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開発&コンサルティング

3-8 内部管理業務の廃止・削減事例

1.ムダな業務「出張旅費精算」をわざわざシステム化した愚かな企業の事例

これまで何度も、「出張旅費精算」がムダな業務であることを書きましたが、多くの企業で未だにこのムダな業務を行っているので、改めて実際の事例を書くことにします。

なぜなら、「出張旅費精算」を行っている企業は多くの損失をしているだけでなく、従業員を信用していない証拠だからです。よって、もし、読者が勤務する会社が「出張旅費精算」を行っているとしたら、「我が社は従業員を信用していない会社だ」と思って下さい。また、この業務を行っている企業は、その他のチェック業務も非常に多く、確実に衰退する企業なので、転職をお勧めします。

さて、ある一部上場企業が、ムダな業務の典型である「出張旅費清算」をわざわざ時間と金をかけてシステム化し、それによって業務効率化ができたことを自慢げに話すのを聞きました。

まず、この業務にかかっている業務コストを計算すると、1件当たり平均で3,400円になっていることを突き止めたそうです。さすがに一部上場企業です。ほとんどの企業は、この業務コストを計算することさえできないでしょう。

そして、この業務をシステム化し運用することによって、1件当たり1,600円にまでコスト削減できたそうです。システム構築のために投資した金額は約1千万円だそうです。

業務コストが1件当たり3,400円マイナス1,600円ですから1,800円のコスト削減になった。全社で出張旅費清算が年間1万件ぐらいだから、1,800万円のコスト削減になり、投資金額1千万円を差し引くと800万円のプラスになったと言っています。よって、運用1年で投資の元を取れたと自慢しています。

一方で、出張旅費精算書の計算ミス、金額の書き間違え、あるいは不正による損失などは1件当たり数百円であり、年間1万件とすると数百万円であるということです。私は「馬鹿じゃないの」と言いたくなりました。

年間数百万円の損失を防ぐために、1千万円を投資し、業務コストを年間1,600万円かけ、そのうえシステムの運用コストもかけています。どうしてこんな馬鹿なことを行うのでしょうか? それは従業員のミス防止、不正防止のためです。従業員の小さなミスや不正をどうしても許せないのです。いわゆる尻の穴が小さい経営者なのです。

2.30年以上前に、ムダな業務「出張旅費精算」を廃止した一部上場企業の事例

30年以上前、筆者がコンサルタントに成り立てのころ、ある一部上場企業が出張旅費清算の業務を廃止しました。つまり、清算をしないで、あらかじめ決めた金額を支給することにしたのです。その理由は、ミスや不正による損失コストより防止コストの方がはるかに高いことが分かったからです。

では、実際に、この企業ではどのようにして出張旅費の支払いを行っているのでしょうか。まず交通費についてですが、例えば、新幹線を使う場合、普通乗車料金の他に役員にはグリーン席料金を支給し、役員以外には指定席料金を支給します。

ローカル線やバス料金は別途決めた交通費手当を支給します。プリペイドカードを支給する場合もあります。タクシーを使った場合には領収書と引き換えに現金で支払います。宿泊費については役員は1泊2万円、部課長は1泊1万5千円、一般従業員には1泊1万円を支給します。

不足する場合やタクシーの領収書をもらうのを忘れた場合には交通費手当や出張手当の中から各自で負担するのです。つまり、交通費にしろ、宿泊費にしろ予め支給する金額は決まっているので、清算はしないのです。

問題は過不足分です。チェック業務である出張旅費清算を廃止したことにより、どういう問題が生じるかです。当然、ミスや不正が発生することが予想されます。しかし、その心配はありません。まず、交通費ですが、新幹線を使わずに飛行機で行っても自分の車で行っても清算はしません。

よって、自分の車で行って旅費を浮かし飲み代に当てる者がいます。しかし、それでもかまいません。本人の勝手です。ローカル線やバスを使う場合、支給される交通費手当では不足する場合もありますし、逆に多い場合もありますが清算はしません。

