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開発&コンサルティング

4-14 組織の動態化

環境の変化に対応できるように、機械的な組織を有機的な組織に変更するのが動態化です。別の言い方をすれば、硬直化した組織を柔軟な組織にすることです。つまり、環境の変化に対応して、変化する組織にするのです。基本的には、プロジェクト組織、マトリックス組織、社内ベンチャー、分社化などがあります。また、外部組織との連携によるネットワーク組織も動態化と考えられます。

1.プロジェクト組織における留意点

<プロジェクト組織とは>

プロジェクト組織は、各部門共通の短期的な課題を解決するために作られる組織です。各部門から専門家(プロジェクトメンバー)を集めて、臨時的に編成されます。この組織は、また、機能別組織の短所である、会社全体の利益より部門の利益を優先してしまうセクショナリズムとか、部門間のコミュニケーションがスムーズにできないといったことを解消するために生まれた組織の1つです。

つまり、縦割りの組織に横串を入れてしまおうということです。プロジェクト組織で解決した課題を実行するのは縦割りの組織ですので、縦と横の組織が有機的に結びつくことになります。

<留意点>

  1. プロジェクト・リーダーに有能な人を選ばないと、各部門から集めた専門家の集団を管理できない。
  2. プロジェクト・リーダーに大幅な権限を与えないと部門共通の課題が解決できない。
  3. メンバーを出した部門では有能な人材を取られることになるので部門の能力が低下する。
  4. プロジェクトが終了した時にメンバーの配置や処遇に留意しないと今後のプロジェクト運営に支障をきたす。具体的には、(1)元の組織に戻る場合には昇進させる、(2)課題を実行するための新しい組織を作る場合にはそのメンバーにする、などがあります。

2.マトリックス組織における留意点

<マトリックス組織とは>

部門間にまたがる課題が多くなり、また、長期的な課題となった場合に編成されるのがマトリックス組織です。つまり、プロジェクト組織を発展させたのがマトリックス組織だと言っても良いでしょう。分かりやすく言えば、従来の縦割り組織に横串を何本も通したような組織形態です。これは臨時的な組織ではないので、縦割り組織と横割り組織が組み合わせられている組織です。

したがって、複数の課題の解決とその実行が機動的にできるというメリットがありますが、逆に組織の原則である、命令系統の一元化が崩れることになります。つまり、部下は2人の上司(ツーボス)から指示・命令を受けることになり混乱を招きます。また、これによって労働意欲を喪失してしまう場合があります。

<留意点>

  1. 縦割り組織の管理者と横割り組織の管理者との権限を明確にしておく。
  2. 両管理者がコミュニケーションをしっかりと取って、指示・命令に矛盾のないようにする。
  3. 両管理者が協議することを要求する権利を部下に与えておく。

3.社内ベンチャーにおける留意点

<社内ベンチャーとは>

社内ベンチャーは革新的な新規事業を社内で立ち上げ、養成するための組織です。新規事業は生まれたばかりの事業なので、社内でしっかりと育ててあげないといけないわけです。いきなり世間の冷たい風に当てて死なしてしまってはならないというわけです。ところで、ベンチャーとは、企業家によって遂行される企業、または組織のことです。

既に説明しましたように、企業家とは経済学者シュンペーターによれば革新者(新結合遂行者)のことです。したがって、革新(イノベーション)を行なう企業家が遂行する組織をベンチャーと言います。つまり、単なる新事業ではなく、革新的な新事業でなければベンチャーとは言わないのです。

このような革新的な新事業を遂行するのは容易ではありません。そこで、会社がいろいろと面倒を見て社内で育てようというわけです。よって、新事業が育つだけでなく経営者の育成もできます。

<留意点>

  1. 養成する価値がある事業かどうかの目利きが必要です。
  2. 企業家=経営者ではないので、経営能力の養成が必要です。
  3. 失敗した場合の企業家(リーダー)やメンバーの処遇をきちんと決めておく必要があります。

