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開発&コンサルティング

3-2 業務の目的と機能の明確化

1.多くの企業では業務の目的と機能が不明確

前回、業務の価値分析を行い、明らかに価値のないムダな業務について廃止・削減の検討を行いました。次に、価値があると思われる業務について、本当に価値があるか無いかを調べ、もし、価値がなければ廃止・削減の検討を行います。

価値があると思われる業務は、計画・立案・設計と加工・編集・処理の業務です。これらの業務は売上や利益に何らかの貢献をしているはずなので、実際に売上や利益に貢献しているか否かについて確認してみようということです。そこで、まず、各業務について目的と機能を確認します。

各業務は何のために行うのか(目的)、どのような機能(役割)を果たしているのかを確認すれば、売上や利益に貢献しているか否かが分かるからです。

通常、多くの人は、自分が行っている業務の目的や機能(役割)についてあまり考えたことがないので、業務1つひとつについて改めて考えてみるのです。すると、多くの企業では、これといった目的がなかったり、目的が不明確だったりする業務が多く発見できるのです。

また、目的は明確だけれど、目的に対して機能(役割)を果たしていないとか、機能(役割)を果たすような内容(方法)になっていないなどの業務が発見できるのです。つまり、本来の業務の目的に対して、実態が異なっている業務が多く存在するのです。

これらの原因は、業務を指示する人が目的を考えずに指示したり、必要な機能を確認しないで指示したりするからです。また、業務を実施する担当者が目的や機能を確認せずに、自分が好きな方法や容易な方法で業務を実施するからです。要するに、場当たり的に業務を指示命令し、また、実施するのが原因です。

さらに、各業務と経営計画との関係を見ると、そもそも、経営計画を実施するような業務になっていないということも多いのです。つまり、

  1. 業務の目的が経営計画に含まれていない。
  2. 業務計画が業務の目的を果たすような機能になっていない。
  3. 業務の内容(方法)が業務の機能を果たすような内容(方法)になっていない。

という場合が多いのです。実際に、多くの企業ではこのようなことが良くあります。要するに、経営計画と各業務との整合性が図られていないのです。この原因は、経営計画を実施するために必要な業務計画をきちんと立案していないためです。

例えば、経営計画と業務計画とが別々に立案されていたり、経営計画を無視して業務計画を立案したりするからです。

さらに、この原因をクライアント企業で調べてみると、経営計画は経営者(社長、役員)が中心になって立案するのに対し、業務計画は各部門で、経営計画とは関係なく目先の業務を実施するために立案しているのです。どうもこのような企業が多いようです。

そこで、クライアント企業の管理者に、「あなたの仕事は何ですか」と聞くと、仕事の内容(方法)はすぐに答えるのですが、「その仕事の目的は何ですか」と聞くと、ほとんどの人が答えられないのです。さらに、「その仕事の役割は何ですか」と聞いても答えられないのです。つまり、業務の目的や機能(役割)を知らずに業務を実施しているのです。しかも、経営計画とは関係なく業務を実施しているのです。

それだけではありません。経営計画を立案した経営者(社長や役員)ですら、経営計画を実施するために何をすれば良いのか、自分の役割は何かが良く分からない人がいるのです。要するに、経営計画を立案すれば、後は各部門が経営計画どおり実施するはずだと経営者が考えているのです。

このような状況では、経営計画どおりに業務を実施できるわけがありません。経営計画が絵に描いた餅になっているのです。よって、業績も良くならないのです。

2.業務の目的と機能を明確にする理由

改めて、業務の目的と機能(役割)を明確にする理由を考えてみましょう。

(1)業務のあるべき姿が明確になる

業務の目的と機能(役割)を明確にすることによって、その業務の本来の姿、つまり、あるべき姿が明確になるからです。業務は本来どうあるべきかということを、業務の目的と役割を確認することで明確になるのです。

(2)業務の改善・効率化、及び業務改革ができる

業務のあるべき姿と現状業務の実態とを比較することにより、問題点が発見できるので、業務の改善・効率化、あるいは業務改革が可能になるからです。

また、業務はその目的と役割を果たすことによって業務価値が生まれるので、目的と役割をどの程度果たしているかを検証することにより、業務価値の高さが確認できるからです。このようにして無価値・低価値の業務を発見できれば、業務の改善・効率化ができるわけです。

さらに、業務の役割を果たす方法を検討することにより、より良い方法を探したり、創意工夫によってより良い方法にしたりすれば、より価値の高い業務にすることができるのです。