また、プリペイドカードを支給する場合、休日に私用で使おうとする者がいます。しかし、休日には使えないように金曜日の退社時には必ず会社に寄ってプリペイドカードを会社に置いて帰宅することを義務付けます。

また、例えば、地方の人が東京に出張し、東京で仕事が終了した後に、プリペイドカードを使って箱根や伊豆の温泉に行って宿泊し翌朝出勤する者がいます。さらに、昼間から堂々と日帰りで箱根や伊豆の温泉に行く営業員もいます。それでも一向にかまいません。仕事さえきちんと行えば問題にはしません。元々営業員は裁量労働制をとっているからです。

出張による宿泊費については、一般従業員の場合には1万円が支給されていますが、仮に8千円のホテルに泊まっても清算しないので2千円は自分のものになります。逆に、1万2千円のホテルに泊まった場合は2千円は自腹ということになります。

このように過不足分を自己負担にした場合、別の問題が生じます。それは税金です。この企業では、最初、所轄する税務署に相談に行きました。そうすると、不足分については不問であるが、過分に支払った分については給料とみなして所得税を取ると言われたらしいです。税務署らしい実に勝手な言い分です。そこで、こちらも反論をしたそうです。

過分に支払ったかどうか、また、いくら過分だったかは本人にしか分からない。仮に出張旅費清算をきちんと行ったとしても、実際にいくら使ったかは本人にしか分からない。なぜなら、電車やバスは領収書を発行しないからです。よって、税金を計算することはできません。

会社としてはムダな業務を削減し、業務コストを削減して少しでも利益を増やし、その結果、税金を少しでも多く支払うようにした。それなのに、過分に支払った分を従業員の所得とみなして課税するとは、「できるもんならやってみろ!」と税務署に言ってやったそうです。

また、そもそも、企業会計原則の中に重要性の原則というものがあります。企業会計は定められた会計処理の方法に従って正確な計算を行うべきものであるが、企業会計が目的とするところは、企業の財務内容を明らかにし企業の状況に関する利害関係者の判断を誤らせないようにすることにあります。

よって、重要性の乏しいものについては本来の厳密な会計処理によらないで、他の簡便な方法によることも正規の簿記の原則に従った処理として認められるのです。

この企業会計原則に基づき、重要性の乏しいものを簡便な方法で処理したのであるから、問題なかろうと反論したそうです。この反論によって税務署も黙ってしまったということです。

ところで、昨今、コンプライアンス(法令順守)として内部統制を強化する動きがあります。内部統制に関する日本版SOX法が施行されているにもかかわらず、いつになっても企業の不正がなくならないからです。この法律は、本来は経営者の不正防止が目的なのです。しかし、このために従業員の不正防止のためのチェックが厳しくなっているのです。

これによって従業員が労働意欲をなくし、業績が悪化しているのです。従業員満足を図り、その結果として顧客満足をもたらせば、業績が向上するのです。このことを忘れ、従業員の些細なミスや不正を許さず、チェック業務を強化するようなことは決して行うべきではありません。

筆者は30年以上前から一部上場企業を始め、多くの企業で業務効率化や業務改革のコンサルティングを行っておりますが、筆者がコンサルティングした会社ではどの会社も出張旅費清算は行っていません。また、同様の考え方で、従業員が使ったその他の経費の精算も行っていません。

経費の計算は使った従業員が行いますが、会社として清算は行わないのです。つまり、清算のためのチェック業務を行わないで従業員の申告通り支払うわけです。これだけで、従業員が満足し業績が向上するのです。

3.旧大蔵省・日銀が承認しなかった大手銀行のムダな業務の削減事例

業務効率化のコンサルティングを行う時に、どの企業からも必ず言われることがあります。わが社の業務効率化ではなく、お役所の業務効率化をして欲しいと。企業が、各種申請業務など、お役所に関わる業務を効率化しようとして、お役所に改善提案しても必ず却下されると言うのです。

