経営計画に盛り込まれている新製品・新サービス開発計画、新事業開発計画などを基に業務設計を行います。経営計画は会社全体の大まかな計画ですので、経営計画を実施する各部門の業務レベルまでブレイクダウンして業務設計を行うのです。
業務設計とは、目的と機能の関係で経営計画をブレイクダウンして、大分類業務、中分類業務を立案することです。経営計画の内容によっては、さらに小分類業務まで立案します。つまり、新規業務の業務体系を作成することです。
業務設計はこれまで行ったことがない新規業務を立案するので、プロジェクト活動として行うのが良いと思います。なぜなら、どの部門で実施するかがまだ決まっていないからです。また、どの部門で実施するのが良いかも業務設計を行ってみないと分からない場合があるからです。
経営計画を基に部門の業務として大分類業務、中分類業務を立案するわけですが、立案しやすくするために仮の部門を設置して業務設計を行います。例えば、◯◯製品開発部、◯◯事業開発部などとします。
業務設計が終了した段階で、どの業務をどの部門で実施するかを決めますが、実施する部門がなければ新たに正式な部門として設置します。
ところで、業務効率化の場合には、既存業務について見直しを行い、無用業務、過剰業務、重複業務などのムダな業務を発見して廃止・削減します。よって、もし、不足業務が発見できなかったとしてもそれほど問題にはなりません。
しかし、業務改革の場合には新規業務について業務設計を行うので、不足業務が生じないように注意します。このため、業務の目的と機能の関係をしっかりと確認しながらブレイクダウンします。
不足業務が生じないようにするには、業務の実施事項がすべてそろっていて、業務機能が業務目的を果たせるようになっていなければなりません。特に、多くの企業で不足するのが、上位の目的に対して、下位の機能が、業務の計画(プラン)、業務の実施(ドゥ)、業務の確認(チェック)、業務の対策(アクション)となっていないことです。
多くの企業では、業務設計を行う場合、計画(プラン)と実施(ドゥ)についてだけを立案する傾向があります。そのために、確認(チェック)や対策(アクション)がなされないまま業務が進められ、問題が生じてもそのままになったり、あるいは問題が生じて初めて確認や対策を行っているのです。
したがって、実施した業務の確認(チェック)、及び対策(アクション)についても部門の業務として立案しておきます。つまり、業務分掌(業務体系、業務分類)を作成する時に、業務の計画と実施だけでなく、確認と対策も設定しておくのです。確認や対策は、中分類業務、あるいは小分類業務として設定しておけば良いと思います。
以上の点に注意しながら、新製品開発や新事業開発などに必要な業務を上位から下位に向かって順にブレイクダウンして行くと、過不足のない業務体系が出来上がります。
以上によって、経営戦略⇒中期経営計画⇒経営計画⇒大分類業務⇒中分類業務⇒小分類業務⇒個別業務(職務)とすべてがツリー状につながり、体系的に整理でき、業務に過不足がないことが確認できます。
なお、「2-7 業務管理について」でも説明しましたように、業務の管理をきちんと行わなければ、経営計画が計画通り実施できません。このためにも、業務実施の担当者に管理を任せるのではなく、実施した業務の確認(チェック)、及び対策(アクション)を部門管理者が行うようにします。
これによって、業務に問題が生じたとしても、確認、及び対策を必ず行うので経営計画が確実に実施できるようになります。その結果、経営戦略どおりに経営計画が実行できるのです。
業務効率化活動によって、現状の業務を見直し、無用、過剰、重複などのムダな業務を廃止・削減しました。その結果、残った業務、すなわち今後も引き続き行う業務と、業務改革によって新たに計画された業務を合体するのが業務の再編成です。よって、業務分掌を修正することになります。
新たに計画された業務は、通常、3種類あります。(1)現在行っている業務であるが、今後強化すべき業務、(2)過去に計画されてはいたが実際には行っていなかったので再度計画した業務、(3)新たに設計した業務、です。
業務の再編成は、まず、これら3種類の業務について改めて業務分類の確認を行います。つまり、合体する準備として、大分類業務、中分類業務、小分類業務の目的と機能の関係を確認したり、業務分類の名称を統一したりするのです。
