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開発&コンサルティング

3-5 重点思考による過剰業務の削減

1.重点思考とは重要でない業務は簡素化すること

重点思考とは重要な業務は時間(コスト)をかけてきちんと行い、重要ではない業務は簡素化することです。重点管理とも言います。しかし、実際にこの考え方を実行するのは難しいのです。なぜなら、まず、何が重要で何が重要でないかの判断が難しいからです。次に、簡素化するためには創意工夫、つまり、方法改善が必要だからです。

そこで、いっそのこと簡素化するのではなく、その業務を一旦廃止してみたらどうかです。なぜなら、廃止して、もし支障が生じれば元に戻せば良いですし、廃止して何も支障がなければ廃止したままにすれば良いからです。これができるのが経営管理部門(ホワイトカラー)の業務なのです。なぜなら、支援業務だからです。直接部門の場合は、製造や販売の作業を一旦廃止してみようなどということは、通常はできません。

2.重要な業務か重要でない業務かの判断基準

(1)費用対効果を測定して判断する

費用対効果を測定して効果の割に費用がかかりすぎていれば重要ではない業務、すなわち過剰な業務と判断するという方法です。このためには費用と効果とを比較してどちらが大きいかを判定しなければなりません。費用は既に説明しました業務機能別コストになります。

一方、効果は業務がどの程度役に立ったかの度合いですので、結局、業務がその機能を果たしている度合いということになります。分かりやすく言えば、売上や利益にどの程度貢献しているかです。

そこで、業務機能別コストと業務機能の達成度合いとを比較して費用対効果を測定しますが、その際に、効果が定量化できる場合とできない場合とがありますので、定量化できる場合には必ず定量化します。

例えば、ミス防止のための業務コストがいくらかかり、これによりミス発生による損失コストがいくら減ったのかを計算します。これは既に説明しました品質コストの考え方です。

定量化できない場合は、ユーザー志向により、ユーザー部門(直接部門)にその業務の価値を判定してもらいます。このためには、直接部門の人たちに、「この業務をいくらで買いますか?」と質問するのです。つまり、直接部門の人たちに業務の価値(価格)を決めてもらい定量化するわけです。具体的には、次回、「3-6 ユーザー志向による無価値・低価値業務の廃止・削減」で説明いたします。

(2)統計学を用いて判断する

統計学は、実際に、いろいろの場面で使われています。前回も書きましたが、いわゆる20-80の法則と呼ばれている重点管理の考え方です。

20-80の法則は、例えば、「在庫管理を行う時に、金額の高い品目順、又は使用量の多い品目順に並べると、全ての品目の20%で全体の80%の金額、又は使用量を占めるので、20%の品目だけをしっかりと管理し、その他の80%の品目は簡素化して管理する」という方法です。

20-80の法則を業務に適用すると、例えば、「業務ミスの多い順に業務項目を並べると、全体の20%の業務項目ですべての業務ミスの80%を占める」という傾向になるので、全体の20%の業務項目を重点的に管理して残りの80%は管理を簡素化するのです。

また、ABC管理は、20-80の法則の応用で、全体を、例えば、10%(A)、20%(B)、70%(C)などと3つに分けて段階的に重点管理を行う方法です。メーカーにおいては在庫管理に、卸・小売り業においては商品管理に良く使われています。

その他、同じような考え方で、ランダム・抜き取り検査は品質の重点管理に使われ、ポイントカードは優良顧客の重点管理に使われ、故障・災害防止には3σ異常管理が用いられています。そこで、業務についてもこれらの考え方を利用することができます。

ランダム・抜き取り検査というのは、主に品質管理に使われていますが、業務ミスの管理にも使われています。例えば、部下の仕事をランダムに抜き取りチェックし、ミスが多ければチェック頻度を増やし、ミスが少なければチェック頻度を減らすという方法です。ちなみに、この方法はデスクワークの稼働状況を調査するワークサンプリング法にも使われています。

ポイントカードによる優良顧客の選定は、購買頻度、購買金額、購買時期などから顧客全体の20%の顧客を優良顧客として選定し、これらの顧客に特別サービスを行って、ブランドスイッチ(他社商品や他社商店への変更)を防ぐというものです。

実は、この方法は昔から業務の重要度の判定に利用されています。つまり、業務頻度、業務時間(コスト)、業務時期などから、業務の重要度を決め業務の優先順位を決めるのです。

異常管理というのは、異常が発生した場合にはしっかりと管理し、平常時には簡素化するという考え方です。あるいは異常が発生しないように重点的に予防対策することです。異常の判定は通常3σを基準にします。ちなみに、σ(シグマ)は標準偏差です。3σはおよそ全体の0.3%です。つまり、1,000のうち3つですので、通常、「千三つ」と呼ばれています。