ある大手銀行で業務効率化のコンサルティングを行った時の事例を紹介します。この銀行には外国為替取引を業務とする、外為1課と外為2課という2つの課がありました。外為1課は新規に外国と取引をする企業を担当する課で、外為2課は取引が定常的に行なわれるようになった常連企業を担当する課です。

外為第1課が扱っている企業は、1件当たりの取引金額が比較的小さいのですが、取引頻度は多いのです。企業が外為取引に慣れていないこともあって、手続き上の問題が多く発生します。外為第2課が扱っている企業は、取引頻度は少ないのですが、取引金額が大きいため大きな問題が発生するのです。

したがって、対処方法も異なり、業務が専門化しているため2つの課に分かれているわけです。取引金額、取引頻度、取引期間、トラブル状況などが一定の基準に達すると外為1課から外為2課に企業を移管します。

外為1課から外為2課に企業を移管する場合、顧客企業から預かった担保物権を始め、いろいろな書類を移管します。書類を移管する場合、まず、外為1課の担当者、係長、課長がそれぞれチェックしてから外為2課の担当者に渡します。次に、外為2課の担当者、係長、課長がそれぞれチェックしてから、最後に部長がチェックして承認します。

その後、担当者が金庫に保管してある担保物件を移管し、関係部署にも移管の手続きをとります。以上、簡単に書きましたが、実際にはかなりたいへんな作業なのです。大口の顧客の場合には、数億円分の担保物権になりますし、預かった書類も段ボール箱10個以上になるからです。

具体的に書きますと、まず、外為第1課の担当者が、取引手続き上の問題が少なくなった企業を第2課に移管することを第1課長に進言します。すると、第1課長と第2課長が相談して、移管するための条件に合致しているかどうかを確認して、合致していれば移管することに決めます。

次に、第1課の担当者がこれまでの取引に使った書類をすべてロッカーから取出し、1つひとつチェックし、1つひとつ押印したうえで、第1係長に渡します。第1係長は書類を1つひとつチェックし、1つひとつ押印したうえで第1課長に渡します。第1課長もそれらの書類をすべてチェックしたうえで、1つひとつ押印します。取引1件当たり数種類の書類があるので、数年間の取引に使った書類は数メートルの高さになります。

次に、その書類を第1課長が第2課に持って行き、新たに決まったその企業の担当者に渡します。その企業の担当者はその書類すべての内容をよく読み、1つひとつ押印します。そして、第2係長に渡します。第2係長も同様に書類をすべてよく読み、1つひとつ押印し、第2課長に渡します。すると第2課長も、その書類をすべてよく読み、1つひとつ押印します。そして、第2課のロッカーにしまいます。これで書類の移管が終了します。

次に、担保物件の移管を行います。担保物件は金庫に保管してあります。そこで、まず、第1課の担当者が第1課長に金庫を開ける許可申請を行います。許可をもらったら第1課の金庫係に許可書を見せて金庫の鍵を開けてもらいます。金庫の鍵は金庫係だけが保持し、保管しています。

次に、金庫番に許可書を見せて金庫を開けてもらいます。金庫は頑丈で重い扉で出来ているので、屈強な金庫番が2人がかりで扉を開けます。

金庫は1つなのですが、金庫は大きく、金庫の中にいくつも部屋があって、それぞれに鍵がかけられています。第1課が扱う企業の担保物件を保管してある部屋の鍵を金庫係に開けてもらい、担当者が中に入って、該当する企業の担保物件を取出し、担保物件を手押し車に乗せて金庫から出ます。そして、金庫番に金庫を閉めてもらって、金庫係に鍵を閉めてもらいます。

次に、担保物件を第2課の担当者に渡します。すると、担当者は第2課長に金庫を開ける許可を申請します。許可をもらったら、許可書を第2課の金庫係に見せて金庫の鍵を開けてもらいます。そして、金庫番に許可書を見せて金庫の扉を開けてもらいます。

次に、第2課が扱う企業の保管室に担当者が担保物件を保管し、担当者は金庫から出ます。そして、金庫番に金庫の扉を閉めてもらって金庫係に鍵を閉めてもらいます。以上で、第1課から第2課への担保物件の移管の手続きが完了です。