また、業務のあるべき姿と現状業務の実態との比較から、新たに必要な業務(不足業務)が発見できるので、業務改革ができるのです。

ところで、以上の考え方は、VE(バリューエンジニアリング:価値工学)の考え方です。製品のコスト削減や新製品開発に用いるVEの考え方を業務に適用しただけです。以上の文章の「業務」を「製品・部品」に変え、「業務の改善・効率化」を「製品のコスト削減」に、「業務改革」を「新製品開発」に変えればそのままVEの説明になります。

よって、VEを学んだことがある人は容易に理解できると思います。なお、VEについて詳しくは、『文科系のためのコスト削減・原価低減の考え方と技術』に書きましたので参考にしてください。

3.VEの考え方による業務の顧客価値とは

ここで改めて、業務の価値について説明をしておきます。

前回は業務の付加価値を高めることについて説明しました。前回、「3-1 業務の価値分析による無価値業務の廃止・削減」で説明しました価値も付加価値でした。しかし、これから説明する業務の価値は付加価値ではありません。それは顧客価値です。

付加価値は企業が求める価値ですが、顧客価値は顧客が求める価値です。業務の目的と機能(役割)を検討する際には常に顧客の立場で考えなければなりません。なぜなら、業務は企業のために実施するのではなく、顧客のために実施するのだからです。

付加価値と顧客価値との関係を簡単に説明します。付加価値はその計算式から明らかなように、売上、及び利益を増やせば付加価値が高くなります。そして、売上、及び利益を増やすために顧客満足を追求して、顧客価値を高くする必要があります。

付加価値と顧客価値は結果的に同じように見えますが、コストを計算する際には異なります。企業の立場でコストを計算するか、顧客の立場でコストを計算するかです。

顧客の立場でコストを計算すると、企業の立場で計算した時には分からなかったムダなコストや不足するコストが発見できます。つまり、ムダな業務や不足する業務が発見できます。これについては、次回以降、順次、詳しく説明いたします。

さて、価値の高い業務とは、目的と機能(役割)をきちんと果たしている業務のことを言います。反対に、価値の低い業務とは、目的と機能の果たす度合が低い業務です。言い換えれば業務の品質が悪い業務です。これを低価値業務と呼びます。

また、価値のない業務とは、目的と機能を全く果たしていない業務であり、文字どおり、無価値業務です。無価値業務は無用業務、不要業務などとも言います。

さらに、過剰業務とは、価値はあるが必要以上に時間(コスト)をかけている業務を言います。つまり、業務の時間(コスト)が過剰となっている業務です。言い換えれば、投入と得られる効果を考えた時に、効果の割に投入が大きい業務です。時間をかけ過ぎている業務は、企業にとっても顧客にとっても損失になります。

なお、過剰業務は、「3-4 業務の目的別・機能別原価計算」で業務コストを計算して判定します。

重複業務とは、目的と機能が同じ業務、又は類似の業務を言います。別の人が別の方法で業務を行っている場合、目的と機能は同じ、又は類似していることが良くあります。お互いに知らずに重複して行っているのです。

なお、以上の業務の顧客価値はVEによる価値概念です。この価値概念はVEにおいて顧客が求める製品の価値を高めるために、製品のコスト削減や新製品開発を行う際の価値概念です。

このVEの価値概念をそのまま業務に適用したのです。顧客が求める業務の価値を高めるために、業務の効率化や業務改革を行う際に、同じ考え方を用いるのです。要するに、製品を業務に、コスト削減を業務効率化に、新製品開発を業務改革に変えただけです。

4.業務の目的と機能を確認する方法

既に説明しましたように、多くの企業の業務分掌規程を見ると、業務量が多い業務、重要度が高い業務などを大分類業務とし、その内訳を中分類業務、さらに小分類業務としている企業が多いです。そこで、設定してある大分類業務、中分類業務、小分類業務について、改めて目的と機能を確認する必要があります。

なぜなら、経営計画を達成するために必要な業務を過不足なく設定するためです。経営計画を達成するためにはどのような業務が必要かを考えながら、つまり、業務の目的と機能を考えながら、大分類業務、中分類業務、小分類業務などを見直します。よって、業務分類項目を新たに増やしたり、分割したり、あるいは統合したりすることになります。

これは会社全体で行わなければならないので、ボトムアップ方式で行います。つまり、各個人⇒課内⇒部内⇒会社全体と確認しながら、順次、業務体系を作成していきます。

さて、業務の目的と機能(役割)の確認方法ですが、まず、各自が関わっている大分類業務、中分類業務、小分類業務について、各自でその目的と役割を考えて書いてみてください。これらが終了しましたら、各自が行っている個別業務(職務)について、同様に目的と役割を考えて書いてみてください。