例えば、災害や地震対策のために、1年に1日だけを防災の日にして訓練するのです。また、機械や車両の故障防止も、日々の点検以外に、1年に1回、徹底的に定期点検を行うのです。なぜなら、3σは1,000のうち3つですので、ほぼ1年(365日)のうち1日になるからです。

よって、業務管理についても、日々、業務改善を行うだけでなく、1年に1回、全ての業務を徹底的に見直します。つまり、経営環境の変化に機敏に対応するために、1年に1回、すなわち毎年、業務効率化活動や業務改革活動を行うようにするのです。

3.簡素化のための方法改善

業務を簡素化するためには、単に、業務時間や業務頻度を減らせば良いわけではありません。業務時間や業務頻度を減らした場合にどのような問題が起こるかを確認する必要があります。そして、その対策を考える必要があります。

つまり、簡素化のためには方法改善(創意工夫)が必要なのです。そこで、業務により内容(方法)が異なるので基本的な考え方を説明します。まず、業務機能を果たすために行っている現在の業務内容(方法)を確認します。次に、業務機能を果たす方法は世の中にいろいろありますので、いろいろな方法を世界中で徹底的に調査し、より良い方法を探します。

さらに、アイデア発想により、より良い方法を創意工夫するのです。また、機能を果たすための業務要件を見直すのです。通常、要件はあまり根拠なく決められている場合が多いので、根拠を調べると方法改善ができ、時間(コスト)削減できる可能性が高いです。ちなみに、これらはVEの方法改善の考え方です。

例えば、会議時間や会議頻度を減らす場合に、情報交換や情報伝達のための会議、あるいは世間話をするための会議であれば問題なく減らすことができます。しかし、意思決定のための会議時間を減らすには、事前に意思決定に必要な情報をメンバーに伝えておき、各自が自分の意見をまとめておくなど、準備が必要になります。

また、例えば、「商品の入出荷状況を確認する」という業務機能を果たすには、「入出荷状況を現場へ行って直接見る」「入出荷状況を現場の担当者に電話で聞く」「入出荷状況をパソコンで見る」などいろいろな方法があります。そこで、業務要件に基づき、どの方法が最も適しているかを考えて方法を決めるのです。

ちなみに、パソコンを見ても入出荷状況が正しいとは限りません。パソコンへの入力が現場でタイムリーに行われていない場合が多いからです。そこで、入出荷時に商品をセンサーで直接キャッチし、その情報を自動入力できるように工夫すれば完璧です。つまり、IT化です。ただし、コストがかかります。

また、この業務機能に対する業務要件は、業務頻度が「1時間ごとに確認する」「毎朝1番に確認する」「午前に1回、午後に1回確認する」などといろいろありますが、商品品目や対象顧客によっても要件が異なりますので、業務要件を見直すと簡素化できる可能性があります。

4.過剰業務が発生する原因

なぜ過剰業務が発生するのでしょうか、その原因(理由)を考える必要があります。原因(理由)が分からなければ対策できません。

(1)人は部下を欲しがるため、仕事が増えないのに人は増えるからです。そして、人が増えると余分(過剰)な仕事を作りだすからです。

これはパーキンソンの法則として知られています。

(2)完全主義・完ぺき主義が良いという考え方で業務を行なっているからです。

この代表的な例は、「2-7 業務管理について」で既に紹介しましたが、どこの企業にもある出張旅費清算という業務です。

電車の時刻表や乗り換え案内ソフトは出張前よりも出張後の方が良く使われているそうです。なぜなら、どういう経路で行ったのか、その電車は何時何分発だったのか、それは何千何百何十円だったのかなど、きめ細かく出張旅費清算書に書かなければならないからです。

そして、上司の承認をもらって経理に提出すると、経理担当者がその内容を細かくチェックし、「この電車の発車時刻は間違っているから書き直して下さい」などと言ってきます。清算書を細かく書かせる目的は不正の防止です。電車やバスはレシートを発行しませんから、不正が発生しやすいのです。また、税務署も領収書やレシートのない場合は、正しい記録を費用発生の証拠とするからです。

しかし、実は、出張でどこへ行ったのかの証拠さえあれば良いのです。つまり、出張先のホテルの領収書さえあれば良いのです。そして、予め、経路と手段・方法を決めておけば、いつ誰が計算しても交通費は同じ金額になりますので、金額を予め決めることができます。しかし、実際にかかった費用は時と場合により異なります。例えば、新幹線の運賃は日曜祭日と平日では異なります。

そこで、実際にかかった費用の過不足は自己負担にすれば良いのです。そもそも、新幹線で行こうが飛行機で行こうが、自分の車で行こうが本人の勝手です。役員クラスはこのようにしている企業が多いのに、なぜ一般社員だけは細かく出張旅費清算書を書かせるのでしょうか。役員クラスは不正をしないが、一般社員は不正をすると考えているのでしょうか。