以上の手続きは大蔵省と日銀が決めた業務マニュアルなのです。銀行業務というのは、大蔵・日銀が決めた通りに行わなければならないのです。ちなみに、大蔵省と日銀は一心同体なので、まとめて大蔵・日銀と呼ぶらしいです。大蔵・日銀は常に、銀行がマニュアル通りに業務を行っているかを監視しています。

大蔵・日銀が決めたいろいろな業務手続きはどれも面倒なだけでなく、複雑であり、また矛盾したところもあるので、以前から問題になっていました。それで、実際にはマニュアルどおりに行っていない場合があるのです。ところが、大蔵・日銀が突然、業務監査に訪れるので、銀行では、日々、戦々恐々としているのです。

最初に外為取引を行う場合にはマニュアル通り、どの企業でも一般社員の担当者を決めるのですが、半年もすると、大口の顧客は課長が主に担当し、中口の顧客は係長が主に担当し、小口の顧客は一般社員が担当するという具合に顧客を分担して業務を行うようになります。したがって、数年たって移管する時に、マニュアル通りに移管手続きを行うと、自分が扱っていない顧客の書類を始めて見ることになるのです。これから移管するのに、書類をよく見なければならないのはムダです。

また、始めは小口の取引だった顧客が次第に取引量が増えていき、そのまま担当者がその顧客の専任担当になることもあって、移管する時に、担当者ごと、外為1課から外為2課に移る場合もあります。そのような時には、この移管に伴う手続きが非常にムダな手続きとなるのです。同じ担当者が同じ書類を2度チェックしなければならないわけですから。

大蔵・日銀は形式を重視しており、マニュアル通り銀行が業務を行うように指導し監査しておりますが、実際の業務ではこのようなムダがしばしば発生するのです。そこで、2人の課長はこの手続きを簡素化すると同時に、状況に合わせて臨機応変に手続きを変更できるように改善案を作成し、大蔵・日銀に提案することにしました。

外為部長は、これまでの経験から、改善提案するのは、それこそムダだと言って、始めは取り合わなかったのです。しかし、たまたまある大口顧客の移管があって、あまりにもムダなことが誰の目にも明らかだったので、提案してみることにしました。2人の課長で改善案を作成し、部長の承認を得た後、筆者にもその案を見せてくれました。

私はその案を見て、これでは絶対に承認されないと思いました。確かに、その内容を見ると、いかに複雑でムダな業務であるかが良く書かれており、改善案も納得できるような内容になっていました。しかし、肝心のことが抜けていたのです。それは、大蔵・日銀にとってどんなメリットがあるかということです。

改善案というものは、企業内部だけの問題でも、企業間の問題でも、同じですが、自分の都合の良いことだけを書いても承認されることはありません。必ず承認をする立場の人のことを考えて書かないといけないのです。改善内容は同じでも書き方によって承認されるかされないかが決まるのです。これが改善提案書を書くコツです。どの企業でも全く同じです。

いかに不合理であっても、お役所がこちらの言い分を聞いてくれるわけがありません。何しろお役所は国家という印籠(いんろう)を持っているのですから。「この日の丸の紋所が目に入らぬか!」というわけです。ですから、逆らってはダメなのです。お役所は利用するものなのです。

こちらに都合の良いように利用するのです。そのためには、お役所が仕事をしやすくしてあげるのです。つまり、双方のムダな仕事を廃止・削減する案を作れば良いのです。お役所にはムダな仕事がたくさんあるのですから簡単にできます。

このことを部長と2人の課長に話して少し書き直してもらいました。しかし、それにもかかわらず、大蔵・日銀の返事はNOでした。しかし、返事の仕方がこれまでとは全く違ったということです。これまでは、何を提案しても返事すらしてくれなかったのに、今回は実に丁寧に承認できない理由を書いてくれて、しかも改善内容は良いが時期尚早である旨を書いてくれた、とのことでした。

