経営管理部門(ホワイトカラー)のユーザー(お客様)は直接部門(ブルーカラー)です。すなわち、製造部門や販売部門の人たちです。なぜなら、直接部門の人たちを支援するのがホワイトカラーの仕事だからです。ホワイトカラーはユーザーのために仕事を行っているのですから、ユーザーを大切にしなければいけません。これがユーザー志向です。
ところが、多くの企業では、ホワイトカラーは直接部門の人たちを大切にしていません。実際に付加価値を生むのは直接部門であり、ホワイトカラーの給料は直接部門の人たちが稼いでいるにもかかわらず、ホワイトカラーは工場の作業者や販売員を大切にしていません。
なぜなら、ホワイトカラーには「おごり」があるからです。ホワイトカラーは、自分の仕事は頭を使う仕事だから、直接部門の人たちより偉いのだと勘違いしています。ホワイトカラーの経営管理技術が熟練工による製造技術や熟練販売員による販売技術より優れているわけではありません。
本来、ホワイトカラーとブルーカラーとは対等です。それぞれが得意な仕事を分担しているだけです。製造や販売の技術を習得している人が製造や販売を行い、経営管理技術を習得している人が経営管理を行っているのです。製造や販売の技術を習得していないホワイトカラーは製造や販売ができません。
顧客のために商品を製造・販売したり、顧客にサービスを提供したりしているのは直接部門の人たちです。つまり、商品やサービスに付加価値を付けているのは直接部門の人たちです。ホワイトカラーではありません。したがって、実際に稼いでいるのは直接部門の人たちであり、ホワイトカラーではありません。ホワイトカラーは直接部門が稼ぐのを手伝っているのです。
ちなみに、トヨタ自動車では、「次工程はお客様」と言い、次工程を大切にします。不良品を次工程に渡さないように、また、次工程の人が作業をしやすいように、順次、次工程を大切にすれば、最終的に本当のお客様(顧客)を大切にすることになるからです。
経営管理部門の次工程は直接部門です。ホワイトカラーが行う業務は、お客様である直接部門の人たちが多く稼げるように、直接部門の作業を支援をすることです。ですから、次工程である直接部門を大切にしなければいけません。
そこで、ホワイトカラーの業務が本当に直接部門の役に立っているかどうかを直接部門の人たちに評価してもらいます。業務が付加価値を高めていれば、つまり、業務が売上や利益を増やしていれば、その業務は価値があるということになります。逆に、売上や利益を増やしていなければその業務は価値がないのです。
ところで、これまで実施した、「目的思考による無用業務の廃止」や「重点思考による過剰業務の削減」はホワイトカラー自身が業務を評価し、廃止や削減の検討を行いました。しかし、それではどうしても評価が甘くなってしまいます。自分が受けたテストの採点を自分で行うようなものだからです。そこで、今回はユーザーに評価してもらいます。
実際に、企業の付加価値を生み出しているのは直接部門ですから、ホワイトカラーの業務が付加価値を高めるために役に立っているかどうかを直接部門に評価してもらうのです。すなわち、直接部門から見てホワイトカラーの業務に価値があるかどうかを直接部門に判断してもらうのです。
ちなみに、私たちが小売店で商品を購入する時には、まず、その商品が自分にとって役に立つかどうかを考えます。そして、役に立ちそうであれば、その商品は価値があり、必要だと判断します。役に立ちそうもなければ価値がなく、必要ないと判断します。
このことと全く同じで、ホワイトカラーの業務に価値があれば、その業務は必要であり、価値がなければ必要ないのです。よって、直接部門で価値がないと判断した業務は廃止すべきなのです。
また、直接部門で価値が低いと判断した業務は、簡素化して時間(コスト)を削減するか、価値を高める必要があります。
以上がユーザー志向による無価値・低価値業務の廃止・削減の考え方です。
本来、価値というものは相対的なものであり、また、価値の高さの評価には個人差があります。同じ業務でも、その業務を必要とする人にとっては価値がありますが、必要としない人にとっては価値はありません。価値の高さについても、価値が高いと評価する人もいれば低いと評価する人もいます。