4.分社化における留意点

<分社化とは>

既存の事業部門や新規事業を独立採算の別会社として分離することを分社化(スピンオフ)と言います。新規事業を立ち上げる時に最初から親離れさせて分社化する場合もあれば、ある程度育ててから分社化する場合もあります。また、既存の不採算事業を立て直すために分社化する場合もあります。

例えて言えば、親のすねを期待している息子や既に親のすねかじりをしている息子を親離れさせて自活させるようなものです。自分の食い扶持は自分で稼げというわけです。

あるいは、既存の事業とは全く異質の事業を行なう場合に別会社する場合もあります。例えば、機械メーカーがうなぎの養殖をするとか、従業員の福利厚生事業を別会社にするとかです。つまり、事業間の相乗効果(シナジー)がほとんどない場合や営利目的ではない事業の場合などです。また、すべての事業を分社化して企業グループを編成するのが全面分社化です。この場合は、親会社が持ち株会社となります。

<留意点>

  1. 分社化する時期の見極めが重要です。通常は新規事業部、あるいは社内ベンチャーとしてある程度育ててから分社化しますので、分社化する時期は独り立ちできるかどうかによって決めます。要するに、親離れの時期が重要です。
  2. 分社化した後も倒産しないように、また、甘えさせないように見守る必要があります。
  3. 分社化した後に事業がどうしてもうまくいかない場合、撤退させる時期を見極める必要があります。早すぎて機会損失となってしまう場合もあれば、遅すぎて事業の損失が大きくなってしまう場合もあります。

5.ネットワーク組織における留意点

<ネットワーク組織とは>

法的に、あるいは資本的に独立した複数の組織が経営資源を補完し合い、また、活用し合うことによって連携する組織をネットワーク組織と言います。形態としては、縦の連携と横の連携とがあります。縦の連携には生産系列や販売系列、フランチャイズチェーンなどがあり、横の連携には技術提携や共同開発、共同仕入、共同販売、ボランタリーチェーンなどがあります。

また、戦略的連携のように、コア・コンピタンス(中核能力)などの重要な経営資源を共有して強い連携のもとに生き残りを図る場合もあります。これは法的や資本的に、合併したり買収したりするのを避ける場合に採用される連携です。

<留意点>

  1. 縦の連携の場合は、通常、資本が大きい企業(親企業)が中心となって系列を作りますので、どうしても親企業の力が大きく、親企業の言いなりになってしまう場合が多いです。そこで、そうならないように、契約事項をしっかりと確認してから連携するかどうかを決める必要があります。
  2. また、縦の連携の場合は、一旦連携の契約をすると、多くの場合、企業秘密を共有することになるので、契約を解除するのが難しくなります。よって、どこまで企業秘密を共有するかをよく検討してから連携を決める必要があります。
  3. 横の連携の場合には、お互いに対等の関係ですので、連携のメリットがなくなればいつでも連携を解除することができます。
  4. 戦略的連携の場合には、お互いに強く結びついているので、人間の関係で言えば、愛人のようなものです。法的や資本的に合併や買収を行っていないので、夫婦ではないわけです。
  5. 生き残るために、お互いに相手の経営資源が必要なうちは連携を継続しますが、必要なくなった場合には、連携を解除することになります。

さて、組織の動態化の度合いによって、企業の将来が決まると言っても過言ではないと思います。例えば、各部門共通の課題解決のためのプロジェクトチーム、製品開発や事業開発のプロジェクトチームなどがいくつあるか、あるいは新事業を遂行する社内ベンチャーをいくつ立ち上げているかなどによって、企業が将来、成長・発展するかが分かるわけです。

なぜなら、各部門共通の課題を解決したり、将来の収益源が多いほど、企業は成長・発展するからです。 しかし、組織の動態化を進めるには経営資源が必要なので、結局、既存事業がうまく行っていないと複数のプロジェクトや社内ベンチャーを立ち上げるのは難しいのです。

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