承認できない理由は、「法律で手続きが決められており、簡単に変更することはできない」とのことでした。もちろん、銀行でもそのことは承知しており、法律改正を申請したのです。銀行では今回の大蔵・日銀の返事に手ごたえを感じたので、改めて、部長と2人の課長の計3人で、大蔵省に直接出向き、直接説明し、法律の改正を申請しました。ところが、やはり返事は、「できない」とのことでした。

この銀行では、もし、この提案が承認されれば、他に多くの業務簡素化の提案ができると思い、既に多くの提案書を準備していましたが、すべてあきらめざるを得ませんでした。

ちなみに、昔、経団連の会長をされていた土光敏夫さんが、「日本のお役所の中でも、最も頭が固く、日本の経済発展を妨げているのが大蔵省である」とNHKのテレビで言っておられました。大蔵省が金融庁に変った現在においても、この状況は変わっていないようです。

4.多くの企業にある内部管理業務の廃止・削減事例

内部管理業務は経営管理部門(ホワイトカラー)の業務の多くを占めています。おそらく、どの企業でも全業務量の60%以上になると思います。実際、弊社のクライアント企業で調べたところ、ホワイトカラーの業務のうち、基本業務を除く業務の80%以上が内部管理業務でした。つまり、後ろ向きの業務が80%以上、前向きの業務が20%以下だったと言うことです。

実は、内部管理業務というのは最も改善・効率化しやすい業務なのです。なぜなら、企業外部の顧客や取引先などとは関係のない業務だからです。つまり、業務を廃止・削減しても顧客や取引先には絶対に迷惑がかからないのです。よって、内部管理業務は業務効率化の目玉であり、宝庫なのです。したがって、どの企業でも多くの成果が期待できます。

しかし、「3-1 業務の価値分析による無価値業務の廃止・削減」「3-3 目的思考による無用業務の廃止」「3-5 重点思考による過剰業務の削減」などで、既に内部管理業務を廃止・削減しているはずです。

よって、これまでの成果に加えてさらに多くの成果が上乗せできるわけではありません。既に意識(考え方や価値観)が変り、ムダな業務を廃止・削減しているのであれば、ここで新たな視点でムダな業務を発見して、効率化の成果を上乗せすることになります。

しかし、未だに意識が変わらず、ムダな業務をあまり廃止・削減できていない企業は、ここで改めて多くのムダな業務を廃止・削減できるはずです。しかしながら、実際には、楽して仕事をしたい人が多いので、楽してできる内部管理業務をなかなか止めようとしないのです。つまり、攻めの業務よりも守りの業務の方が楽にできるので止めようとしないのです。

(1)チェック業務

チェック業務というのはチェック、照合、確認、点検、検査などの業務の総称です。内部管理業務の特徴は業務ミスがあっても、あるいは不正があっても企業外部には一切迷惑がかからないことです。したがって、ミス防止や不正防止のために二重のチェックを行い、業務コストをかけることはムダなので廃止・削減すべきなのです。

自分が行った業務を上司や先輩にしつこくチェックされることは誰にとってもいやなことです。そこで、既に説明しましたように、ランダムにチェックするとかミスが多ければチェックし、少なければチェックしないようにするのです。こうすればチェック業務をかなり削減できます。しかも、こうすれば担当者が自ら自主的にミス防止・不正防止をするようになります。なぜなら、担当者の業務に対する責任感が高まるからです。

ちなみに、日本版SOX法が成立したときから内部統制が厳しくなりました。このあおりを受けて従業員の業務監査が厳しくなっているのですが、これはお門違いです。そもそもアメリカのSOX法はエンロン事件をきっかけとして作られた経営者の不正防止のための法律です。従業員の不正防止が目的ではありません。

アメリカのSOX法を参考にして作られたのが日本版のSOX法です。日本では、経営者が行う業務の監査を厳しく行っておらず、通常、社長が代表取締役になっており、そのうえ監査役の人事も社長が行っています。つまり、社長が重要な決定を行い、社長が中心になってそれを実行し、社長が決めた監査役が社長が行った業務をチェックしているわけです。

