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開発&コンサルティング

3-10 部門間にまたがる基幹業務の効率化

1.個々の業務の効率化ができなければ、基幹業務の効率化はできない

これまで、個々の業務(職務)について各担当者が個人で、あるいは課内(チーム内)や部内で話し合って、廃止・削減の検討をしてきました。その過程で、課内や部内では解決できない効率化課題が多く発見されたと思います。

つまり、基幹業務など部門間にまたがる課題について、部課長会を開催したり、プロジェクト・チームを編成したりして検討すべき課題が発見されたと思います。

最近では、業務効率化と言えば情報化することのように考えられているため、多くの企業ではムダな業務を廃止・削減しないで、いきなり基幹業務の効率化などの難しい課題に取り組みます。そして、ERPパッケージや◯◯システムなどを導入して、一気に解決してしまおうとします。このために失敗する企業が後を絶たないのです。

その原因を説明します。まず、多くの企業では業務フロー(ワークフロー)を書く時に業務内容(方法)を書きません。このため、その業務を担当していない人が業務フローを見ても業務内容(方法)が分かりません。

また、多くの企業では業務の価値分析を行っていませんし、業務の時間測定も行っていません。業務の目的も明確にしていません。そのため、その業務を担当していない人がその業務を見てもムダかどうか分かりません。その業務を担当している人でさえ、ムダかどうか分からないと思います。

さらに、業務コストが分からないと、ムダかムダでないかの判断ができません。これは日常の買い物をする時と同じです。商品の価格が分からなければ買い物はできません。ところが、多くの企業では業務コストが分からないのです。したがって、その業務を利用する人はいつもムダな買い物をしているのと同じなのです。

業務コストはいくらかかっても良いのでしょうか。「コストがかかり過ぎるのは問題だが、時間がかかり過ぎるのは問題ではない」と考えるのは矛盾しています。なぜなら、業務時間×賃率=業務コストで、時間とコストは比例するからです。ちなみに、「コストがかかり過ぎるのは問題だが、時間がかかり過ぎても、人を使い過ぎても問題にしない」というのがブラック企業の特徴です。これが「タダ働きさせている証拠」なのです。

既に説明しましたように、業務効率化を行うには人の意識(考え方や価値観)を変えなければなりません。そのためには、従来の企業慣習を変える必要があるのです。つまり、企業風土(文化)を変えなければならないのです。例えて言えば、業務効率化とは大きな川の流れを変えるようなものなのです。よって、簡単にはできないのです。

そこで、これまで1人ひとりが、業務の価値分析を始め、目的思考、重点思考、ユーザー志向、市場(顧客)志向などの考え方を1つひとつの業務に当てはめて検討し、少しずつ意識(考え方と価値観)を変えて来たのです。そして、これらの考え方・価値観を経営者を始め社員全員が身に着けたところで、部門間にまたがる課題に取り組めば成功する確率が高くなるわけです。

既に業務の見える化を行っており、業務の価値分析、目的思考、重点思考、ユーザー志向、市場(顧客)志向などの考え方を1人ひとりが既に身に着けているので、部門間にまたがる複雑で難しい業務の効率化に取り組むことができるわけです。

部門間にまたがる基幹業務のムダを発見して削減するためには、以上の考え方を再確認してから行って下さい。ERPパッケージや◯◯システムなどを導入しただけでは基幹業務の効率化はできません。

2.部門間にまたがる基幹業務の効率化の進め方

基幹業務の効率化の進め方、すなわち基幹業務におけるムダの削減検討の進め方は、当然ですが、関係者全員で行わなければいけません。つまり、その基幹業務に関わる各部門の関係者が集まって検討する必要があります。

通常、各部門によって利害が異なり、簡単には効率化できないので、数回に分けて検討します。なぜなら、いわゆるセクショナリズムにより、自部門の利害を優先してしまうからです。

ところで、セクショナリズムが蔓延している企業の特徴は、特定の人や特定の部門が忙しい会社です。他人や他部門が忙しくても、誰も手伝おうとしないからです。他人や、他部門が忙しくても自分には関係がない、と思っているのです。よって、手伝おうとはしないのです。

また、他人の仕事や他部門の仕事については普段から効率化の提案をしないのです。効率化の提案をしても、よけいなお世話だと言われてしまうからです。そのため、基幹業務の効率化の検討を行う場合には、関係者全員で行う必要があるのです。

第1回目は担当者同士が集まって検討会を開催します。そこで、解決できない場合には課題を明確にしたうえで、第2回目の検討会を開催します。第2回目は通常、関係部門の部課長会議になります。

それでも解決できない場合は第3回目の検討会を開催します。これは全社課題として取り上げ、課題解決のためのプロジェクト・チームを編成して検討することになります。つまり、その業務に関わる部門だけでなく、全部門の関係者が参加して検討するわけです。