実際にはその逆です。経営者(社長・役員)の方が不正を働く場合が多いのです。そのため、コンプライアンス(法令順守)が重要なのです。コンプライアンスは、本来、経営者の不正を防止するためにあるのです。従業員の不正を防止するためにあるのではありません。実際には、経営者が不正を従業員にやらせている場合が多いです。あるいは、経営者が不正と知りつつ正そうとしないのです。

(3)金の使いすぎは問題になるが、人の使いすぎや時間の使いすぎは全く問題にならないからです。

この原因は、業務を指示命令する者、又は業務を依頼する者は、その業務に発生するコストを知らないからです。これについては事例を1つ紹介します。

あるクライアント企業で常務がムダと知りつつ仕事を部下にやらせていました。部下からもそのことを指摘されていました。そこで、筆者が、「なぜムダな仕事を部下にやらせているのですか」と常務に聞きますと、「前任者が始めたものなので止めろとは言えない」とのことでした。ちなみに、前任者というのは現在の専務です。

そこで、筆者は専務に、「なぜムダな仕事を部下にやらせているのですか」と聞きますと、「ムダとは何だ!」と怒って、その仕事の重要性を理解していない常務が悪いのだと言います。

そこで、筆者はその仕事にかかわる部長以下全員の業務時間を集計して、職位別に賃率を掛け、トータルの業務コストを計算し、それを専務に見せました。すると、専務は顔色を変えて、直ちにその仕事を止めるように常務に指示しました。

(4)その他、過剰業務が発生するいろいろな原因

  1. 忙しいことは良いことだ、残業しているのは良く働いている証拠だと思い込んでいるからです。
  2. 書類を作らせる人も書類を作る人も、枚数が多いほど良い仕事をしたと思い込んでいるからです。
  3. 多くの会議に出席する人ほど、会社にとって重要な人だと思い込んでいるからです。
  4. 仕事がないのに終業時間が来ないと帰れない、終業時間になっても上司が帰らないので帰れないからです。また、部下が帰らないから上司も帰れないのです。同僚が帰らないから自分だけ帰るわけには行かないのです。
  5. 部下に何かを聞いたとき、即答する部下は有能だと思い込んでいるからです。
  6. 部下は何年たっても未熟だから指導が必要だと思い込んでいるからです。
  7. 責任回避のために仕事をするからです。つまり、ミスしないように何度もチェックしたり、言いわけ書を一生懸命に作ったりするからです。
  8. 残業代を稼ぐために一生懸命に仕事をしているフリをして、休み休み、だらだらと仕事をするからです。

なぜ、以上のようなことが過剰業務発生の原因になるのかと言いますと、仕事の優先順位や仕事の時間は担当者が自分で決めているからです。つまり、担当者の自由裁量で仕事をしているからです。これらの原因は、業務管理をきちんと行っていないからであり、その根本的な原因は集団主義にあります。これらが日本のホワイトカラーの業務の実態なのです。

5.多くの企業にある過剰業務の削減事例

どの企業でも過剰業務は多く、全業務量の60%以上あります。つまり、時間削減できる業務が60%以上あります。ですから、もしこれらの業務時間を半分にできれば、それだけで業務効率化の成果が30%以上になります。しかし、実際には簡素化(創意工夫)が難しいので成果は15%程度です。

したがって、多くの企業では目的思考の成果(10%程度)と重点思考の成果(15%程度)を合計して25%程度になります。つまり、廃止する業務と簡素化する業務だけで25%程度になります。以下の事例は多くの企業に共通に存在する過剰業務の削減事例です。

(1)守衛業務

受付業務と同様に守衛業務を廃止する会社も増えています。しかし、完全に廃止するのは難しく工夫が必要です。例えば、まず、工場の出入り口は全て事故防止のために、人用と車両用との2つの門を設けておきます。

開門時間内(開門中)は不審者の侵入防止のため、人と車両は赤外線センサーとモニターで常時集中監視します。開門時間外(閉門中)は外から電話して門を開けてもらうようにします。門の開閉はスイッチで自動的に行いますから、わざわざ門のところまで行く必要はありません。そして、人や車両が構内に入ったらモニターで位置を確認しながら、携帯電話で訪問客と連絡を取り合い、案内します。

つまり、複数ある出入り口にそれぞれ守衛を置くのではなく、守衛室を1つだけ設けて、そこで全ての出入り口と工場内の通路にいる人と車両をモニターし、携帯電話で人や車両を案内するわけです。