この作業は時間がかかると思います。なぜなら、ほとんどの人は、これまで、自部門の業務や自分が行っている職務の目的と機能を考えたことがないからです。しかし、お分かりかと思いますがこれは非常に重要な作業です。

自分が行っている職務は何のために行うのか、その職務はどのような役割を果たしているのか、を確認することは必要なことです。時間がかかっても、自分が行っている各職務の目的と役割はきちんと確認する必要があります。

さて、大分類業務、中分類業務、小分類業務、個別業務(職務)のそれぞれについて、目的と機能(役割)が確認できましたら、次に、それぞれの業務が目的と機能の関係でつながっているかどうかをチェックして下さい。

次のように、つながっていれば良いのですが、多くの企業ではつながっていない業務がたくさんあります。つまり、ムダな業務がたくさんあるということです。また、本来必要な業務がないこともあります。つまり、不足業務もあるということです。

業務の目的と機能の関係

実は、この関係は業務だけでなく、作業でも、製品や部品でも同じです。つまり、一般に、目的と機能の関係は下図のようになっています。そして、末端機能の下位にその機能を果たすための内容(方法、手段)があるわけです。

目的と機能と方法の関係

すなわち、目的と機能の関係は、上下関係であり、上位が目的で下位が機能です。また、上位のさらに上位は目的で、下位のさらに下位は機能です。よって、機能は上位から見れば機能ですが、下位から見れば目的となります。

このことは、例えて言えば、目的と機能の関係は上司と部下との関係、あるいは親子の関係と同じです。子供は親から見れば子供ですが、孫から見れば親になるわけです。

また、上記の図は分かりやすくするために、目的と機能を1対1で書いてありますが、実際には、1つの目的に対して複数の機能が存在します。よって、目的と機能の関係で業務をつなげていけばツリー状の業務体系ができるわけです。

例えば、「◯◯を管理する」という業務の機能は、「◯◯を計画する」「◯◯を実施する」「◯◯を確認する」「◯◯について対策する」の4つになります。要するに、P、D、C、Aです。

1つの目的に対して1つの機能というのはありません。もし、あったとしたら、それは、間違いです。なぜなら、機能が不足しているからです。また、目的と機能が上下関係になっていないからです。その場合は同位であり、単に、表現の方法が違うだけです。

例えば、「◯◯を計画する」の機能が、「◯◯を立案する」「◯◯を設計する」などとなっていたりします。これらは同位の機能であり、表現が異なるだけです。つまり、立案する=設計する、です

よって、「1人の上司には複数の部下がいる」「1人の親には複数の子供がいる」と覚えてください。実際には1人の親に1人の子供がいることもありますが、1つの業務の目的を果たすために1つの機能(役割)というのはありません。

ちなみに、この関係は、既に説明しましたように、業務だけでなく、作業でも同じですし、製品や部品でも全く同じです。したがって、この関係を理解すれば、業務の改善・効率化や業務改革だけでなく、作業の改善・効率化や作業設計、製品や部品のコスト削減や製品開発などにも利用できます。

なぜなら、目的と機能がつながっていなければ何らかの問題があることが分かるからです。つまり、ムダが発見できたり、不足していることが発見できるのです。これがVEの考え方です。この考え方があるから、VEは顧客価値を追求した製品のコスト削減や新製品開発ができるわけです。

さて、まず、経営計画と大分類業務との整合性をチェックして下さい。つまり、経営計画の中に大分類業務の目的が書かれているかどうかです。

業務は目的で書かれる場合もあれば、機能で書かれる場合もありますが、通常は機能で書かれ(表現され)ます。つまり、大分類業務は機能で表現されていることが多いです。よって、各部門の大分類業務(機能)の目的が経営計画に書かれていなければなりません。

同様にして、順に、大分類業務と中分類業務、中分類業務と小分類業務、小分類業務と個別業務(職務)の整合性をチェックして下さい。本来は、すべての業務の目的が上位の業務の機能になっていなければならないのです。

このように、各業務を目的と機能の関係でつなげていけば業務の機能体系図ができます。これが本来の業務分掌となります。

しかし、実際にはそうなっておらず、上位とつながっていない業務が多く発見できます。つまり、目的がない業務、目的が不明確な業務などのムダな業務、及び不足する業務などが発見できます。

ただし、通常、従来から継続して実施している業務は経営計画には書かれないことが多いです。強化業務、新規業務、あるいは新規事業に関わる業務だけが書かれる場合が多いです。

よって、従来から継続して実施している業務については、既に作成した業務分類一覧表(業務分掌規程)を見ながら、目的と機能の関係を確認してムダな業務や不足する業務がないかをチェックして下さい。