と言うのも、今後強化する業務については、強化する部分を中分類業務、小分類業務として立案していない場合があるからです。また、新たに設計した業務については業務名称を全社統一していない場合があるからです。なお、過去に計画されていた業務については、業務効率化活動の際に業務名称を全社統一しているはずですが、再確認しておきます。
以上の準備を行ってから、業務の再編成(合体)を行いますが、このときに、大分類業務、中分類業務のレベルを合わせる必要があります。目的と機能の関係で立案してあればそのまま合体できるのですが、実際には、多くの企業ではきちんと目的と機能の関係になっていないため合体できないのです。
実際に、筆者がコンサルティングを実施した数十社の一部上場企業では、業務分掌が体系的に整理されていませんでした。つまり、目的と機能の関係で作られていませんでした。
例えば、業務量が多い業務を大分類業務、それほど多くない業務を中分類業務、少ないのを小分類業務としたり、重要な業務を大分類業務、それほど重要でない業務を中分類業務としたりしているのです。
中にはアウトプットする書類(ファイル)を基準に業務を分類している企業さえありました。これでは、業務分類ではなく、書類(ファイル)分類になってしまいます。
また、必ずと言ってよいほど、業務分類項目の最後に、「その他の業務」とか、「その他命じられた業務」というのがありました。日本では人を先に決めて、後からその人に適した業務を決めるため、このようになってしまうわけです。これでは、業務分掌(業務の役割分担)ではなく、人の役割分担になってしまいます。
また、既に書きましたが、経営計画とは無関係に場当たり的に業務を指示するのでムダな業務が発生してしまうわけです。欧米のように経営計画を実行するための業務を決めて、その業務に適した人を後から決めればムダな業務は発生しないのです。また、このようにすれば経営計画が計画通り実施できるわけです。
業務計画とは業務の実施計画であって、どの業務をいつまでに実施するかを計画・立案することです。要するに、業務の実施スケジュールを立案することです。
業務計画を立案するためには、ある程度、業務内容が明確になっていなければなりません。そこで、業務内容を検討しながら業務計画を立案します。よって、業務の再編成を行った後に、業務計画を立案します。
しかし、その際に、経営計画とは無関係に、自部門の考え方や都合で業務計画を立案してしまう企業が多いようです。しかし、これは絶対に行ってはいけません。なぜなら、これでは経営計画を実施するための業務計画にならないからです。
多くの企業でこうなってしまうのは、経営計画に反対する部門管理者や経営計画を当初から無視する部門管理者がいるからです。要するに、部門管理者と経営者との間に軋轢(あつれき)が存在し、部門管理者が経営計画どおりに業務を行わないのです。
実際に、一部上場のクライアント企業で部課長たちに聞いてみると、「経営計画は、一応、内容確認をするが、確認して終わりです。2、3か月すれば忘れます」と言う人が大勢いました。
また、本来は自部門で実施すべき業務であっても実施したくない業務、他部門で実施すべき業務であっても自部門で実施したい業務などがあります。また、自部門の利害を優先してしまい、自部門の考え方や価値観、あるいは自部門の業務実態を優先して業務計画を立案するのです。その結果、経営計画を実施するための業務計画にならないのです。
実際に、業務効率化活動を行ってみると、(1)他部門へ移管すべき業務、(2)本来は実施すべきだがどの部門でも実施していない業務、(3)複数の部門で重複して実施している業務などが多く見つかります。
また、各部門には手放したい人や手放したくない人がいるのです。この原因の1つは、人を先に決め、業務を後から決めるからです。そこで、必ず、経営計画を実施するための業務計画を立案してから、業務の実施部門を決め、そして最後に業務を実施する担当者を決めるようにします。つまり、業務計画の立案⇒実施部門⇒実施担当者の順に決めるのです。
業務の実施部門にその業務を実施できる人がいなければ、他部門から異動してもらうか、それとも新たに採用します。
業務計画は、あくまで、経営戦略⇒中期経営計画⇒経営計画⇒業務計画と順にブレイクダウンしてきたものでなければならず、単に、従来の業務計画を基に部門の都合で計画を修正・追加したものであってはならないのです。