よって、直接部門のすべての人に、すべての業務について評価してもらう必要があります。
評価する対象業務は、今後1年間に実施する予定の繰り返し(ルーティン)業務です。これらのすべての業務を評価するわけですが、その際に評価基準を作っておく必要があります。A、B、C、D、Eの5段階で評価すると分かりやすいと思います。
最低がE評価ですが、これはユーザーである直接部門にとって無価値どころかマイナスとなる業務です。つまり、直接部門にとっては迷惑な業務であり、直接部門の作業を邪魔している業務です。これは直ちに廃止するようにします。
次がD評価ですが、これは無価値の業務です。無価値の業務には直接部門には関係のない業務もあります。直接部門のためではなく、ホワイトカラー自身のために行なっている業務です。例えば、(1)上司に気に入られたいためのプライベート情報の収集、(2)内容を誰も見ることがない各種報告書の作成、(3)実行する予定のない企画書の作成などです。
読者の皆さんは、そんな業務があるわけないと思うかもしれません。しかし、前回、説明しましたように、実際にはこのような業務が多いのです。これらは、会社にとって必要なのではなく、ホワイトカラーにとって必要な業務です。
つまり、経営目的ではなく自己目的のための業務です。これらの業務は直接部門にとっては全く必要ありません。経営管理部門の中で計画・立案し、また実施しますが、結局、何も価値を生んでいない業務です。
よって、通常、これらの業務は直接部門の人たちはその存在すら知りません。しかし、業務効率化のためには経営管理部門(ホワイトカラー)が行っている業務すべてを直接部門が評価する必要があるので、D評価を付けます。なぜなら、企業の付加価値を生んでいるのは直接部門なので、ホワイトカラーの業務はすべて直接部門が評価すべきだからです。
直接部門が全く知らない業務にはD評価を付けますので、D評価を付けた業務を調べてみると、経営目的ではなく、ホワイトカラーの自己目的業務なのです。つまり、このような自己目的業務を明確にするためにD評価を付けてもらうのです。
ホワイトカラーにとって無価値だと思われる業務でも役員や上司の指示命令には従わなくてはならないので、業務を実施せざるを得ないのです。よって、直接部門でそのような業務を無価値と評価することによって、ムダな業務を指示命令している役員や上司に気づかせることができます。
次に、A評価、B評価、C評価についてですが、それぞれ、(A)非常に役に立っている、(B)役に立っている、(C)役に立っているかどうか分からない、という評価です。多くの業務の中には、直接部門には関係がない業務も含まれます。経営管理部門の業務の中には、会社にとっては重要な業務であっても、直接部門には関係のない業務もあるからです。この業務は、通常、C評価になります。
以上のように、直接部門の人たちに経営管理部門のすべての業務を評価してもらいます。その後、改めて経営管理部門(ホワイトカラー)が業務1つひとつについて検討し、業務を廃止したり、削減したりします。あるいは、業務価値を高める努力をします。つまり、業務品質を高めます。そして、その結果を直接部門に伝え、確認してもらうのです。つまり、必ずフィードバックします。
これらの結果をフィードバックする際に最も重要なのは、経営管理部門と直接部門とが業務について良く話し合うことです。なぜなら、一方的に業務を廃止、削減するわけにはいかないからです。また、簡素化(時間削減)する際には方法改善が必要だからです。
方法改善のためには、いろいろな方法を調査検討したり、創意工夫したりする必要があるので、経営管理部門と直接部門とが協力してアイデアを出し合うようにします。
そもそも、多くの企業では経営管理部門と直接部門とはとかく話し合う機会がなく、お互いに考え方や価値観にギャップが生じており、それが解消できないまま、常にギクシャクしている状態なのです。要するに、ホワイトカラーとブルーカラーとがほとんど話し合わない企業が多いのです。