また、従来から継続して行っている業務で、今期から中止になる業務もありますので、その点も注意してチェックして下さい。中止になったにもかかわらず、それを知らずに継続して実施してしまうことが良くあります。

5.職務の目的と機能の表現方法

筆者は読者のみなさんが行っている職務の内容やその目的と機能(役割)は分かりませんが、その目的と機能を考える手助けをすることはできます。それは、目的と機能の表現方法です。

職務の主な目的は、通常、「◯◯を企画する、◯◯を決定する、◯◯を立案する、◯◯を設計する、◯◯を図る、◯◯を実行する、◯◯を実施する」などという言葉で端的に表現できます。なぜなら、本来、職務の主な目的は意思決定と実行だからです。

職務の目的には、その他に、意思決定と実行をしやすく(容易に)したり、意思決定と実行のミスを防ぐ目的の業務もあります。これらは主目的に対して補助目的と言います。補助目的は意思決定と実行を促進したり、意思決定と実行のミスを防止したりすることが目的になります。

したがって、これらを、「促進目的」「防止目的」などと言う場合もあります。表現としては、「◯◯をしやすくする」「◯◯を容易にする」「◯◯を促進する」「◯◯を防ぐ」などとなります。

通常、職務は1人では完結せずに、数人で分担して行う場合がほとんどです。よって、自分の職務を行ってから、他の人にバトンタッチするわけです。したがって、各自の職務の目的は、主目的であったり、補助目的であったりするわけです。

では、機能(役割)の表現はどうかと言いますと、一般に、「◯◯を確認する」「◯◯について検討する」「◯◯を◯◯に伝達する」「◯◯を作成する」などという表現になります。これらは日常的に使っている言葉ですが、これらが機能(役割)を表現しているのです。よって、目的と同じように、「◯◯を◯◯する」で表現できます。

ところで、「これらは機能(役割)ではなく、内容(方法)ではないか」という人がおりますが、内容(方法)ではありません。

例えば、「◯◯を確認する」ための方法として、「◯◯を見る」「◯◯を読む」「◯◯について聞く」などがあります。また、「◯◯について検討する」方法として、「◯◯について考える」「◯◯について話し合う」などがあるわけです。つまり、目的と機能(役割)は抽象的な表現であり、内容(方法)は具体的な表現になります。なお、内容は方法や手段になります。

なお、意思決定の表現には、「◯◯書に押印する」「◯◯に対してOKと言う」などもありますが、これらは目的や機能の表現ではなく具体的な内容(方法、手段)の表現になります。

つまり、同じ目的や機能を果たすためにいろいろな方法、手段があるわけです。よって、より良い方法や手段を採用すれば改善ができるわけです。この考え方はVEの考え方です。

同じ目的や機能を果たすために、最も安全に、最も安く、最も正しく、最も速く、最も楽にできる方法を考えることができます。これが創意工夫による改善です。これを略して、安、安、正、速、楽と言います。これは、世界で最も良い方法(One best way)を採用すべきであるという、IEの考え方です。

ところで、中学時代に習った英語の表現形式である5文型は、主語、述語、目的語、補語の4つを組み合わせてできています。職務の目的と機能を表現するには主語と補語は必要ありませんので、目的語+述語(他動詞)で表現すれば良いのです。つまり、目的と機能は、「◯◯を◯◯する」「◯◯について◯◯する」などと表現すれば良いのです。

ちなみに、日本語の文法には目的語がありません。

6.職務の機能と目的の演習問題と解答例

≪職務の機能と目的の演習問題≫
職務内容機能(役割)目的
議事録をコピーする
訪問客にお茶を入れる
上司に販売実績を話す
出張伺いを書く
当期予算案について話し合う
情報機器購入稟議書を読む
通達原稿を見る
問題点を部下に聞く
事務用品購入依頼書を渡す
購入先に発注品の納期を聞く

≪演習問題の解答例≫
職務内容機能(役割)目的
議事録をコピーする部数を増やす
控えを取る
議事内容を伝えやすくする
問い合わせに答えやすくする
訪問客にお茶を入れる訪問客をもてなす顧客との会話をしやすくする
上司に販売実績を話す販売実績を伝える販売計画との差異原因を追究する
出張伺いを書く出張目的・内容を明確にする出張の承認を得やすくする
当期予算案について話し合う当期予算案を検討する当期予算を決める
情報機器購入稟議書を読む稟議内容を知る情報機器購入の可否を決める
通達原稿を見る決定内容と通達との差異を確認する通達内容の誤りを防ぐ
問題点を部下に聞く問題点を確認する対策を立てる
事務用品購入依頼書を渡す依頼内容を伝える事務用品を購入する
購入先に発注品の納期を聞く納期を確認する納期遅れを防ぐ

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