要するに、社長が自分の都合の良いように決めて、それを自分で実行して、自分でチェックしているようなものです。このため、日本では昔から、社長の不正が頻繁に発生していました。このため、これまでいろいろな法律改正が行われました。例えば、会計監査人が業務監査もできるようにしたり、会社法を新たに作ったりしました。しかし、どれも機能していないのです。

経営者よりも株主の方が強いアメリカのように、経営者が行う業務の監査を厳しく行っている国でさえ、エンロン事件のような、経営者が不正を働く事件が起きたのです。それで、日本でもSOX法が必要だということで日本版のSOX法ができたのです。

ところで、最近、日本では製品の検査に関する不正事件が多発していますが、これは顧客や取引先など企業外部に向けた業務であり、内部管理業務ではありません。したがって、簡素化はできません。また、これらの事件は経営者(社長や役員)が担当者に不正をさせていたり、担当者の不正を見て見ぬふりをしたりしていたのが原因なのです。

こういう事件が発生すると、また、従業員に対するチェック業務が強化されるのですが、それはお門違いです。経営者の業務のチェックを行って下さい。

また、企業の外部に向けた業務か内部に向けた業務かをきちんと区別して下さい。そして、外部に向けた業務は厳しくチェックし、内部に向けた業務はできるだけ簡素化するのです。

(2)需要予測

需要予測は最近ではあまり行われなくなりましたが、未だに統計学を屈指し時間をかけて行っている企業があります。需要予測は高度経済成長時代の名残の業務です。現在では需要予測に時間をかけても正確に予測することができないため、ごく基本的なことだけを行って簡単に済ませている企業が多いです。

むしろ、POSシステムによる顧客の購買行動の分析や小売の売上実績などの分析が主流になっています。このために大手メーカでは小売業者と連携したり、直販したりして顧客情報を収集しています。ところが、中小メーカでは小売りのPOSシステムの情報を活用できず、未だに自社で需要予測を行い生産しているので、売れ残りや欠品を発生させているのです。

ちなみに、小売業においてもPOSシステムを単にレシートの発行だけしか使っていない企業が多いです。本来、POSシステムの目的は、顧客情報や販売情報を収集・活用して売上及び利益を高めるためなのです。つまり、売れ筋・死筋商品の明確化による仕入商品の選定、販売予測、商品開発などに活用するのです。

(3)見積書の見直し・修正

見積書は顧客に提出するものですので、ミスがあってはいけないのですが、顧客に提出したものを顧客から金額の変更を依頼され、再度見直し・修正する業務がムダなのです。つまり、見積書を修正して再提出する必要はないのです。

なぜなら、決定したものは契約書などの書類にするので、途中の書類はいらないのです。よって、ムダなので止めるということです。これはホンの一例で、このような業務はたくさんあります。

原案⇒修正案⇒最終案、予定⇒内定⇒決定、伺い⇒根回し⇒決定、発注予定⇒仮発注⇒本発注

など、その都度書類にする必要はないのです。これら途中の修正案は口頭やメモで済ませて書類にするのは止めましょうということです。これを一般にステップカットと言います。

なお、最初のステップがない場合、例えば予定がない場合は内定と決定が必要になります。例えば、社員採用の予定通知は通常はありませんから、内定通知と決定通知が必要なのです。ステップカットは先進企業ではほとんど実施済みですが、いまだに行っている企業も多いようです。なお、内定もなく、いきなり決定通知を出す企業もあります。

(4)クレーム処理報告書

同じクレームが発生する都度、何度も報告書を書いていたのを廃止し、最初に書いた報告書に発生日、顧客名などを追加記入するだけにしたという事例です。

これはほんの一例に過ぎません。このように同じ内容、あるいは類似内容の書類を何度も作成することはムダになるだけでなく、利用する場合にも問題です。単に、書類を書いて終わりではないはずです。書類をどう利用するのか、その目的をよく考え、目的に沿った書類を作成する必要があります。

つまり、この事例の場合は、同じクレームや類似のクレームは同じ報告書やファイルにまとめておいた方がクレーム対策するためには都合が良いということです。

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