これはモニターと携帯電話が普及したために簡単にできるようになりました。以前は工場内のどこへ行けば良いか分からずにうろうろする人や車両が多かったのですが、これが解消しました。なお、外部のセキュリティ会社に委託する場合もありますが、門の自動開閉やカメラとモニターの設備さえ準備すればコスト的には社内で管理する方が安くなります。

(2)各種計画の修正業務

無用業務の廃止で事例として紹介しました修正予算編成・四半期予算編成と同じ考え方です。計画業務そのものを廃止することはできませんが、何度も計画を立て直したり修正したりするのはムダです。そこで、できるだけ、修正しなくても良いような計画を立てるのです。

例えば、業務計画の場合、工場の生産計画と同様に、大日程計画(部門別計画)、中日程計画(課・係・グループ別計画)、小日程計画(個人別計画)と段階的に業務計画を立てることにより、計画を修正する頻度を削減することができるのです。また、不確実性が高い場合には、予め複数の計画を立てておき、必要に応じて計画を取り替えるという、いわゆるコンティンジェンシープランという立て方もあります。

また、計画の複雑性や計画変更の度合いにより、ガントチャートを用いたり、PERT/CPMを用いたりするわけです。つまり、比較的簡単な計画であればガントチャートを用い、複雑な計画であればPERT/CPMを用いるわけです。

(3)専門的な業務に必要な資料(データ)の作成

専門的な知識を要する業務に必要な資料(データ)を作成する業務です。つまり、専門的な知識をもたない人にとってはどのような資料(データ)が必要かが分かりませんから、専門家から必要だと言われれば作成せざるを得ないわけです。しかし、実際には必要のない資料を作成させられていることが多いです。

その典型が原価計算に必要とされる資料の作成なのです。原価計算は企業の利益に直結する業務ですので、非常に重要です。しかも、多くの部門からデータや資料を集めて計算します。原価を正確に計算するために、いろいろなデータや資料を基に原価計算を行うわけです。そこで、必要のないデータや資料まで作らせるのです。

このムダの存在が分からないのは原価計算そのものが専門家にしか分からないからです。それを良いことに、原価計算をしている人が、正確な原価を計算するためと称して、実は保身を図るためにいろいろな資料を各部門に作成させるわけです。

経営管理部門(ホワイトカラー)の業務の目的を追求していくと、建前は別として、本音は「保身のため」というのがかなりあります。なぜ、保身のためかと言うと、業務実施のノウハウを人に知られると自分の価値がなくなるからです。

そこで、例えば、原価計算の方法、すなわち原価計算基準を明確にして、誰でも計算できるようにすればムダな資料の作成を削減することができるのです。

原価計算だけでなく、専門的な知識を要する業務の場合、その業務内容を明らかにすることにより、ムダな業務が削減できる場合が多いです。これは個人だけが知っている専門的な暗黙知を誰もが分かる形式知にして共有化するというナレッジマネジメントの考え方による削減です。

(4)報告書・議事録などの社内書類は全てA4で1枚とする

既に紹介しましたが、これは自動車メーカーのホンダが最初に始めたものであり、現在では多くの企業で実行しています。社内の管理書類をできるだけ簡素化することで業務コストの削減を図るのです。しかし、実際に削減するのはたいへんです。データなどは別資料となりますが、いかに、A4で1枚にまとめるか、要点を1枚で表現できるようにするかが重要です。このため、文章の作成訓練をしなければなりません。

また、会社がこの考え方を推進しなければなりません。「できるだけ詳しく書け」とか、「きれいに書け」と言う上司がいればうまくいきません。したがって、社長から率先して実施しなければ成功しません。

社内の管理書類の作成にパワーポイントなどのプレゼンソフトを使用することを禁止している企業もあります。社内資料ですので見栄えを良くする必要はないからです。ただし、お客様や取引先に提出するものは別です。あくまで社内の管理書類についてだけです。

(5)報・連・相で使用する社内書類は作らない

いわゆる、報・連・相で使用する社内書類は作らないとする企業も多いです。報告書、連絡書、指示書、伝達書、通知書、依頼書、願い書などは作らないのです。全て、メール、掲示、メモ、口頭などですませるわけです。

重要な情報はメールで送信すれば関係者に確実に伝えられるし、証拠が残るため、「言った言わない」「聞いた聞かない」などはなくなります。しかも、書類の場合は書類を紛失してしまう場合があるので、それも防ぐことができます。

また、秘密でない情報は掲示にします。掲示は町内会でも使っているように昔からある良い方法です。大学では学生や教員にとって重要な情報も掲示で済ましています。むしろ、掲示を見なかったのが悪いということです。

メモは自分が忘れるのを防ぐためだけでなく、簡単な業務連絡などに良く使われます。また、緊急を要する秘密情報を伝えるにはメモを渡します。したがって、いろいろな場面でメモは使えます。また、秘密でない情報は口頭(又は電話)で伝えることもできます。

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