そこで、このことを確実に行うために、部課長会議を開いて業務計画を立案するか、それともプロジェクト活動によって立案します。なお、大分類業務の業務計画だけを部課長会議で立案し、同時にその実施部門を決め、その後に、実施部門で中分類業務や小分類業務の業務計画を立案するという方法もあります。
さて、業務計画を立案する場合、どこまで、ブレイクダウンするのかと言いますと、個別業務までです。つまり、1人ひとりの仕事(職務)が設定できるまでブレイクダウンします。別の言い方をすれば、その業務に何人の人が必要かが分かるまでブレイクダウンします。要するに、要員計画が立案できるまでです。
なお、再確認ですが、大分類業務、中分類業務、小分類業務、個別業務というのは各部門で行う業務のことであり、このうち従業員1人ひとりが行う業務を個別業務と言います。また、個別業務のことを職務とも言います。1人ひとりが行なう仕事が職務です。
また、職務の組織上の位置づけを職位と言います。例えば、課長、係長などが職位です。したがって、課長の職務、係長の職務、◯◯担当者の職務などと言います。
老婆心ながら、課長や係長は職位であって、人ではありません。つまり、課長=誰々さんではありません。その時に、たまたま◯◯さんが課長の職務を担当しているのです。また、課長や係長の職務を誰が担当するかは職務が決まった後で決めます。
業務計画は個別業務単位(職務単位)まで業務をブレイクダウンして職務ごとのスケジュールを決めれば終了です。
業務計画の立案が終了しましたら、次に業務要件(業務条件)の設定を行います。特に重要な制約条件の設定を最初に行います。なお、業務要件の設定についての詳細は、「2-4 業務要件(条件)の明確化」をご覧ください。
従来行ったことがない新しい業務に取り組む場合には、必ず制約条件の確認・設定を行ないます。
業務機能条件、業務利用条件についても、本来は業務を実施する前に設定した方が良いのですが、実際には業務を実施してみないと分からないことが多いので、業務を実施しながら設定します。
さて、制約条件というのは、既に説明しましたが、法規制、業界規制、社会経済規制、会社方針などです。制約条件の確認・設定は会社全体に関わることなので非常に重要です。よって、業務設計が終了した段階で、つまり、業務計画を立案する前に制約条件の確認・設定を行う企業がありますが、この方法だとどうしても漏れが生じてしまいます。
なぜなら、業務内容がある程度明確でなければ業務計画を立案できないので、業務計画を立案してみなければ制約条件が分からない場合が多いからです。例えば、業務内容が明確でなければ会社方針は決められないのです。よって、業務計画を立案した後に制約条件の確認・設定を行います。
場合によっては、業務を実施するときになって初めて、法規制があることが分かり、それに伴い、急きょ、会社方針を決めなければならない場合もあります。
法規制には、民法、商法、会社法、労働3法などに関する基本的なものに加えて、独占禁止法、不正競争防止法、景品表示法、製造物責任法、消費者保護法、知的財産権法、著作権法、廃棄物処理法、リサイクル法などがあり、特にこれらが重要です。たくさんありますが、法規制には特に注意し、業務が法に抵触しないようにします。
業界規制は、業界標準、業界規約、業界の参入障壁、業界内でのグループ間の移動障壁などです。社会経済規制は、物流や商流などの流通上の制約、顧客ニーズの多様化・高度化・低価格化などのマーケット上の制約、環境保護や地域住民への配慮などです。
これらの規制は、数え上げればきりがないほど多いので、業務計画を立案した後に確認するだけでなく、業務を実施する際にも確認する必要があります。きりがないほど多いのですが、確認したうえで、こういった規制を規制として捕らえるのではなく、むしろ克服課題と捕らえた方が良いのです。
例えば、曖昧で未熟な法律は、企業が政府に対して見直しを要求することもできますし、業界規制も社会経済規制も積極的に変革を推進して、より良い経済社会を作るように企業が努力することが重要です。こうした考え方で、各種規制を把握した上で会社方針を設定すべきなのです。
むしろ、会社方針は規制を克服したり、撤廃したりするためにあるのです。例えば、製造物責任法や消費者保護法などは、常に企業が消費者のために事業を行っていれば本来必要のないものです。
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