第1回目の検討会で担当者同士で話し合ってみると、お互いに業務内容を知らなかったために、重複していることが良くあります。また、第2回目の部課長会の検討会では、お互いの利害がよく分からなかったために、ネック業務になっていることが良くあります。そこで、利害を明確にしたうえで、どっちが得かを検討すると解決できることが良くあります。

それでも解決できない場合には、第3回目のプロジェクトチーム検討会で、全部門の意見を出し合って、いくつかの解決策を作ります。そして、最後に役員会で決定してもらうことになります。

通常、このように、部門間にまたがる基幹業務の効率化は、時間をかけて行わなければできないので、情報(IT)化しただけで解決できるものではないのです。特に重要なのは、基幹業務を効率化する場合には、事前に、1人ひとりの業務に対する意識(考え方・価値観)を変える必要があるのです。

よって、最初は各個人が個別業務(職務)について検討し、次に課内共通の課題について検討し、次に部内共通の課題について部内の部課長会で検討し、最後に全社共通の課題について部課長会やプロジェクト・チームで検討するのです。

つまり、身近な1人ひとりの担当業務(職務)から順にムダな業務の廃止・削減を図って行き、1人ひとりの考え方や価値観を少しずつ変えて行くのです。そうしなければ、長年培った企業慣習を変えることはできませんので、大きな川の流れを変えることはできないのです。

以上説明しました業務効率化の進め方はいわゆるボトムアップ方式です。この方式に対して、トップが率先して業務効率化を進める場合には、トップダウン方式になります。トップダウンのためには、最初にトップの意識改革を行わなければなりません。その方法はトップの訓練を行うことです。

そのためには、業務効率化活動を実施して、従業員と一緒にトップの訓練を行い、意識を変えるのです。よって、最初はボトムアップ方式で行い、翌年からはトップダウン方式で業務効率化活動を行えるようにすれば理想的です。

本来、業務効率化活動は、企業の経営環境の変化への適応活動でもあります。企業の経営環境は常に変化しているので、その変化にタイムリーに適応するために、常に業務を見直す必要があるのです。したがって、本来は、トップが率先して効率化活動を行った方が良いのです。

多くの企業では元々ムダな業務がたくさんありますが、経営環境が変化すると、多くのムダな業務が発生します。なぜなら、従来は必要であった業務が必要なくなったり、また、従来は価値のあった業務が価値がなくなったりするのです。そうなった場合に、素早くそういうムダな業務を発見して廃止・削減する必要があるのです。それが、業務効率化活動です。

また逆に、経営環境が変化すれば、従来行っていた業務をいっそう強化しなければならなくなったり、新たに必要となる業務を設計して実施しなければならなくなったり、あるいは新規事業に取り組まなければならなくなったりします。つまり、業務の再構築を行う必要があります。このために、新たに人や時間が必要となります。

このように、ムダな業務を廃止・削減するだけでなく、業務を強化したり、新規業務を設計して実施したり、あるいは新規事業に取り組んだりして、これらを確実に実行できるようにする活動が業務改革活動なのです。

3.部門間にまたがる基幹業務の効率化の方法

≪重複業務の廃止・削減≫

部門間にまたがる基幹業務の効率化の方法は、まず最初に、基幹業務に関わる業務フローを業務発生から業務終了までつなげて下さい。例えば、受注して製造・販売し、売上を回収するまでです。その次に、その流れ中で重複している業務を探してください。既に業務名称を社内で統一しておりますし、それぞれの業務内容も分かるので、同じ業務や類似業務はすぐに見つかるはずです。

見つけましたら、なぜ重複しているのかを調べ、削減の検討を行って下さい。おそらく、部門間のコミュニケーションが取れておらず、部門間の役割分担ができていないために重複していると思われます。よって、部門間の役割分担を明確にして削減する必要があると思います。

例えば、メーカーでよくある例が、生産の進捗状況の確認業務です。生産現場ではもちろん行っていますが、工場管理部門、営業部門、経理部門などでも同じ業務を行っています。この重複の原因は、工場現場でその情報を秘密にしているからです。工場現場から工場管理部門にはその正確な情報を教えないのです。なぜなら、教えたら、もっと早く生産しろと言われるからです。

工場現場から営業に対しても、正確な進捗状況を教えません。なぜなら、工場と営業とは利害が反するからです。工場ではできるだけ余裕を持って生産したいのですが、営業はできるだけ早く顧客に製品を届けたいのです。このため、工場納期と営業納期の2つの納期を設定している企業が多いです。

また、工場現場では経理にも正確な進捗状況を教えません。なぜなら、生産時間が短くなればそれだけコストが安くなり、それが結局、賃率(時間当たり賃金)に反映され、賃金が安くなってしまうからです。