このギャップを少しでも埋めて、協力体制を作ることができるのが、今回の、「3-6 ユーザー志向による無価値・低価値業務の廃止・削減」でもあります。よって、少なくとも毎年1回は行うようにします。これよって、普段でも気軽に話し合えるようになり、ムダな業務がなくなり、また、業務品質を高くすることができるのです。
経営管理部門(ホワイトカラー)を独立採算部門にするには、個々の業務に価格を付けて直接部門の人たちに買ってもらえば良いのです。それぞれの業務コストは既に計算してあるので、価格を決めれば販売できるわけです。
業務の価格を決める方法としては最も簡単で分かりやすい方法を用います。すなわちコストに利益をプラスして価格を決める、いわゆるコストプラス法を用いれば良いと思います。利益を決める際には、利益率は自社の営業利益率を用いても良いですし、経営管理部門で独自に業務ごとに決めても良いです。
そして、直接部門の人たちに、経営管理部門が設定した価格でそれぞれの業務を買うか買わないかを判断してもらいます。
ちなみに、私たちが商品を購入する時には、その商品の価値と価格とを比較して、どちらが高いかを考えます。そして、価格の割に価値が高いと判断すれば、その商品を購入します。逆に、価値があっても価格が高ければ購入しません。つまり、
商品価格<商品価値であれば購入し、商品価格>商品価値であれば購入しないのです。
業務を購入するかしないかを決める際には、一般の商品の売買と同様に、価格交渉も行います。直接部門から経営管理部門へ、もっと安くしてくれとか、半額にしてくれないか、などと交渉します。逆に、経営管理部門から直接部門へは、その業務の重要性や価値の高さを説明して、価格を下げるわけには行かないことを主張します。
このことによって、直接部門が考える業務価値の高さが分かりますから、業務コストと業務価格とを比較して、その業務の投入対得られる効果が判定できます。つまり、
業務コスト(投入)<業務価格(効果)<業務価値
であり、投入に対して得られる効果が明確になります。
以上のことが、前回、「3-5 重点思考による過剰業務の削減」で説明しました、ユーザーによる費用対効果の判定となります。
そして、売れた業務を集計すれば経営管理部門の業務売上になります。また、経営管理部門の業務売上から全ての業務コスト(間接労務費+工場管理費+一般管理費など)を差し引けば経営管理部門の業務利益になります。
また、直接部門の利益は、売上から直接部門の費用(材料費、直接労務費、製造経費、仕入費、販売費など)を引き、さらにホワイトカラーからの業務購入費(業務売上)を引けば算出できます。
この計算によって、直接部門と経営管理部門の利益の違いが分かります。つまり、ブルーカラーとホワイトカラーのどちらが稼いでいるかがよく分かります。すると、多くの企業ではブルーカラーの方がはるかに多く稼いでいるのです。
よって、「ホワイトカラーは、ブルーカラーに食べさせてもらっているのだ」ということをホワイトカラーに認識させることができます。このために、経営管理部門を独立採算部門にして、自分の食い扶持は自分で稼ぐようにするのです。
また、直接部門が、社外から購入する方が良いと考える業務については、アウトソーシング(業務委託)を行います。つまり、経営管理部門を競合他社と競争させるわけです。当然、どの業務をアウトソーシングするかを決めるのは直接部門です。
以下の事例は、多くの企業で共通的に存在する、直接部門(ブルーカラー)が経営管理部門(ホワイトカラー)の業務を無価値・低価値と判定した業務事例です。
現場のいろいろな作業の進捗管理はいろいろな人が重複して行っていることが多いです。例えば、生産や販売の現場管理者、生産(工程)管理部門や販売管理部門の担当者・管理者などです。
いろいろな人が行っているにもかかわらず、いずれも現状の確認だけで、誰も遅れ対策をしていないのです。しかも、現場に進捗状況に関するデータを取らせたり資料を作らせたりして、それを確認するだけなのです。よって、いつまで経っても遅れが改善できないわけです。
