり、実施したりすることになるからです。

多くの企業では新規業務や新規事業を企画・設計する場合に、経営戦略や中期経営計画に基づくのではなく、担当者の経験や希望に基づき企画・設計しています。つまり、自分がこれまで実施した経験に基づく新規事業や実施してみたい新規事業を企画・設計するのです。したがって、どうしてもムダな業務が入り込んでしまうわけです。

そこで、新規業務や新規事業の企画・設計を行う場合には、経験に基づくのではなく、経営戦略や中期経営計画と各業務の目的と機能との整合性を確認して企画・設計するようにします。

つまり、経営戦略の実行計画である中期経営計画に沿っているかどうか、あるいは、新規業務や新規事業の目的と機能が経営戦略や中期経営計画の内容と一致しているかを確認する必要があります。

3.イノベーションを実施できるようにするため

経営の骨組みを再構築する最も重要な目的は、イノベーションを実施できるようにするためです。昨今では、世界的な競争が激しいため、企業はイノベーションを実施しなければ競争に勝てなくなっています。そのため、各国の企業はこぞってイノベーションに取り組んでいます。

しかし、日本の企業は、従来から集団主義により、個人の考え方や価値観を重視しないため、イノベーションが実施ができないような仕組み(経営の骨組み)になっているのです。

つまり、合議制(多数決)によって経営戦略を策定し、みんなで経営戦略を実行するのです。このため、経営者がリスクを冒してイノベーションを実施しようとしても反対する人が多く、イノベーションが実施できないのです。

また、イノベーションが実施できるような組織や人事制度になっていません。そこで、イノベーションを実施できるようにするために経営の骨組みを変えなければならないわけです。

そもそも日本の企業は、イノベーションが得意ではありません。イノベーションが必要な今日でさえ、従来の得意な技術を生かして世界的な競争に勝とうとしているのです。つまり、製品の品質向上、コスト削減、生産の効率向上などの技術を活かせば競争に勝てると信じています。

しかし、それらは既に時代遅れです。このような技術はいつの時代でも必要ではありますが、世界はイノベーションの競争になっているのです。

日本が製品の品質向上、コスト削減、生産の効率向上などに取り組んでいる間に、世界では画期的な新製品を開発したり、新規事業に取り組んだりして、従来の製品や事業を不要にしてしまうのです。つまり、日本はムダな取り組みを行っていることになるのです。

ちなみに、P.F.ドラッカーも、「イノベーションと企業家精神にとっての障害は、既存の事業であり、特に成功している事業である」と書いています。いつまでも得意な技術にしがみついていると、足をすくわれることになります。

4.経営の骨組みを見直しする基本的なステップ

さて、経営の骨組みを見直しする基本的なステップは通常、

経営理念の見直し⇒経営環境の分析⇒経営戦略の見直し⇒事業領域(ドメイン)の見直し⇒中期経営計画の見直し⇒組織構造の再編成⇒人事制度の見直し、となります。

高度経済成長時代は、経営環境の分析⇒中期経営計画の見直し、だけでした。経営環境が変化しても経営の骨組みまで変更する必要があまりなかったからです。例えば、経営戦略よりもむしろ長期経営計画(5年から10年の計画)が重視されていました。

しかし、昨今では、インターネットの普及によってグローバル化が進展し、経営環境が大きく変化するようになったために、経営戦略や事業領域の見直しが重要になったのです。

例えば、「事業の選択と集中」や「新規事業の開発」は事業領域を変更する戦略です。よって、経営環境が大きく変わる場合には、経営戦略によって事業領域の再構築、すなわちリストラ(Business Restructure:事業の再構築)を行います。リストラは人員削減のことではありません。

さて、経営の骨組みの見直しは、まず、企業の大黒柱とも言うべき経営理念を見直すことから始めます。なぜなら、経営者が変って経営理念が変っているにもかかわらず、以前の経営者が設定した経営理念をそのままにしている企業が多いからです。創業数百年の老舗企業の中にも創業時のままという企業もあります。

次に企業を取り巻く経営環境を分析し、経営環境の変化に対応するために経営戦略を策定します。そして、経営戦略によって、事業領域を見直し・再設定します。事業領域とは、文字どおり事業を行う領域で、戦う領域です。戦って勝つ領域を設定するのです。戦っても勝ちそうもない領域では初めから戦わないのです。

よって、事業領域は経営環境の変化により変える必要があります。つまり、事業の縮小(選択と集中)や新規事業の開発が必要になるのです。経営環境が変化しているのに事業領域を変えない企業は次第に衰退し、いずれは倒産してしまいます。

事業領域が決まれば、次に中期経営計画を立案します。中期経営計画は事業領域の中で経営戦略を実行するための計画です。そして次に、中期経営計画を実施する経営組織を編成します。経営組織とは、分かりやすく言えば、仕事と人の役割分担を明確にしたものです。中期経営計画を実施できるような経営組織になっていなければなりません。

ところで、業務改革はあくまで業務が対象ですので、通常は経営戦略や経営組織は所与のものとみなします。仮に、組織を対象に改革するのであれば、それは業務改革ではなく組織改革となります。しかし、業務改革の結果、組織が変更されることは良くあることで、それは限定的であり、また、結果としてそうなったに過ぎません。

しかしながら、本書では業務改革を通じてイノベーションを実施できるように、経営戦略、事業領域、経営組織、人事制度などを見直しする方法を説明したいと思います。

さて、業務改革活動は、通常、業務効率化活動と平行して実施するか、または業務効率化活動に先行して実施します。なぜなら、経営の骨組みの見直しが終わらないうちに、業務効率化活動を行うと、しだいに業務を廃止・削減していきますので、途中でやるべき仕事がなくなったり、時間が余ったりするので新たにムダな仕事を作り出してしまうからです。

経営の骨組みの見直しが終了し、明確な根拠によって中期経営計画がきちんと立案されていれば、経営環境の変化に対応した新規業務や新規事業が中期経営計画に盛り込まれているはずです。

したがって、業務効率化によって余った人や時間を、順次、業務の再編成を行いつつ、人員の再配置(人事異動)により新規業務や新規事業にシフトしていくことができるわけです。こうすれば、業務改革の目的である中期経営計画の達成が確実にできるわけです。

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