さらにまた、多くのメーカーでは工場現場で確認した進捗状況を、現場のパソコンに入力して管理していますが、その情報を現場ではあえて、正確に入力していないのです。そして、その入力情報が正しくないことを他の部門でも知っていますから、それぞれの部門が独自の方法で進捗状況の確認を行っているのです。このような重複業務はどの企業でもいくつかあると思います。

≪ネック業務の削減≫

次に、基幹業務の業務フロー全体の中で最も時間(コスト)がかかっている業務を探します。つまり、ネック業務を探します。既に、個々の業務について時間設定を行っているので、すぐに見つかるはずです。よって、このネック業務の削減検討を行います。

ネック業務とは、業務フロー全体の中で最も業務時間がかかっている業務であり、ボトルネックとなっている業務です。つまり、業務全体の流れを邪魔している業務です。このネック業務のために他の業務も遅れ、業務フロー全体の時間(コスト)がかかってしまうのです。ちなみに、停滞(保存)時間が長いためにネックになっている場合もあります

この状態を例えて言えば、道路が渋滞している状態です。道路の途中に橋があったり、途中で工事をしていたり、事故があったりして渋滞するのです。よって、この渋滞の原因を取り除かなければなりません。部門間にまたがる業務の場合には、特に、このネック業務を削減することが重要です。なぜなら、これによって、業務フロー全体の時間が大幅に削減され、その結果、コストが大幅に削減され、また、意思決定と実行が速くなるからです。

ネック業務を削減しましたら、次に、新たにネックとなる業務が生まれますから、それを削減検討します。このようにして、順にネック業務を削減して行けば、最終的には全ての業務が同じ時間(速さ)でできるようになり、スムーズに流れるようになります。これを同期化と言います。道路で言えば、すべての車が同じ速さで走っている状態です。別名、ところてん方式とも言います。

要するに、基幹業務のネック業務を削減し、意思決定と実行を速くし、コストを削減するためには、部門間にまたがる業務フロー全体の納期管理、原価管理が必要なのです。

≪マルチ人間の育成≫

部門間にまたがる基幹業務を効率化するには、もう1つ重要な方法があります。それは、マルチ人間を育成することです。つまり、工場で行っている多能工化と同じです。いろいろな業務ができる人が多くいる方が、業務フロー全体の時間を短くしたり、業務コストを削減することができます。

例えば、月末や年度末で経理が忙しい時に、簿記会計ができる他の部門の人が手伝うことができます。また、年末のセールス期間など、営業が忙しい時に、営業の訓練を受けた他の部門の人が手伝うこともできます。

このように、マルチ人間を育てることよって、人の業務量が平均化し、忙しい人や暇な人がいなくなります。みんなで協力して残業を減らすこともできますし、人の配置換えや休日のとり方についても、自由度が高くなります。

さらに、マルチ人間を育成すると、大きな効果があります。それは、セクショナリズムがなくなることです。お互いに相手の業務が分かりますから、お互いに相手の仕事の悩みも分かるわけです。よって、自部門の利害を優先することがなくなります。

≪コンカレント・エンジニアリングの実施≫

コンカレント・エンジニアリングとは簡単に言えば、同時進行で業務を行うことです。並行作業とも言います。実際には、完全に同時進行で業務を行うことはできないので、少しずつずらして進めます。例えて言えば、刺身を皿に盛り付けるように、順にずらして並べるのです。よって、筆者は「刺身盛り付け方式」と呼んでいます。

基幹業務の全体をできるだけ早く実施するためには、1つの業務が終わったら次の業務を実施すると言うのではなく、1つの業務がある程度終わったら、次の業務に取り掛かるのです。これを順に行うのです。

仮に、1つの業務が半分終了したら、次の業務に取り掛かれば、基幹業務全体の納期がほぼ半分になります。つまり、それだけ、意思決定と実行の速さがほぼ半分になるのです。

この方法は大手のメーカーでは、製品の開発期間を短縮する方法として昔から実施しています。しかし、コンカレント・エンジニアリングを実施している大手のメーカーでさえ、受注から売上回収までの基幹業務に関しては実施していないのです。なぜ実施しないのか不思議と言わざるを得ません。

すべての基幹業務をこの刺身盛り付け方式で実施出来れば、ホワイトカラーの意思決定と実行がかなり短縮できると思います。このためには、まず、これまで説明したムダな業務の廃止・削減の検討を徹底的に行って下さい。

さらに言えば、第4章で説明する、経営戦略を策定してから実行するまでの、経営者及び全従業員が行う業務のコンカレント・エンジニアリングを実施すれば、競合他社に勝つことができると思います。

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