したがって、この業務はムダということになります。この業務は無価値・低価値業務であると同時に重複業務でもあります。なぜこうなるのかといいますと、誰も管理を行っていないからです。
管理とは、ひと言で言えば、どなたもご存じの、P、D、C、Aを回すことです。ところが、実際には多くの人は計画を立てて(P)、実績をチェックする(C)ことしか行わないのです。つまり、アクション(A)を取らないわけです。直接部門の作業者から見れば、対策しないのなら、邪魔だから現場に来るな、よけいな仕事をさせるなと言いたいのです。
この業務をなぜ何人もの人が重複して行っているのかと言いますと、誰も対策しないからです。そこで、1人に責任を持たせて管理させれば、アクション(A)を取って対策するようになります。
在庫管理についても進捗管理と同様にいろいろな人がチェックするだけで、対策しないのです。高度経済成長時代は、作れば売れた時代、また、仕入れれば売れた時代でしたので、在庫管理はほとんど不要でした。したがって、能力のない人、やる気のない人に在庫管理をさせたのですが、現在では全く違います。
本来、在庫管理は非常に難しい業務です。高度な数学や統計学を屈指して、適正在庫量を確保する必要があるのです。
適正在庫量は常に一定ではありません。状況が変れば変化します。よって、いかに適正在庫を保つかに日々努力する必要があるのです。つまり、欠品にならないようにすると同時に、過剰在庫にならないようにすることによって、売上を少しでも増加させるとともに、コストを少しでも削減できるからです。
つまり、在庫管理は売上や利益に直結する業務であり、相反することを上手に管理しなければならないので難しいのです。しかし、いまだに在庫管理を重視していない会社が多く、余分な発注を行ってムダな在庫をかかえてしまうのです。この原因は会社が利益よりも売上を重視しているためです。つまり、在庫を余分に抱えてもあまり問題にされないのに対して、欠品になると問題にされるためです。
整理、整頓、清掃、清潔、躾、の5Sのことですが、これは本来、自分たちの職場を自分たちで改善しようという自主的な改善運動です。ところが、経営管理部門の人たちは自部門の職場を棚に上げて、直接部門の人たちの職場の5Sをチェックするわけです。
しかも、チキンとできているかどうか細かくチェックするのです。したがって、直接部門の人たちにとってはよけいなお世話ということになります。よって、廃止の対象になります。もちろん5Sを廃止するのではありません。細かくチェックするのを廃止するのです。
改善活動そのものは非常に重要であり、自主的に行うことに意義があります。なぜなら、自主的に行うことによって自分たちの職場を自分たちで良くし、働きやすい職場にすることで働く意欲が生まれるからです。
人から押し付けられ、実施させられても効果は出ません。直接部門に実施させるより、ホワイトカラー自身が自分たちの職場の5Sをきちんと行い、それを直接部門に模範として示すようにすべきです。経営管理部門の人たちはあくまで直接部門に対するサービス部門であり、支援部門であることを忘れてはいけません。
経営管理部門の人たちは、直接部門の人たちにいろいろなデータを取らせたり資料を作らせたりします。しかし、その結果どうなったのかをフィードバックしません。なぜなら、いろいろなデータを取らせても単に集計するだけで、活用しないことが多いからです。そこで、直接部門の人たちは役に立たない仕事はしたくないと思うわけです。
経営管理部門の業務としてはデータを集計して報告書にまとめるだけですが、直接部門にしてみれば、データを取らなければならないので、製造・販売以外のよけいな仕事をさせられるわけです。しかも、その報告書を何も活用しないのですからムダなのです。
この原因は主に役員や部課長が部下に報告書を作らせているからです。しかも、その業務の目的は、単に、「見ておきたい」「知っておきたい」だけなのです。そのために報告書を作らせているのです。
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